特発性造血障害に関する調査研究

文献情報

文献番号
201711077A
報告書区分
総括
研究課題名
特発性造血障害に関する調査研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-026
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
三谷 絹子(獨協医科大学 医学部 内科学(血液・腫瘍)講座)
研究分担者(所属機関)
  • 金倉 譲(大阪大学大学院医学系研究科 血液・腫瘍内科学)
  • 中尾 眞二(金沢大学・ 医薬保健研究域医学系 血液・呼吸器内科)
  • 廣川 誠(秋田大学大学院医学系研究科 総合診療・検査診断学講座)
  • 赤司 浩一(九州大学・大学院医学研究院・病態修復内科学)
  • 宮崎 泰司(長崎大学原爆後障害医療研究所・原爆・ヒバクシャ医療部門 血液内科学研究分野)
  • 高折 晃史(京都大学・医学研究科・血液・腫瘍内科学研究分野)
  • 黒川峰夫(東京大学・大学院医学研究科 血液・腫瘍病態学講座)
  • 岡本 真一郎(慶應義塾大学・医学部 血液内科学)
  • 神田善伸(自治医科大学・医学部・内科学講座・血液学部門・総合医学第1講座)
  • 真部 淳(聖路加国際大学・聖路加国際病院)
  • 太田晶子(埼玉医科大学・医学部 社会医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班では再生不良性貧血、赤芽球癆、溶血性貧血、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄線維症を対象として、疫学・病因・病態・診断・治療・予後などの幅広い領域にわたって全国規模の調査研究を推進する。そのために各疾患において症例登録システムを充実させ患者の実態把握を行い、本邦の実態に即した治療法の開発・最適化に努める。さらに、難治性疾患実用化研究事業(「オミクス解析技術と人工知能技術による難治性造血器疾患の病因解明と診断向上に貢献する解析基盤の開発」とも協力する。得られた知見は、診断基準の策定や「診療の参照ガイド」の改訂作業を通じて、広く臨床の場で利用できるようにする。
研究方法
再生不良性貧血:2017年エルトロンボパグが新たに保険適応となり、シクロスポリンの適応が非重症例に拡大された為に、「診療の参照ガイド」の改定を行った。
赤芽球癆:後天性慢性赤芽球癆の予後改善の有無および難治例における鉄キレート療法の有効性を明らかにすることを目的として、前向き観察研究を計画した。
溶血性貧血:発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)における血管内溶血と尿沈渣ヘモジデリン顆粒との関係を解析した。
MDS:再生不良性貧血とMDSの臨床像と治療成績の把握を目的とした前方視的症例登録・追跡調査研究と、これらの疾患の診断一致率の向上を目指したセントラルレビューを継続した。
骨髄線維症:前向き観察研究を継続した。
結果と考察
再生不良性貧血:「診療の参照ガイド」の主な変更点は、stage 1と輸血不要なstage 2aに対してはシクロスポリンで治療を開始すること、輸血が必要なstage 2bとstage 3~5に対してはATG+シクロスポリンにエルトロンボパグを加えることである。
赤芽球癆:全国から181例の後天性赤芽球癆症例について登録医による研究参加同意が得られ、患者同意の取得後に臨床調査票の回収を行い、2018年1月6日時点で96例の登録を得た。
溶血性貧血:尿中に出現するヘモジデリン顆粒は血管内溶血を反映する簡便な検査法であるが、エクリズマブに代表される抗補体薬により溶血を抑制した際には、治療期間が2年半以上の11例全例で消失し、腎障害の要因が解除されていた。
MDS:平成29年末までの登録症例数は380例で、このうち骨髄芽球が5 %未満の症例については末梢血標本および骨髄標本のセントラルレビューを行った。また、登録された症例について毎年追跡調査を実施している。今回は、中央診断が再生不良性貧血、意義不明の特発性血球減少症(ICUS)、もしくはFAB分類でのMDSの患者についての予後解析を行った。その結果、ICUSの予後は本邦においては再生不良性貧血と同様に良好であること、MDSの予後はWHO分類による病型ごとに大きく異なること、多系統の異形成を伴うMDSのうち環状鉄芽球を有するものの予後は欧米と異なり不良であることが示された。さらに、芽球増加がみられないMDSのうち、診断時の網状赤血球数が維持されている群は網状赤血球数が減少している群に比べて全生存期間が長いことが示された。
骨髄線維症:17年間で782例の臨床情報を集積した。生存期間の中央値は4.0年で、3年生存率は59%である。主な死因は、感染症、白血病への移行であった。国際的な予後スコアリングシステムであるDIPSS-Plus (Dynamic International Prognostic Scoring System for PMF-Plus)は、わが国の症例においても予後不良群の抽出が可能で、予後指標として有用であった。
結論
再生不良性貧血:「再生不良性貧血の診療の参照ガイド」の治療のフローチャートを改定した。
赤芽球癆:最大181例の新たな後天性赤芽球癆症例について予後調査が可能となる。
溶血性貧血:PNHの尿中ヘモジデリンの検査は、血管内溶血の指標であると同時に、抗補体薬投与後、腎臓への鉄沈着による腎障害のリスクが回避されたことを確認する良い指標になる可能性がある。
MDS:今回の解析では、わが国の再生不良性貧血、ICUS、および病型別のMDS患者の予後に関する貴重な情報が得られた。本研究で構築されているデータベースには、セントラルレビューにより診断が担保されている多くの症例の登録時データと、追跡調査データが蓄積されている。今後、さらなる症例登録と追跡調査によって本邦における再生不良性貧血およびMDSの特徴を分析し、これに基づいた診療指針を作成し公開していくことが重要であると考えられる。
骨髄線維症:わが国の原発性骨髄線維症780例の臨床情報を集積した。国際予後スコアリングシステムのDIPSS-Plusは、わが国の原発性骨髄線維症の予後予測に有用である。

公開日・更新日

公開日
2018-05-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-05-14
更新日
2018-10-02

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201711077Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,800,000円
(2)補助金確定額
10,800,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,973,162円
人件費・謝金 0円
旅費 2,959,736円
その他 2,074,045円
間接経費 1,800,000円
合計 10,806,943円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2019-02-19
更新日
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