難病患者の地域支援体制に関する研究

文献情報

文献番号
201711116A
報告書区分
総括
研究課題名
難病患者の地域支援体制に関する研究
課題番号
H28-難治等(難)-指定-003
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
西澤 正豊(新潟大学脳研究所 統合脳機能研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 小倉 朗子(公益財団法人東京都医学総合研究所)
  • 川尻洋美(田所洋美)(群馬県難病相談支援センター)
  • 小森 哲夫((独)国立病院機構箱根病院神経筋・難病医療センター)
  • 原口 道子(公益財団法人東京都医学総合研究所)
  • 小林 庸子((独)国立精神・神経医療研究センター病院)
  • 菊地 誠志(国立病院機構北海道医療センター)
  • 中馬 孝容(滋賀県立総合病院)
  • 中山 優季(公益財団法人東京都医学総合研究所)
  • 菊池 仁志(医療法人財団華林会 村上華林堂病院)
  • 荻野 美恵子(国際医療福祉大学医学部 医学教育統括センター)
  • 溝口 功一(静岡医療センター)
  • 宮地 隆史((独)国立病院機構柳井医療センター)
  • 和田 千鶴(国立病院機構あきた病院)
  • 青木 正志(東北大学大学院医学系研究科神経内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
27,063,000円
研究者交替、所属機関変更
溝口功一:国立病院機構静岡医療センター 副院長(平成29年10月1日変更) 中馬孝容:滋賀県立総合病院 リハビリテーションセンター医療部長(平成30年1月1日変更)

研究報告書(概要版)

研究目的
平成27年1月より「難病の患者の医療等に関する法律(難病法)」に基づく新たな難病対策制度がスタートし、保健所難病担当保健師と難病対策地域協議会による地域支援ネットワーク、難病相談支援センターの相談支援員による福祉・就労支援ネットワーク、難病医療拠点病院と難病医療コーディネーターによる医療支援ネットワークが構築され、各地域で難病患者を総合的・包括的に支援するネットワークが重層的に整備されることとなった。本指定班は難病患者・家族のための支援体制の全国的な均霑化を図るために必要なデータを集積し、施策のあり方を検討して厚労省に情報提供・提言すること、多職種専門職に向けた難病対応マニュアルと人材育成のための専門教材を整備することを目的とした。
研究方法
難病対策課と協議の上で、難病に関する多職種連携、難病の在宅医療体制、難病の災害対策のあり方の3課題を取り上げた。
多職種連携では、保健所保健師、難病相談支援センター相談支援員、就労支援員、ケアマネージャー、療法士等、多職種の専門職を対象として、実態調査により現状の課題を整理し、難病対応マニュアルの作成と専門研修テキストの整備を進めた。
在宅医療体制については、各地域で認知症者に対して構築される地域包括ケアシステムに難病患者を組み入れるための方策について調査した。
難病の災害対策については、各自治体に難病患者に対する個別支援計画の策定を促す方策を検討し、平成20年に策定した自治体向け指針の改定を行った。
加えて平成29年度は、大都市特例による保健所設置市への業務移管の準備状況調査、
旧制度からの移行措置の終了に伴う生活実態調査を実施した。
結果と考察
多職種連携:
都道府県と保健所設置市の難病担当保健師には、難病対策地域協議会の設置とその有効活用を目的に、実態調査を行い、難病の保健師研修テキスト(基礎編)を作成した。また京都府における保健師研修に参画し、人材育成上の課題を明らかにした。
平成30年4月に大都市特例による業務権限の移譲を控え、政令指定都市と保健所設置市の担当者に準備状況の調査を行い、特に後者での遅れを指摘して、対応を促した。
難病相談支援センターでは、相談支援員のスキルアップ、ピア・サポーターの養成と支援が課題であることを実態調査で明らかにし、難病相談支援マニュアル、難病相談記録マニュアル、相談支援のためのハンドブック、健康管理と職業生活の両立ワークブック難病編を作成した。。
難病療養支援に関わるケアマネージャー、ホームヘルパーに対しては、難病介護支援マニュアルを作成し、難病患者等ホームヘルパー養成研修の実施状況と研修教材を評価した。
医療提供体制については、難病医療拠点114病院の現状と難病コーディネーターの活動状況に関して実態調査を行った結果、神経系難病では、拠点病院のコンシェルジェ機能に加えて、地域において拠点となる医療機関の整備が必要であることを難病対策委員会に報告した。難病医療コーディネーターは35県38病院に配置されながら、研修体制や待遇に多くの課題を残していた。
難病リハビリテーションについては、神経難病リハの実施状況を調査し、進行性神経難病に対する定期的な外来リハ指導、短期集中リハの実施が困難である現状を明らかにした。

在宅医療体制:
各自治体で認知症者に対して構築される地域包括ケアシステムを難病患者にも適用するために、多職種連携に配慮した難病在宅医療支援マニュアルを作成した。
平成29年年末で旧制度からの移行措置が終了するので、症状、受療行動、自己負担、社会参加等への影響を調査する難病患者生活実態調査票を作成し、平成29年秋に全国8県で移行措置終了前の調査を実施し、1万人余りから回答を得た。平成30年秋には終了後調査を実施する。
重症神経難病患者を対象とするレスパイト入院については、実態調査に基づき、医療と介護の円滑な連携を目指したレスパイトケアマニュアルを作成した。
難病の緩和ケアに関する人材育成では、多職種を対象とした研修会を開催して、研修方法を検討した。

難病の災害対策:
各自治体での在宅人工呼吸器装着者数と外部バッテリーの装備状況を調査し、外部バッテリー装備率の増加を確認した。
全国の1,741自治体を対象に、災害対策基本法の改正後における個別の要援護者避難支援計画策定の現状を調査し、都道府県と区市町村間の情報共有に課題があり、個別支援計画の策定が進捗していない状況を明らかにした。併せて「災害時難病患者支援計画を策定するための指針」の改訂版を公開した。
結論
難病法施行後の新たな難病対策事業の全国的な均霑化を目標として、多職種専門職への実態調査に基づき、厚労省に情報提供・提言を行うとともに、地域の多職種専門職に向けた難病対応マニュアルや専門研修テキストを作成した。

公開日・更新日

公開日
2018-05-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201711116B
報告書区分
総合
研究課題名
難病患者の地域支援体制に関する研究
課題番号
H28-難治等(難)-指定-003
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
西澤 正豊(新潟大学脳研究所 統合脳機能研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 小倉 朗子(公益財団法人東京都医学総合研究所)
  • 川尻 洋美(田所洋美)(群馬県難病相談支援センター)
  • 小森 哲夫((独)国立病院機構箱根病院神経筋・難病医療センター)
  • 原口 道子(公益財団法人東京都医学総合研究所)
  • 小林 庸子((独)国立精神・神経医療研究センター病院)
  • 菊地 誠志(国立病院機構北海道医療センター)
  • 中馬 孝容(滋賀県立総合病院)
  • 中山 優季(公益財団法人東京都医学総合研究所)
  • 菊池 仁志(医療法人財団華林会 村上華林堂病院)
  • 荻野 美恵子(国際医療福祉大学医学部 医学教育統括センター)
  • 溝口 功一(静岡医療センター)
  • 宮地 隆史((独)国立病院機構柳井医療センター)
  • 和田 千鶴(国立病院機構あきた病院)
  • 青木 正志(東北大学大学院医学系研究科神経内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
溝口功一:国立病院機構静岡医療センター 副院長(平成29年10月1日変更) 中馬孝容:滋賀県立総合病院 リハビリテーションセンター医療部長(平成30年1月1日変更)

研究報告書(概要版)

研究目的
平成27年1月より「難病の患者の医療等に関する法律(難病法)」に基づく新たな難病対策制度がスタートし、保健所難病担当保健師と難病対策地域協議会による地域支援ネットワーク、難病相談支援センターの相談支援員による福祉・就労支援ネットワーク、難病医療拠点病院と難病医療コーディネーターによる医療支援ネットワークが構築され、地域において難病患者を総合的・包括的に支援するネットワークが重層的に整備されることとなった。本指定班は難病患者・家族のための支援体制の全国的な均霑化を図るために必要なデータを集積し、施策のあり方を検討して厚労省に情報提供・提言すること、多職種専門職に向けた難病対応マニュアルと人材育成のための専門教材を整備することを目的とした。
研究方法
難病対策課と協議の上で、難病に関する多職種連携、難病の在宅医療体制、難病の災害対策のあり方の3課題を取り上げた。
多職種連携では、保健所保健師、難病相談支援センター相談支援員、就労支援員、ケアマネージャー、テラピスト等、多職種の専門職を対象として、実態調査により現状の課題を整理し、難病対応マニュアルの作成と専門研修テキストの整備を進めた。
在宅医療体制については、地域で認知症者に対して構築される地域包括ケアシステムに難病患者を組み入れるための方策について調査した。
難病の災害対策については、各自治体に難病患者に対する個別支援計画の策定を促す方策を検討し、平成20年に策定した自治体向け指針の改定を行った。
結果と考察
多職種連携:
都道府県と保健所設置市の難病担当保健師には、難病対策地域協議会の設置とその有効活用を目的に、実態調査を行い、難病の保健師研修テキスト(基礎編)を作成した。また京都府における保健師研修に参画し、人材育成上の課題を明らかにした。平成30年4月に大都市特例による業務権限の移譲を控え、保健所設置市における取組みの遅れを指摘した。
難病相談支援センターでは、実態調査の結果、相談支援員のスキルアップ、ピア・サポーターの養成と支援が課題であることから、難病相談支援マニュアル、難病相談記録マニュアル、相談支援のためのハンドブック、健康管理と職業生活の両立ワークブック難病編を作成した。本センターの全国ネットワークである難病相談支援ネットワークシステムの導入率は依然24県に留まった。
難病療養支援に関わるケアマネージャー、ホームヘルパーに対しては、難病介護支援マニュアルを作成し、難病患者等ホームヘルパー養成研修の実施状況と研修教材を評価した。
医療提供体制については、難病医療拠点114病院の現状と難病コーディネーターの活動状況に関して実態調査を行った結果、神経系難病では、拠点病院のコンシェルジェ機能に加えて、地域において拠点となる医療機関の整備が必要であることを難病対策委員会に報告した。難病医療拠点病院における今後の難病診断、診療、人材育成における課題を明らかにした。難病医療コーディネーターは35県38病院に配置されながら、研修体制や待遇に多くの課題を残していた。
難病リハビリテーションについては、神経難病リハの実施状況を調査し、進行性神経難病に対する定期的な外来リハ指導、短期集中リハの実施が困難である現状を示した。
在宅医療体制:
各自治体で認知症者に対して構築される地域包括ケアシステムを難病患者にも適用するために、多職種連携に配慮した難病在宅医療支援マニュアルを作成した。
平成29年年末で旧制度からの移行措置が終了するので、症状、受療行動、自己負担、社会参加等への影響を調査する難病患者生活実態調査票を作成し、平成29年秋に全国8県で移行措置終了前の調査を実施し、1万人余りから回答を得た。平成30年秋には終了後調査を実施する。
重症神経難病患者を対象とするレスパイト入院については、実態調査に基づき、医療と介護の円滑な連携を目指したレスパイトケアマニュアルを作成した。
難病の緩和ケアに関する人材育成では、多職種を対象とした研修会を開催して、研修方法を検討した。
難病の災害対策:
各自治体での在宅人工呼吸器装着者数と外部バッテリーの装備状況を調査し、外部バッテリー装備率の増加を確認した。
全国の1,741自治体を対象に、災害対策基本法の改正後における個別の要援護者避難支援計画策定の現状を調査し、都道府県と区市町村間の情報共有に課題があり、個別支援計画の策定が進捗していない状況を示した。併せて「災害時難病患者支援計画を策定するための指針」の改訂版を公開した。
結論
難病法施行後の新たな難病対策事業の全国的な均霑化を目標として、関連する多職種専門職への実態調査に基づき、厚労省に情報提供・提言を行うとともに、地域の多職種に向けた難病対応マニュアルや専門研修テキストを作成した。

公開日・更新日

公開日
2018-05-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201711116C

成果

専門的・学術的観点からの成果
難病法に基づく新たな難病対策制度が全国的に均霑化され、どの地域でも難病患者・家族は普く医療・福祉・地域支援のネットワークによる包括的なサポートを受けられるように、行政施策の推進に資するデータを集積し、厚労省に報告・提言した。旧制度からの移行措置の終了前後における難病患者生活実態調査を実施した。地域の多職種専門職に向けた実践的な難病対応マニュアルと人材育成のための専門研修教材を各種策定した。
臨床的観点からの成果
難病の在宅医療体制を構築するために必要な多職種連携に配慮した実践的マニュアルを策定し、難病リハビリテーションを実施するための課題を整理した。難病に関する緩和ケアを推進するための専門研修テキストを策定した。災害医療体制の中で「難病」への配慮を求めるための方策を検討し、行政と医療機関に向けた指針を策定した。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
難病医療拠点病院の現状と課題を実態調査により明らかにし、難病医療提供体制に関する基本方針を議論する厚労省難病対策委員会に対して、拠点病院に期待される相談支援の「コンシェルジュ機能」に加えて、神経系難病に対しては各地域に医療の拠点となる施設が必要であることを報告し、平成28年秋に公開された基本方針に反映された 。
その他のインパクト
該当なし

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
18件
その他論文(和文)
29件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
34件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2018-06-04
更新日
2022-06-07

収支報告書

文献番号
201711116Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
30,063,000円
(2)補助金確定額
30,063,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 975,287円
人件費・謝金 3,034,507円
旅費 3,648,960円
その他 19,404,246円
間接経費 3,000,000円
合計 30,063,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2021-06-08
更新日
-