先天代謝異常症の生涯にわたる診療支援を目指したガイドラインの作成・改訂および診療体制の整備に向けた調査研究

文献情報

文献番号
201711102A
報告書区分
総括
研究課題名
先天代謝異常症の生涯にわたる診療支援を目指したガイドラインの作成・改訂および診療体制の整備に向けた調査研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-051
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
中村 公俊(熊本大学大学院生命科学研究部 小児科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 窪田 満(国立研究開発法人国立成育医療研究センター 総合診療部)
  • 新宅 治夫(大阪市立大学 大学院医学研究科)
  • 呉 繁夫(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 小国 弘量(東京女子医科大学 小児科)
  • 長尾 雅悦(国立病院機構北海道医療センター 小児遺伝代謝センター)
  • 坂本 修(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 高柳 正樹(帝京平成大学 健康医療スポーツ学部看護学科)
  • 大竹 明(埼玉医科大学 小児科)
  • 小林 弘典(島根大学 医学部小児科)
  • 杉江 秀夫(常葉大学 保健医療学部)
  • 深尾 敏幸(岐阜大学 大学院医学系研究科)
  • 伊藤 哲哉(藤田保健衛生大学 医学部)
  • 児玉 浩子(帝京平成大学 健康メディカル学部)
  • 高橋 勉(秋田大学 大学院医学系研究科)
  • 奥山 虎之(国立研究開発法人国立成育医療研究センター 臨床検査部)
  • 但馬 剛(国立成育医療研究センター 研究所マススクリーニング研究室)
  • 羽田 明(千葉大学 大学院医学研究院)
  • 青天目 信(大阪大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
19,157,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では遺伝性難病である先天代謝異常症患者の生涯にわたる診療を支援するためのガイドラインの作成・改訂と、診療体制の整備をおこなうことを目的としている。そのために、診断および治療の実態を継続的に調査し、客観的診断基準や重症度分類を検証するとともに、診療ガイドラインとして標準化し出版・公開することをとした。日本小児科学会、日本先天代謝異常学会、日本マススクリーニング学会などの関連委員会と連携し、さらに深尾班(診療ガイドラインと遺伝子診断)、奥山班(スクリーニング法の開発)、小林班(OTC欠損症とムコ多糖症)、村山班(ミトコンドリア病)、衞藤班(ライソゾーム病)、村上班(先天性GPI欠損症)、但馬班(新生児マススクリーニング)などと連携することとした。そして、先天代謝異常症に関わる専門医師、診断施設、学会などのオールジャパンの取り組みで、生涯にわたる診療支援が継続的に可能になる体制作りを目指している。
研究方法
ここで取り上げる疾患の多くは全国の自治体で新規に推進されている拡大新生児マススクリーニングの対象疾患になっている。平成29年度の研究では
(1)対象となる46疾病のガイドラインの中から、25疾患と2つの病態の診療ガイドラインの改定及び作成
(2)移行期医療と成人期の診療体制の整備に向けた調査と診療モデルの作成
(3)年間80症例の新規患者登録、患者会の支援と年1回の合同患者会の開催
(4)新生児代謝スクリーニングと特殊ミルク制度に関する課題整備と診断・治療体制への提言をおこなった。
結果と考察
研究班の総合的成果
(1)ガイドラインの作成
対象とした疾患の中で、新生児マススクリーニング対象疾患等ガイドライン2015の改訂作業を行い、学会承認を得るためのガイドライン改定案を作成した。作成した25疾患+2つの病態は以下のとおりである。
 フェニルケトン尿症、BH4欠損症と類縁疾患、高チロシン血症1型、メープルシロップ尿症、ホモシスチン尿症、高メチオニン血症、リジン尿性蛋白不耐症、尿素サイクル異常症、プロピオン酸血症、メチルマロン酸血症、イソ吉草酸血症、グルタル酸血症1型、複合カルボキシラーゼ欠損症、メチルクロトニルグリシン尿症(3MCC欠損症)、全身性カルニチン欠乏症、カルニチン回路異常症(CACT欠損症、CPT1欠損症、CPT2欠損症)、三頭酵素欠損症、極長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症、中鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症、グルタル酸血症2型、βケトチオラーゼ欠損症、HMG-CoAリアーゼ欠損症、糖原病(筋型、肝型)、ガラクトース血症1型 の25疾病と、門脈体循環シャント、代謝救急の2つの病態である。
(2)移行期医療と成人期の診療体制の整備に向けた調査と診療モデルの作成
 ウイルソン病ガイドラインにおいて、移行期医療の在り方および患者家族の意見を反映したガイドラインにすることを試みた。また、成人移行期治療連携計画策定料と成人移行期治療連携指導料について提案を試みた。
(3)患者登録制度の推進、患者会の支援および海外の登録制度との連携
 先天代謝異常症患者登録制度(JaSMIn)の登録状況と各種研究等への利活用状況について調査した。登録患者数は1,337名、疾患数は約60疾患であり、今年度に86名の新たな患者登録がなされた。
(4)新生児代謝スクリーニングと特殊ミルク制度に関する課題整備と診断・治療体制への提言とガイドライン作成
 特殊ミルク供給事業においては乳業会社の負担が大きく、安定供給に問題が生じていため、他の関連学会と連携して特殊ミルク使用に関するガイドラインを作成することで安定した供給体制を構築することとなった。日本先天代謝異常学会のほか、日本小児神経学会、日本小児腎臓病学会、日本小児内分泌学会、日本小児栄養消化器肝臓学会、さらに日本小児科学会などと連携して、特殊ミルクの適応疾患、対象年齢、必要量などの検討をおこない、疾患個票として厚労省難病対策課に報告した。
H29年度の研究班においては、これまでの研究成果の上に立ってガイドラインの作成と、当該学会の承認を得ることのできるガイドラインの策定を進めた。また、特殊ミルクの安定供給に関わる課題の整理は、本研究班の主たる研究領域である先天代謝異常症以外に、小児神経、小児腎臓病、小児内分泌、小児栄養消化器肝臓などの関連学会から研究協力者を得たことで、実際の臨床に則した特殊ミルクの適応疾患、対象年齢、必要量などの検討をおこなうことができた。
結論
これまでに、25疾患+2つの病態について診療ガイドラインの改訂案を作成した。H30年度には、これらの診療ガイドラインについてパブリックコメントの募集を行い、日本先天代謝異常学会の承認、H31年度に改訂版の出版を予定している。

公開日・更新日

公開日
2018-05-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-05-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201711102Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
23,319,000円
(2)補助金確定額
23,319,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,633,057円
人件費・謝金 1,444,928円
旅費 7,958,649円
その他 4,120,367円
間接経費 4,162,000円
合計 20,319,001円

備考

備考
預金利息1円

公開日・更新日

公開日
2019-02-20
更新日
-