先天性および若年性の視覚聴覚二重障害に対する一体的診療体制に関する研究

文献情報

文献番号
201711107A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性および若年性の視覚聴覚二重障害に対する一体的診療体制に関する研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-056
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
松永 達雄(独立行政法人国立病院機構東京医療センター 臨床研究センター 聴覚・平衡感覚研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 角田 和繁(独立行政法人国立病院機構東京医療センター・臨床研究センター 視覚研究部)
  • 藤波 芳(独立行政法人国立病院機構東京医療センター・臨床研究センター視覚研究部視覚生理学研究室)
  • 岩田 岳(独立行政法人国立病院機構東京医療センター・臨床研究センター分子細胞生物学研究部)
  • 加我 君孝(独立行政法人国立病院機構東京医療センター・臨床研究センター)
  • 廣田 栄子(国立大学法人筑波大学・人間総合科学研究科)
  • 守本 倫子(国立研究開発法人国立成育医療研究センター・感覚器・形態外科部耳鼻咽喉科)
  • 仁科 幸子(国立研究開発法人国立成育医療研究センター・感覚器・形態外科部眼科)
  • 仲野 敦子(千葉県こども病院・診療部)
  • 副島千晶(地方独立行政法人大阪市民病院機構大阪市立総合医療センター・耳鼻咽喉科)
  • 高木 明(地方独立行政法人静岡県立病院機構静岡県立総合病院)
  • 山澤 一樹(独立行政法人国立病院機構東京医療センター・臨床遺伝センター/小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
6,300,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者交替 木下彩子(平成29年4月1日~29年7月1日)→副島千晶(平成29年7月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の対象は、先天性および若年性(40歳未満で発症)の視覚聴覚二重障害(盲ろう)の原因となる難病で、該当する疾病が35以上と多様であり、患者数は全国に約2600人と推計される。本難病では、コミュニケーション、情報の入手、移動が極めて困難となる。特に小児の約90%は知的障害や肢体不自由などの他の障害も重複するため負担が大きい。本難病患者に対する早期診断、早期介入で、教育と社会参加を促進する必要性は高い。本研究では、本難病を一体的に診療する体制の構築を目的とする。
研究方法
a.患者の実態調査
全国疫学調査を、まず疾患別の患者数調査(一次調査)を郵送によるアンケート調査で行う。適正な医療体制の規模と配置の策定には、多数を対象とした量的・統計的な調査が必須となる。

b.教育、福祉の実態把握
29年度は研究分担者の廣田栄子が福祉の全国調査を、研究協力者の星祐子(国立特別支援教育総合研究所上席総括研究員)が、教育の調査を行う。

c.診療マニュアル策定
本医療の専門家の経験、学識、本研究で集積される情報に基づいて、本難病の診療マニュアルを策定する。29年度に総論の原案をまとめる。

d.医療情報公開
本難病の医療情報を、患者、医療者、一般向けに提供するWEBサイトを作成し、国立病院機構東京医療センターのサーバーから公開する。29年度に全体構成を完成する。

e.データベースへの協力
29年度から臨床ゲノム情報統合データベース(希少・難治性疾患領域)に登録する。

f.一体的診療体制のモデル確立と検証
29年度は東京医療センターで一体的診療を開始する。

g.患者会・学会等との連携
29年度から東京医療センターを中心とした医療機関、患者会、患者支援団体、教育機関、学会および他の研究班との連携体制を構築する。

h.遺伝子検査体制構築
29年度に本研究対象の主たる難病の遺伝子検査を保険適用で実施できる体制を整備する。

i.国際研究体制構築
本難病の診療の資料やインターネット情報はほぼ皆無であるため、海外の先進的医療施設との研究協力体制を構築し、海外の現地調査を行い、患者の診療に陪席して実際の技術を習得する。
結果と考察
a.患者の実態調査
一次調査の調査票を1061施設の視覚聴覚二重障害の診療科に3191通送付して、832施設(78.4%)から1091通(34.2%)の返信があり、84疾患1038症例と本難病の多様性を示す結果であった。この結果、患者実態の把握により、適正な医療提供体制および医療制度の策定が可能となる。

b.教育、福祉の実態把握
厚生労働省委託事業I(盲ろう者向け通訳者養成研修等事業)による視覚聴覚二重障害児145世帯の全国調査から、盲ろう児のコミュニケーションの療育を促進する必要性が判明し、診療マニュアルに反映した。特別支援学校の実態調査は、平成29年10月に実施して、データ解析中である。得られた結果は診療マニュアル策定などに活用する予定である。

c.診療マニュアル策定
全体構成を決定し、22人の分担執筆者で15項目の原稿を作成した。診療マニュアルの作成、公開によって、標準的治療の普及が可能となり、早期診断・治療につながる。

d.医療情報公開
 WEBサイト(http://www.ntmc.go.jp/ntmc/deafblind/index.html)の構成を決定した。

e.データベースへの協力
臨床ゲノム情報統合データベース(希少・難治性疾患領域)に本難病60症例を登録した。科学的根拠に基づいた診療ガイドライン等の作成、更新が可能となる。

f.一体的診療体制のモデル確立と検証
現時点までに8例で実施した。一体的な医療体制の確立により、重複した診療や検査を回避できて、医療費削減につながる。

g.患者会・学会等との連携
全国盲ろう者協会、全国盲ろう者団体連絡協議会、盲ろう児とその家族の会、全国の盲ろう者友の会、全国盲ろう教育研究会と連携して、班会議参加、意見交換の継続、患者紹介、診療マニュアルの分担執筆を進めた。関連する学会、研究班にも本研究成果を報告した。医療から教育および社会支援へのシームレスな連携、小児から成人への移行が促進される。

h.遺伝子診断の実施体制
 遺伝子検査の受託体制を整備し、研究検査から開始した。遺伝学的の実装により、未診断症例の減少と早期診断が可能となる。

i.国際研究体制構築
英国施設を研究代表者が訪問し、本医療の情報収集を行った。本難病に対する先進的医療を導入できた。
結論
患者の実態調査、診療マニュアル、医療情報公開、データベース協力、一体的診療体制モデル検証、患者会・学会等との連携、遺伝子検査体制構築、国際研究体制構築を進めて、本難病の診療に役立つ成果を得た。

公開日・更新日

公開日
2018-05-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201711107Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,000,000円
(2)補助金確定額
6,964,000円
差引額 [(1)-(2)]
36,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,698,586円
人件費・謝金 3,146,725円
旅費 420,593円
その他 998,748円
間接経費 700,000円
合計 6,964,652円

備考

備考
36,000円 返還

公開日・更新日

公開日
2019-03-07
更新日
-