文献情報
文献番号
201711110A
報告書区分
総括
研究課題名
中枢性摂食異常症および中枢神経感作病態を呈する疾患群の脳科学的な病態解明と、エビデンスに基づく患者ケア法の開発
課題番号
H29-難治等(難)-一般-059
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
関口 敦(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 心身医学研究部)
研究分担者(所属機関)
- 安藤 哲也(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 心身医学研究部)
- 福土 審(東北大学大学院医学系研究科)
- 中里 道子(国立大学法人千葉大学 大学院医学研究院)
- 吉内 一浩(東京大学医学部附属病院)
- 菊地 裕絵(国立国際医療研究センター病院 心療内科)
- 河合 啓介(国立国際医療研究センター国府台病院 心療内科)
- 須藤 信行(九州大学大学院医学研究院)
- 兒玉 直樹(産業医科大学 神経内科)
- 丸尾 和司(筑波大学 医学医療系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
7,424,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、中枢性摂食異常症および中枢神経感作異常をきたす疾患群に対して、脳科学的に治療構造を解明し、エビデンスに基づく患者ケア法を開発することである。
研究方法
本研究課題では、以下の4つの研究課題を多施設共同研究として実施する。
①摂食障害の治療プログラムの効果検証研究
神経性過食症を対象に、中枢神経感作病態としての食や体型に対する過剰反応を、定期的な食事習慣の導入により減感作していく治療構造を持つ心理療法である、CBT-E(Enhanced Cognitive Behavioral Therapy)の効果検証のためにランダム化比較試験(RCT)を実施する。
②心身症(過敏性腸症候群)の治療プログラムの効果検証研究
代表的な心身症である過敏性腸症候群(IBS)を対象に、中枢神経感作病態としての内受容感覚に対する過剰反応を、内受容感覚曝露により減感作していくという治療構造を持つ心理療法である、内受容感覚曝露療法(CBT-IE: Interoceptive Exposure Cognitive Behavioral Therapy)の効果検証のためにRCTを実施する。
③疾患横断的脳画像レジストリ研究
摂食障害患者と、心身症患者の疾患横断的な脳画像レジストリを構築する。脳MR画像は、3テスラMRI装置が利用できる各施設において、可能な限り撮像シークエンスを統一し、安静時fMRI、拡散テンソル強調画像、T1強調画像による撮像を行なう。同時に質問紙や認知課題での心理評価・症状評価を行なう。特に、中枢神経感作病態の指標として、食・体型等の刺激に対する反応性や内受容感覚尺度を評価し、研究会等を開催し検討する。中枢神経感作病態の指標に特異的な脳構造・脳機能変化を重回帰分析により抽出し、中枢神経感作病態の神経基盤を明らかにする。
④脳画像データ統合による解析研究
各施設で収集した脳画像データをNCNPに集約し、画像の前処理及び個人内解析を半自動的に実行できる解析パイプラインを構築し、分担施設でも解析を実施するためのデータダウンロードシステムを構築し、解析用PCを導入して横断的な解析研究を行い中枢感作病態の脳内基盤を検証する。研究①②の治療介入が開始された後には、試験群/対照群に対して、介入前/介入終了後(3か月)において、脳画像・認知心理機能評価を行う。縦断データがそろい次第、主要アウトカムの改善と、中枢神経感作病態の指標および関連する脳領域との関連を検証し、臨床症状の改善の背景にある中枢神経感作病態の改善を脳科学的に実証する。
①摂食障害の治療プログラムの効果検証研究
神経性過食症を対象に、中枢神経感作病態としての食や体型に対する過剰反応を、定期的な食事習慣の導入により減感作していく治療構造を持つ心理療法である、CBT-E(Enhanced Cognitive Behavioral Therapy)の効果検証のためにランダム化比較試験(RCT)を実施する。
②心身症(過敏性腸症候群)の治療プログラムの効果検証研究
代表的な心身症である過敏性腸症候群(IBS)を対象に、中枢神経感作病態としての内受容感覚に対する過剰反応を、内受容感覚曝露により減感作していくという治療構造を持つ心理療法である、内受容感覚曝露療法(CBT-IE: Interoceptive Exposure Cognitive Behavioral Therapy)の効果検証のためにRCTを実施する。
③疾患横断的脳画像レジストリ研究
摂食障害患者と、心身症患者の疾患横断的な脳画像レジストリを構築する。脳MR画像は、3テスラMRI装置が利用できる各施設において、可能な限り撮像シークエンスを統一し、安静時fMRI、拡散テンソル強調画像、T1強調画像による撮像を行なう。同時に質問紙や認知課題での心理評価・症状評価を行なう。特に、中枢神経感作病態の指標として、食・体型等の刺激に対する反応性や内受容感覚尺度を評価し、研究会等を開催し検討する。中枢神経感作病態の指標に特異的な脳構造・脳機能変化を重回帰分析により抽出し、中枢神経感作病態の神経基盤を明らかにする。
④脳画像データ統合による解析研究
各施設で収集した脳画像データをNCNPに集約し、画像の前処理及び個人内解析を半自動的に実行できる解析パイプラインを構築し、分担施設でも解析を実施するためのデータダウンロードシステムを構築し、解析用PCを導入して横断的な解析研究を行い中枢感作病態の脳内基盤を検証する。研究①②の治療介入が開始された後には、試験群/対照群に対して、介入前/介入終了後(3か月)において、脳画像・認知心理機能評価を行う。縦断データがそろい次第、主要アウトカムの改善と、中枢神経感作病態の指標および関連する脳領域との関連を検証し、臨床症状の改善の背景にある中枢神経感作病態の改善を脳科学的に実証する。
結果と考察
研究①②において、治療研究のプロトコールを確定し、主幹施設での倫理申請を完了し、分担施設での倫理申請を行っている。また臨床研究登録を完了した。無作為ランダム化比較試験の登録項目を作成し、割付システムを構築、試行した。治療プログラムの教育用の資料を作成し、治療者研修を実施した。
研究③において、疾患横断的脳画像レジストリを構築するために、まずは各施設での摂食障害患者および健常対照群の既存の脳画像データを登録し、継続的なデータ収集を実施した。本年度末に登録したデータの総数は、摂食障害患者のベースライン54例、フォローアップ17例、健常群ベースライン69例、フォローアップ22例のであった。
研究④として、多施設のデータを一元的に解析できる解析パイプラインを主幹施設のワークステーション内に構築した。脳画像データの個人内レベルの解析を試行した。また、個人間レベルの解析系をテストするために、分担施設において予備的な解析を行った。脳画像データの個人内レベルの解析を試行した。また、個人間レベルの解析系をテストするために、分担施設において予備的な解析を行った。摂食障害患者において、楔部、楔前部、内側前頭前野、などで患者の皮質厚が有意に低下しており、楔前部の皮質厚と自尊感情との関連性に交互作用が認められた。また、左前頭前野眼窩部と左内側前頭前野の体積減少が認められた。有意差をもって摂食障害の病態と深く関わるとされる領域の障害を示唆される知見が得られており、今後さらに症例数を増やすことによってさらに有意義な結果がえられるものと考えられる。
研究③において、疾患横断的脳画像レジストリを構築するために、まずは各施設での摂食障害患者および健常対照群の既存の脳画像データを登録し、継続的なデータ収集を実施した。本年度末に登録したデータの総数は、摂食障害患者のベースライン54例、フォローアップ17例、健常群ベースライン69例、フォローアップ22例のであった。
研究④として、多施設のデータを一元的に解析できる解析パイプラインを主幹施設のワークステーション内に構築した。脳画像データの個人内レベルの解析を試行した。また、個人間レベルの解析系をテストするために、分担施設において予備的な解析を行った。脳画像データの個人内レベルの解析を試行した。また、個人間レベルの解析系をテストするために、分担施設において予備的な解析を行った。摂食障害患者において、楔部、楔前部、内側前頭前野、などで患者の皮質厚が有意に低下しており、楔前部の皮質厚と自尊感情との関連性に交互作用が認められた。また、左前頭前野眼窩部と左内側前頭前野の体積減少が認められた。有意差をもって摂食障害の病態と深く関わるとされる領域の障害を示唆される知見が得られており、今後さらに症例数を増やすことによってさらに有意義な結果がえられるものと考えられる。
結論
本年度は、中枢神経感作病態の検証に必要な実験系として、ランダム化比較試験の研究計画を立案し、倫理的配慮事項を検討するとともに、介入・検証のシステムを整備した。また、脳画像共有・解析システムの構築、予備的な解析系のテストも完了している。
次年度以降は、ランダム化比較試験の治療者および評価者の拡充、脳画像研究では安静時脳活動の解析パイプラインへと拡充し、脳画像レジストリ研究で収集される脳画像を集約し、1次解析を定期的に実施できる体制を構築していく。
次年度以降は、ランダム化比較試験の治療者および評価者の拡充、脳画像研究では安静時脳活動の解析パイプラインへと拡充し、脳画像レジストリ研究で収集される脳画像を集約し、1次解析を定期的に実施できる体制を構築していく。
公開日・更新日
公開日
2018-05-28
更新日
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