好酸球性副鼻腔炎の診療ガイドライン作成と実態調査

文献情報

文献番号
201711049A
報告書区分
総括
研究課題名
好酸球性副鼻腔炎の診療ガイドライン作成と実態調査
課題番号
H28-難治等(難)-一般-034
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
藤枝 重治(福井大学 学術研究院医学系部門)
研究分担者(所属機関)
  • 春名 眞一(獨協医科大学 医学部)
  • 竹野 幸夫(広島大学 医歯薬保健学研究科)
  • 檜垣 貴哉(岡山大学 医歯薬学総合研究科)
  • 吉川 衛(東邦大学 医学部)
  • 鴻 信義(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 三輪 高喜(金沢医科大学 医学部)
  • 小林 正佳(三重大学 医学系研究科)
  • 近藤 健二(東京大学 医学系研究科)
  • 都築 建三(兵庫医科大学 医学部)
  • 池田 勝久(順天堂大学 医学部)
  • 吉田 尚弘(自治医科大学 医学部)
  • 松根 彰志(日本医科大学 医学部)
  • 中丸 裕爾(北海道大学 医学研究院)
  • 太田 伸男(東北医科薬科大学 医学部)
  • 田中 康広(獨協医科大学 医学部)
  • 浦島 充佳(東京慈恵会医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
3,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本政策研究では、好酸球性副鼻腔炎の概念、診断基準、重症度分類の啓蒙・普及を第一の目的とする。そのため本研究課題のホームページを立ち上げるとともに、日本鼻科学会と協力して市民公開講座を開く。好酸球性副鼻腔炎の診断基準発表後、これまで検討もされていなかった手術症例においても術前に診断されることが一般的となり、患者数が増加してきた。そのため現在の好酸球性副鼻腔炎手術症例の現状を調査する。さらに好酸球性副鼻腔炎に対しては、効果がないとしながら、かなりの頻度でマクロライド抗菌薬、鼻噴霧用ステロイド、抗ロイコトリエン薬、漢方薬が処方されている。そこで治療ガイドライン作成を目的に、保存的治療によってどの程度治療効果があるのか検討する。好酸球性副鼻腔炎に対して、最も鼻閉および嗅覚障害を改善させるのは内視鏡下鼻副鼻腔手術である。各施設で様々工夫を行い、再発防止に努めている。その工夫をまとめる。
研究方法
対象者は、2015年1月1日〜2019年12月31日に慢性副鼻腔炎の手術治療を受けた患者と2017年1月1日〜2021年12月31日に保存的治療を受けた好酸球性副鼻腔炎患者とした。
登録内容は、施設番号、性別、年齢、初診日、発症年齢、初診時身体所見、喫煙歴、診断時採血:血算、血液像、非特異的IgE、特異的IgE、呼吸機能検査:VC(肺活量)、%VC(%肺活量)、FEV1.0(一秒量)、FEV1.0%(一秒率)、CTスコア(Lund-Mackayスコア)、鼻茸組織中好酸球数、合併症、JESRECスコアおよび重症度診断、手術症例において:手術日、術式、予後判定日、鼻茸スコアの変化、ステロイド使用量、鼻洗浄の有無、他の研究でのサンプル採取の有無とした。症状は、鼻閉・粘稠な鼻汁・頭痛・嗅覚障害に関するVAS(visual analogue scale)を用いて比較する。同時に各研究施設で手術法の検討を行った。
保存的治療の予後調査は、患者登録内容は手術用と同じとした。予後調査票は、手術関連の内容を削除し、来院のたびごとに、使用薬剤、鼻茸スコア、鼻閉・粘稠な鼻汁・頭痛・嗅覚障害に関するVAS(visual analogue scale)にて治療効果を判定できるようにした。
結果と考察
本政策研究班ホームページとして、Home(News& Topics)、概要(研究代表者挨拶、JESREC Studyとは、組織、関連リンク)、一般の方へ(難治性好酸球性副鼻腔炎とは、オープンアクセス論文)、Staff only(認証ページ)、お問い合わせ(Email)から構成されたページを作成し掲載した(https://jesrec.jp/index.html)。
平成29年9月30日第56回日本鼻科学会において「好酸球性副鼻腔炎の診断と治療」の市民公開講座を行った。
手術および保存的治療の症例登録は、本政策研究班ホームページから認証ページにアクサスし、User IDとPasswordでloginできるようにした。
好酸球性副鼻腔炎手術法は、篩骨洞優位の炎症が多いので、篩骨洞部分の開放が重要となる。篩骨蜂巣の単洞化手術、残存蜂巣を無くすこと、さらに鼻腔側壁の鼻粘骨膜弁を術中に作製し、篩骨漏斗の粘膜を除去したのちに同部位に使用することで、鼻茸再発率が低下することがわかった。また嗅裂を開大し嗅気流を増大させることが嗅覚障害を改善させるには大切であった。これらの確実な操作のためには、篩骨洞粘膜を主に栄養する前篩骨動脈の麻酔を術前に行い術中の出血量を減少させることが重要であった。術前には嗅裂所見のスコア化も必要であり、術前CT画像の読影向上、内視鏡下副鼻腔手術トレーニング用の模型の利用、鉗子など手術器具の正しい利用・理解が大切であった。
内視鏡下鼻副鼻腔手術術後に、鼻洗浄と鼻噴霧ステロイド薬だけでは、再発予防はかなり厳しい症例が多く、経口ステロイドが必要となる症例が多いと考えていた。しかし実際には、頻回の生理食塩水による鼻洗浄と鼻噴霧用ステロイドによる局所治療で再発リスクを軽減していた。
結論
「好酸球性副鼻腔炎の診療ガイドライン作成と実態調査」のホームページを掲載した。手術症例、保存的症例の電子登録システムをホームページ上に作成し稼働させた。好酸球性副鼻腔炎に対する手術療法の改良、術後の適切な処置で予後は改善される可能性が見いだせた。

公開日・更新日

公開日
2018-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201711049B
報告書区分
総合
研究課題名
好酸球性副鼻腔炎の診療ガイドライン作成と実態調査
課題番号
H28-難治等(難)-一般-034
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
藤枝 重治(福井大学 学術研究院医学系部門)
研究分担者(所属機関)
  • 春名 眞一(獨協医科大学 医学部)
  • 竹野 幸夫(広島大学 医歯薬保健学研究科)
  • 岡野 光博(岡山大学 医歯薬学総合研究科)
  • 檜垣 貴哉(岡山大学 医歯薬学総合研究科)
  • 吉川 衛(東邦大学 医学部)
  • 鴻 信義(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 三輪 高喜(金沢医科大学 医学部)
  • 小林 正佳(三重大学 医学系研究科)
  • 近藤 健二(東京大学 医学系研究科)
  • 都築 建三(兵庫医科大学 医学部)
  • 池田 勝久(順天堂大学 医学部)
  • 吉田 尚弘(自治医科大学 医学部)
  • 松根 彰志(日本医科大学 医学部)
  • 中丸 裕爾(北海道大学 医学研究院 )
  • 太田 伸男(東北医科薬科大学 医学部)
  • 田中 康広(獨協医科大学 医学部)
  • 児玉 悟(大分大学 医学部)
  • 柴田 邦彦(横浜市立大学 医学部)
  • 浦島 充佳(東京慈恵会医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本を中心とした東アジアで、好酸球浸潤の著明な難治性である好酸球性副鼻腔炎が2000年頃から増加してきた。本政策研究では、好酸球性副鼻腔炎の概念、診断基準、重症度分類の啓蒙・普及を第一の目的とする。そのため本研究課題のホームページを立ち上げるとともに、日本鼻科学会と協力して市民公開講座を開く。好酸球性副鼻腔炎の診断基準発表後、これまで検討もされていなかった手術症例においても術前に診断されることが一般的となり、好酸球性副鼻腔炎患者の手術症例が増加してきた。そのため現在の好酸球性副鼻腔炎の現状を調査する。さらに治療ガイドライン作成を目的に、保存的治療によってどの程度治療効果があるのか検討とともに好酸球性副鼻腔炎に対して、最も鼻閉および嗅覚障害を改善させるのは内視鏡下鼻副鼻腔手術法、術後治療に関して検討する。
研究方法
好酸球性副鼻腔炎に関するホームページを作成する。2015年1月1日から行われた研究施設での内視鏡下鼻副鼻腔手術(2000例予定)を電子登録し、症例解析を行い、好酸球性副鼻腔炎、従来型慢性副鼻腔炎、アレルギー性真菌性副鼻腔炎の割合を算出する。手術法による鼻茸再発率の違いを検討し、好酸球性副鼻腔炎に適した手術法を決定する。経口ステロイドによる症状改善率、その他の保存的治療(マクロライド抗菌薬、それ以外の抗菌薬、鼻噴霧用ステロイド、抗ロイコトリエン薬、漢方薬)による症状改善率を算出し、治療ガイドライン作成に反映させる。
各施設において工夫されている手術法を提案し、成績向上へのポイントを提示する。難治化因子、リスク因子に関して免疫組織化学など一般臨床的アプローチで探索する。
結果と考察
「好酸球性副鼻腔炎の診断ガイドライン作成と実態調査」に関する研究のホームページ(https://jesrec.jp/index.html)を立ち上げた。構成は、Home(News& Topics)、概要(研究代表者挨拶、JESREC Studyとは、組織、関連リンク)、一般の方へ(難治性好酸球性副鼻腔炎とは、オープンアクセス論文)、Staff only(認証ページ)、お問い合わせ(Email)とした。
手術症例および保存的治療症例の電子登録システムは、本研究班が立ち上げたホームページ内にStaff onlyの認証ページに作成し、そこから登録できるようにした。登録内容は、施設番号、性別、年齢、発症年齢、身体所見、鼻茸スコア、喫煙、血液所見、抗原特異的IgE、総IgE,呼吸機能、副鼻腔CTスコア(Lund-Mackayスコア)、鼻茸組織中好酸球数、合併症、JESRECスコア、好酸球性中耳炎の大項目と小項目、最終診断を簡便に選択する方式にした。手術症例では、選択した手術法、手術日、再発の有無、再発日を記載し、症状については、鼻閉・粘稠な鼻汁・頭痛・嗅覚障害に関するVAS(visual analogue scale)にて治療効果を判定できるようにした。
好酸球性副鼻腔炎手術法は、篩骨洞優位の炎症が多いので、篩骨洞部分の開放が重要となる。篩骨蜂巣の単洞化手術、残存蜂巣を無くすこと、さらに鼻腔側壁の鼻粘骨膜弁を術中に作製し、篩骨漏斗の粘膜を除去したのちに同部位に使用することで、鼻茸再発率が低下することがわかった。また嗅裂を開大し嗅気流を増大させることが嗅覚障害を改善させるには大切であった。これらの確実な操作のためには、篩骨洞粘膜を主に栄養する前篩骨動脈の麻酔を術前に行い術中の出血量を減少させることが重要であった。術前には嗅裂所見のスコア化も必要であり、術前CT画像の読影向上、内視鏡下副鼻腔手術トレーニング用の模型の利用、鉗子など手術器具の正しい利用・理解が大切であった。
内視鏡下鼻副鼻腔手術術後に、鼻洗浄と鼻噴霧ステロイド薬だけでは、再発予防はかなり厳しい症例が多く、経口ステロイドが必要となる症例が多いと考えていた。しかし実際には、頻回の生理食塩水による鼻洗浄と鼻噴霧用ステロイドによる局所治療で再発リスクを軽減していた。
結論
臨床研究法が施行され、それに対応した調査を今後行っていく。手術療法および保存的療法の調査は電子登録システムで稼働した。順次登録を行い、目標の2000例に達成するのみである。
手術法に関しては、中心病変部である篩骨洞を確実に確実に単洞化し、嗅裂の気流を回復させることが重要であった。さらに術後は、徹底した鼻洗浄と鼻噴霧ステロイドの使用、外来での鼻処置が必要であった。また手術に際しては、CT読影向上と手術トレーニングが大切であった。

公開日・更新日

公開日
2018-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201711049C

成果

専門的・学術的観点からの成果
好酸球性副鼻腔炎に対する手術では、炎症部位である副鼻腔の完全な開放が重要である。篩骨蜂巣の単洞化手術、残存蜂巣を無くすこと、鼻道を開大する内視鏡下副鼻腔手術の術式が嗅裂の気流を増大させ嗅覚障害を改善させることが大切であり、そのためには篩骨洞粘膜を主に栄養する前篩骨動脈の麻酔を術前に行うことによって、術中の出血量を減少させることが肝要であった。
臨床的観点からの成果
内視鏡下鼻副鼻腔手術術後、頻回の生理食塩水による鼻洗浄と鼻噴霧用ステロイドによる局所治療によって再発リスクを軽減していた。診断補助および治療効果判定に、鼻腔NOが有用であった。好酸球性副鼻腔炎手術の合併症は、髄液漏、眼窩合併症、大量出血であり、眼窩合併症は複数洞手術において有意に多かった。喫煙者及び喘息合併患者は有意に広範囲の手術を受ける傾向にあった。
ガイドライン等の開発
好酸球性副鼻腔炎治療ガイドライン作成のため、手術症例および保存的治療症例の電子登録システムを作成した。登録内容は、それぞれの治療前後の各臨床検査所見、発症年齢、身体所見、鼻茸スコア、呼吸機能、副鼻腔CTスコア、鼻茸組織中好酸球数、合併症、JESRECスコア、鼻閉・粘稠な鼻汁・頭痛・嗅覚障害に関するVAS(visual analogue scale)した。
その他行政的観点からの成果
「好酸球性副鼻腔炎の診断ガイドライン作成と実態調査」に関する研究のホームページ(https://jesrec.jp/index.html)を立ち上げた。構成は、Home(News& Topics)、概要(研究代表者挨拶、JESREC Studyとは、組織、関連リンク)、一般の方へ(難治性好酸球性副鼻腔炎とは、オープンアクセス論文)、Staff only(認証ページ)、お問い合わせ(Email)とした。
その他のインパクト
福井新聞、読売新聞に好酸球性副鼻腔炎に関する記事が掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
30件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shigeharu Fujieda* , Yoshimasa Imoto, Yukinori Kato,et al.
Eosinophilic chronic rhinosinusitis
Allergology International , 68 (4) ,  403-412  (2019)
10.1016/j.alit.2019.07.002
原著論文2
Asano K, Ueki S, Tamari M, et al.
Adult-onset eosinophilic airway diseases
Allergy , 75 (12) , 3087-3099  (2020)
10.1111/all.14620
原著論文3
Hiroyuki Nagase , Shigeharu Ueki , Shigeharu Fujieda
The roles of IL-5 and anti-IL-5 treatment in eosinophilic diseases: Asthma, eosinophilic granulomatosis with polyangiitis, and eosinophilic chronic rhinosinusitis
Allergol Int , 69 (2) , 178-186  (2020)
10.1016/j.alit.2020.02.002
原著論文4
Oka A, Ninomiya T, Fujiwara T, Takao S,et al.
Serum IgG4 as a biomarker reflecting pathophysiology and post-operative recurrence in chronic rhinosinusitis
Allergol Int , 69 (3) , 417-423  (2020)
10.1016/j.alit.2019.12.004
原著論文5
Kidoguchi M, Yoshida K, Noguchi E,
Association between the NOS2 pentanucleotide repeat polymorphism and risk of postoperative recurrenc
Allergol Int , 69 (4) , 619-621  (2020)
10.1016/j.alit.2020.04.005
原著論文6
Tsuguhisa Nakayama a,b , Tomomitsu Hirota b,c , Daiya Asaka a,et al
A genetic variant near TSLP is associated with chronic rhinosinusitis with nasal polyps and aspirin-exacerbated respiratory disease in Japanese populations
Allergology International , 69 , 138-140  (2019)
10.1016/j.alit.2019.06.007
原著論文7
Nobuo Ohta a,b,* , Shigeharu Ueki c , Yasunori Konno c,et al.
ETosis-derived DNA trap production in middle ear effusion is a common feature of eosinophilic otitis media
Allergology International , 67 , 414-416  (2017)
10.1016/j.alit.2017.11.007

公開日・更新日

公開日
2021-07-01
更新日
-

収支報告書

文献番号
201711049Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,500,000円
(2)補助金確定額
4,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 23,156円
人件費・謝金 1,822,622円
旅費 664,720円
その他 951,502円
間接経費 1,038,000円
合計 4,500,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2019-02-08
更新日
-