文献情報
文献番号
201711060A
報告書区分
総括
研究課題名
運動失調症の医療基盤に関する調査研究
課題番号
H29-難治等（難）-一般-009
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
水澤 英洋(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 阿部 康二(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 脳神経内科学)
- 池田 佳生(群馬大学大学院医学系研究科 脳神経内科学)
- 石川 欽也(東京医科歯科大学医学部附属病院 長寿健康人生推進センター)
- 宇川 義一(福島県立医科大学医学部 神経内科学講座)
- 小野寺 理(新潟大学脳研究所 神経内科学)
- 勝野 雅央(名古屋大学大学院医学系研究科 神経内科学)
- 吉良 潤一(九州大学大学院医学研究院 神経内科学分野神経内科学)
- 桑原 聡(千葉大学大学院医学研究院 神経内科学)
- 佐々木 秀直(北海道大学大学院医学研究院 神経病態学分野神経内科学教室)
- 高尾 昌樹(埼玉医科大学医学部 )
- 高嶋 博(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 神経内科・老年病学)
- 瀧山 嘉久(山梨大学大学院総合研究部医学域 神経内科学講座)
- 武田 篤(国立病院機構仙台西多賀病院 臨床研究部)
- 田中 章景(横浜市立大学大学院医学研究科 神経内科学・脳卒中医学)
- 辻 省次(東京大学医学部附属病院 分子神経学)
- 花島 律子(鳥取大学医学部医学科 脳神経医科学講座脳神経内科学分野)
- 宮井 一郎(社会医療法人大道会森之宮病院 神経リハビリテーション研究部)
- 吉田 邦広(信州大学医学部 神経難病学講座)
- 高橋 祐二(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター病院 脳神経内科診療部)
- 金谷 泰宏(国立保健医療科学院 健康危機管理研究部)
- 大西 浩文(札幌医科大学医学部 公衆衛生学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究（難治性疾患政策研究）
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
19,231,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書（概要版）
研究目的
当研究班の対象疾患は脊髄小脳変性症(SCD)、多系統萎縮症(MSA)及び痙性対麻痺(HSP)である。共通課題として、診断基準・重症度指標・臨床調査個人票（個票）の検証と見直し・改訂による実態把握・診断精度向上・国際共同研究、SCD・MSA診療ガイドラインの公開・普及と評価による診療の質の標準化、個票のデータ収集・分析、患者レジストリを活用した自然歴研究・診断支援・生体試料収集による診療・研究基盤および病型別自然歴確立と確定診断・病態解明、バイオマーカー開発による定量評価指標確立、治療法・リハビリテーション法の最適化と普及による診療支援を実施する。特にSCDでは診断基準検証、患者登録・病型別自然歴調査、未診断例などの診断支援体制構築、小脳機能定量評価法開発、リハビリテーションの普及、小児科領域との連携を推進する。MSAでは早期診断の基準策定、早期患者のレジストリ・自然歴調査、早期診断のバイオマーカー開発、治験への協力を進め、HSPではJASPACを継続しバクロフェン持続髄注(ITB)療法の最適化を行う。
研究方法
特発性小脳失調症（idiopathic cerebellar ataxia, IDCA）の診断基準案に基づく患者実態を明らかにする。MSA統一臨床評価尺度(UMSARS)の日本語訳を完成する。MSA早期診断に適切な自律神経機能評価法を検討する。脳表ヘモジデリン沈着症の実態を明らかにする。SCD・MSA診療ガイドラインを完成する。厚生労働省が管理する難治性疾患データベースを活用した疫学研究を行う。患者登録システムJ-CAT(Japan Consortium of ATaxias)を進める。SCA8の分子疫学について検討を行う。40歳未満の若年発症のSCD患者に対してペルオキシソーム病のスクリーニング検査を行う。遺伝性SCDを対象とし次世代シークエンサーを用いたエクソーム解析を行う。赤外線深度センサー・視覚誘導性サッケード課題と記憶誘導性サッケード課題・iPatax検査・3次元触覚/力覚インターフェイスデバイス・3軸加速度計を用いて小脳機能の定量的評価を行う。MSAにて認知機能・REM睡眠行動障害を評価し、単球表面マーカー・血漿のmicroRNA発現量もバイオマーカーとしての妥当性を検討する。HSPに対するITB療法の治療効果に関する多施設共同研究を計画する。SCD・MSAに対する短期集中リハの即時効果について病型・病期別に検討する。いずれの研究も該当する倫理指針を遵守し各倫理委員会で研究の審査と承認を得て行う。
結果と考察
IDCAの診断基準案に基づいて実態を明らかにした。診断基準には罹病期間を考慮に入れる付帯条件が必要であると考えられた。UMSARSの日本語版を完成し、治験や自然歴調査への活用が期待される。MSAの早期診断基準を検討し、特異度を保ったまま感度を向上することが可能な、自律神経障害基準の緩和を提唱した。脳表ヘモシデリン沈着症の実態を明らかにした。SCD・MSA診療ガイドラインの内容を確定し、今後その普及と評価を進める。個票に基づき人工知能を用いた診断検討を行った。J-CATでは438例を登録した。SCA31，SCA1，IDCAの前向き自然歴研究分科会を構成した。JASPAC及びJAMSACの従来の臨床試料収集も順調に進捗した。SCA8の分子疫学を解明した。今後SCA8のCTGリピート伸長の意義を明らかにしてゆく。 J-CAT 218例の遺伝子検査により全国のSCDの診断支援を行った。若年性SCDの診断における脂肪酸分析の有用性を明らかにした。エクソーム解析により稀な病型のSCDを複数診断した。赤外線深度センサー、サッケード課題、iPatax、3次元触覚/力覚インターフェイスデバイス、3軸加速度計を用いて小脳機能の定量的評価を行いバイオマーカーとしての妥当性・有用性を検証した。診断における認知機能検査の有用性、早期診断におけるレム睡眠障害の重要性について検討した。患者血清等の生体試料を用いた末梢血単球、miRNAの分析を行いバイオマーカーの候補を同定した。ITB療法の痙性対麻痺に対する治療効果を検証する多施設共同研究の基盤を整備した。短期集中リハビリテーションプログラムの有効性を分析した。
結論
IDCA診断基準案の検証・MSA早期診断基準の提唱、診療ガイドライン確定、患者登録システムの稼働とそれを活用した診断支援・前向き自然歴研究体制、疫学情報の充実、生体試料収集、分子マーカー候補発見、運動失調症状の定量的評価法の確立、治療支援の基盤構築を達成した。運動失調症の医療基盤の整備に向けて着実に研究が遂行された。
公開日・更新日
公開日
2018-05-30
更新日
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