HAMならびにHTLV-1陽性難治性疾患に関する国際的な総意形成を踏まえた診療ガイドラインの作成

文献情報

文献番号
201711034A
報告書区分
総括
研究課題名
HAMならびにHTLV-1陽性難治性疾患に関する国際的な総意形成を踏まえた診療ガイドラインの作成
課題番号
H28-難治等(難)-一般-018
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
山野 嘉久(聖マリアンナ医科大学 大学院 先端医療開発学)
研究分担者(所属機関)
  • 中山 健夫(京都大学 大学院 医学研究科)
  • 亀井 聡(日本大学 医学部内科学系神経内科学分野)
  • 吉良 潤一(九州大学 大学院医学研究院神経内科学分野)
  • 郡山 達男(広島市立病院機構広島市立リハビリテーション病院 脳神経内科)
  • 岡山 昭彦(宮崎大学 医学部)
  • 川上 純(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科先進予防医学共同専攻)
  • 湯沢 賢治(国立病院機構水戸医療センター 臨床研究部)
  • 中川 正法(京都府立医科大学 大学院医学研究科)
  • 中村 龍文(長崎国際大学 人間社会学部社会福祉学科)
  • 久保田 龍二(鹿児島大学 学術研究院医歯学域医学系)
  • 松浦 英治(鹿児島大学 医歯学域医学系)
  • 松尾 朋博(長崎大学 病院)
  • 高田 礼子(聖マリアンナ医科大学 医学部)
  • 井上 永介(聖マリアンナ医科大学 医学情報学)
  • 鴨居 功樹(東京医科歯科大学 眼科)
  • 中島 孝(国立病院機構新潟病院 神経内科)
  • 村井 弘之(国際医療福祉大学 医学部)
  • 内丸 薫(東京大学 大学院新領域創成科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
11,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1)の感染者は我が国に約108万人存在し、その一部に難治性のHTLV-1関連脊髄症(HAM)や成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)を発症することから、この問題は厚生労働行政の上でも重要課題である。
 HAMはわが国で発見された難病であるが、これまで国際的な総意形成は必ずしも十分ではなく、診断基準や重症度分類基準が複数存在し、統一化されていないのが現状である。またHAMは多様な臨床経過を示すため、疾患活動性に基づいた治療方針決定が重要であるが、疾患活動性分類基準も確立されていないため、HAMの臨床研究や新薬開発、治療アルゴリズム確立に大きな支障を来している。
またHAMは専門医が少ないうえ、近年ではHTLV-1陽性の免疫性難病患者に対する免疫抑制療法が実施や、生体腎移植でのHTLV-1新規感染など、新たに留意しなければならない問題も生じているため、全国的な診療レベルの向上には診療ガイドラインの作成が必須である。
本研究では、これら喫緊の課題を解決するために、国内外専門医、統計や臨床疫学の専門家、関連学会専門委員、患者代表から構成される学際パネルを組織し、我々が運営するHAM患者レジストリ「HAMねっと」のデータベース等を活用した研究により、HAMの重症度・疾患活動性分類基準を策定し、国際的な総意形成を目指す。また、重要臨床課題やクリニカルクエスチョンを抽出してエビデンスの質の評価と推奨度の決定を行い、最新のガイドライン作成法であるGRADEシステムを用いて、診療ガイドラインの作成を目指す。
研究方法
本研究では、HTLV-1関連難治性疾患において臨床的に緊急性の高い以下の課題:
①HAMの重症度・疾患活動性の分類基準と診療指針の確立
②HTLV-1陽性難病患者への免疫抑制療法に関する診療指針の確立
③生体腎移植におけるHTLV-1感染のリスクに関する診療指針の確立
について、倫理面に配慮して進めた。
結果と考察
昨年度までに、候補として挙げた重要臨床課題(全40項目)のうち、信頼できるエビデンスを収集できる見込みのあるものをクリニカルクエスチョン(CQ)として4項目抽出し、ガイドラインのスコープを作成した。さらにそのスコープを踏まえて、各CQに関連する文献検索を日本医学図書館協会と連携し着手した。また、本ガイドラインは3つの章から構成し、第1章ではHAMの概論ともいえる総括的情報、第2章ではCQに対するエビデンスに基づく推奨、第3章では、エビデンスが不十分で推奨が作成できない重要臨床課題のQ&A形式での解説、を記載する方針で作成を進めている。2017年度は第1章を作成し、ここには本研究で新たに確立したHAMの疾患活動性や排尿障害重症度の分類基準、HTLV-1陽性患者診療における注意点や移植におけるHTLV-1感染リスクに関する情報も含めた。これにより、これまでHTLV-1陽性患者の診療経験に乏しい医師でも、患者を診療するために必要な知識を網羅的に得ることが可能になると期待される。
また本研究では、ガイドラインに患者の価値観や意向を反映させるために、HAM患者レジストリ登録患者を対象として、「HAM診療ガイドライン作成に向けた患者の価値観と意向に関する調査」を実施する。2017年度は、ガイドライン作成委員会のコンセンサスを得て、アンケート調査票を完成させた。これにより本調査結果をガイドラインでの推奨を決定する際の参考資料とすることが可能となる。
結論
本研究で得られるHAMの重症度分類基準の策定は、国際的に統一した基準の使用により世界のデータを比較することが可能となり、臨床研究の飛躍的な促進をもたらすであろう。また疾患活動性分類基準の策定は、疾患活動性の層別化に応じた治療アルゴリズムの確立をもたらし、より患者に適した治療の普及を実現する。またHAM患者レジストリから得られるリアルワールドデータをガイドライン作成に活用する点は画期的であり、これまで作成が困難とされてきた希少難病を対象としたガイドライン作成のモデルにもなり得るであろう。そして本疾患領域の診療ガイドラインの作成により、これまでHAMやHTLV-1陽性難治性疾患患者の診療経験の少ない医師も適切な対応が可能となり、患者の生活の質を大きく向上させ、HTLV-1総合対策を大きく前進させることが期待される。さらにHTLV-1感染症および関連疾患の問題は先進国の中では日本特有であることから、日本が主導的に研究を行わなければ解決されない問題であり、この研究成果は日本のみならず、世界の感染者や患者にも恩恵をもたらし、国際的な貢献も可能となるであろう。

公開日・更新日

公開日
2018-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201711034Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,000,000円
(2)補助金確定額
15,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,267,847円
人件費・謝金 2,268,781円
旅費 4,135,226円
その他 2,872,640円
間接経費 3,461,000円
合計 15,005,494円

備考

備考
自己資金5,494円

公開日・更新日

公開日
2019-03-25
更新日
-