神経免疫疾患のエビデンスによる診断基準・重症度分類・ガイドラインの妥当性と患者QOLの検証

文献情報

文献番号
201711094A
報告書区分
総括
研究課題名
神経免疫疾患のエビデンスによる診断基準・重症度分類・ガイドラインの妥当性と患者QOLの検証
課題番号
H29-難治等(難)-一般-043
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
松井 真(金沢医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 荻野 美恵子(国際医療福祉大学 医学部)
  • 梶 龍兒(徳島大学大学院 医歯薬学研究部)
  • 河内 泉(新潟大学 医歯学総合病院)
  • 神田 隆(山口大学大学院 医学系研究科)
  • 吉良 潤一(九州大学大学院 医学研究院)
  • 楠 進(近畿大学 医学部)
  • 栗山 長門(京都府立医科大学 医学部)
  • 桑原 聡(千葉大学大学院 医学研究院)
  • 酒井 康成(九州大学大学院 医学研究院)
  • 清水 潤(東京大学 医学部)
  • 清水 優子(東京女子医科大学 医学部)
  • 鈴木 則宏(慶應義塾大学 医学部)
  • 園生 雅弘(帝京大学 医学部)
  • 祖父江 元(名古屋大学大学院 医学系研究科)
  • 田原 将行(国立病院機構宇多野病院 臨床研究部)
  • 中辻 裕司(富山大学附属病院)
  • 中村 幸志(北海道大学大学院 医学研究院)
  • 中村 好一(自治医科大学 地域医療学センター)
  • 新野 正明(国立病院機構北海道医療センター 臨床研究部)
  • 野村 恭一(埼玉医科大学 総合医療センター)
  • 藤原 一男(福島県立医科大学 医学部)
  • 松尾 秀徳(国立病院機構長崎川棚医療センター 臨床研究部)
  • 村井 弘之(国際医療福祉大学 医学部)
  • 本村 政勝(長崎総合科学大学 工学部)
  • 山野 嘉久(聖マリアンナ医科大学 医学研究科)
  • 山村 隆(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所)
  • 横田 隆徳(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科)
  • 吉川 弘明(金沢大学 保健管理センター)
  • 渡邊 修(鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
12,560,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では疫学や病態変遷、治療による疾患アウトカムの変化などを評価・検証し、ガイドライン等の策定が患者QOLの改善に結びついているか否かを検証する。そこで、二万人の患者が存在する多発性硬化症・視神経脊髄炎(MS・NMO)および重症筋無力症(MG)について大規模全国調査を行い、患者の予後、経済的負担およびQOLが、近年の医療情勢の中でどのように変化したのかを解析することを第一の柱とした。一方、近年免疫介在性の病態を有することが判明した神経疾患として、クロウ・深瀬症候群、アトピー性脊髄炎、アイザックス症候群、ビッカースタッフ脳幹脳炎、中枢末梢連合脱髄症(CCPD)、特発性肥厚性硬膜炎、自己免疫性脳炎、スティッフパーソン症候群(SPS)、Lambert-Eaton筋無力症候群(LEMS)などが挙げられる。このうち、後三者についても全国調査を行い、疾患概要情報を整えることを二番目の柱とした。
研究方法
研究対象となる神経免疫疾患の領域別担当幹事を指名し、リーダーとしてグループ内で意見を調整しながら具体的かつ主体的に調査研究を進める方法を採用した。全国調査は大きな比重を占めるため、疫学グループを含めた7グループ(研究分担者・研究協力者の重複所属を妨げない)で研究を進めた。なお、倫理面への配慮については以下のように取り扱った。多施設間の疫学調査は、中心となる施設における倫理委員会の承認のみで十分と判断された施設の参加によって行われた。一方、施設単位での研究は、各研究分担者・研究協力者の所属する施設の倫理規定に従って行なわれた。
結果と考察
MS、NMO、アトピー性脊髄炎グループでの成果として、平成28年末に発売されたフマル酸ジメチルに関する経験が蓄積し発表された。進行性多巣性白質脳症発症への懸念から、フィンゴリモド治療からの切り替え症例が出て来ているが、同薬の中止期間をおくと重篤な形での再発リスクが高まること、中止せずに切り替えた場合には再発頻度を低く抑えられるという経験が発表された。しかし、適切な切り替え方法については、今後の検討が必要である。110のClinical Question(CQ)から構成されたMS・NMO診療ガイドライン2017にはフマル酸ジメチルの情報は収載されていないため、追加情報小委員会を組織し、平成29年度中に4回の会合を開いて4つのCQをガイドライン追加情報として完成した。これらは、神経学会の承認が得られた。MG、LEMS 、炎症性筋疾患グループでは、MGの大規模全国調査をLEMSの実態調査とともに行うべく、両疾患の二次調査票の内容を疫学グループとの連携を取りながら決定した。また、平成30年3月までに、約7,500箇所の施設および部門への一次調査票送付を終えた。ビッカースタッフ脳幹脳炎、ギラン・バレー症候群、フィッシャー症候群グループでは、抗自律神経節アセチルコリン受容体抗体陽性の自己免疫性自律神経障害123例の検討を行い、急性経過は4分の1で、4分の3は慢性の経過を呈することを明らかにした。CIDP、MMNグループでは、CIDPの各臨床病型の頻度や重症度分布、予後把握のためのコンソーシアム構築が完了した。クロウ・深瀬症候群、CCPD、アイザックス症候群グループからは、クロウ・深瀬症候群の新規診断基準により診断した患者について治療指針案を提言した。自己免疫性脳炎・肥厚性硬膜炎・スティッフパーソン症候群(SPS)グループでは、自己免疫機序による脳炎・脳症(NMDAR脳炎、VGKC脳炎、橋本脳症を対象)の全国一次調査を行った。277施設において878症例の報告が上げられ(男性364人、女性514人)、3年間で推定される患者は2,700人と算定された。また、特発性肥厚性硬膜炎の診断基準と重症度分類を確定し、正式に日本神経学会の承認を得た。さらに、SPSの暫定診断基準に基づいて一次調査票の発送を完了した。新規に組織した疫学グループは、本年度、MGおよびLEMSの一次調査および二次調査の設計に多大な貢献をした。
結論
平成30年1月18日から19日にかけて日本都市センターホテル(東京)において、他の神経免疫疾患関連実用化研究班6班とともに合同班会議を開催した。その結果、AMED関連実用化研究班と、本政策研究班との相互参加による討論の積み重ねが課題解決への早道であり、新たな問題点に光を当てる成果を生み出しているという事実が確認された。このため、本研究班とAMED関連の神経免疫疾患研究班が合同で研究発表会を開催することが、厚生労働行政における車の両輪として国民の健康増進という課題に効率的に取り組むための、優れた方法の一つであると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2018-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201711094Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
16,328,000円
(2)補助金確定額
16,296,000円
差引額 [(1)-(2)]
32,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,133,999円
人件費・謝金 603,037円
旅費 3,116,119円
その他 4,675,819円
間接経費 3,768,000円
合計 16,296,974円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2019-02-08
更新日
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