文献情報
文献番号
201711022A
報告書区分
総括
研究課題名
腹腔外発生デスモイド型線維腫症患者の診断基準、重症度分類および診療ガイドライン確立に向けた研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H28-難治等(難)-一般-006
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
西田 佳弘(名古屋大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 川井 章(国立がん研究センター中央病院 希少がんセンター)
- 戸口田 淳也(京都大学 ウイルス・再生医科学研究所)
- 生越 章(新潟大学 医歯学総合病院魚沼地域医療教育センタ-)
- 國定 俊之(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
- 松本 嘉寛(九州大学 大学院医学研究科)
- 阿江 啓介(公益財団法人がん研究会がん研有明病院 整形外科学)
- 平川 晃弘(東京大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
1,384,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
デスモイド型線維腫症、特に腹腔外発生デスモイドは生命を脅かすことがほとんどない良性腫瘍である。しかし悪性腫瘍よりもきわめて高い術後再発率を示し、手術の有無にかかわらず甚大な機能障害を引き起こす。稀少疾患であり、効果的な治療法が未確立であり、かつ多科の医師によって診療されることが多いため不適切な診療が実施され、QOLの低下をきたす患者が多い。βカテニン遺伝子(CTNNB1)変異は発症原因として報告されているだけではなく、治療成績にも関連していることが示唆されている。本研究ではデスモイド型線維腫症診療におけるβカテニン免疫染色、遺伝子変異型決定の果たす意義を明らかにし、デスモイド型線維腫症に対する診断基準・重症度分類の策定、診療アルゴリズムの作成、診断・治療ガイドラインの確立を目的とする。
研究方法
(i)デスモイド型線維腫症におけるβ-カテニン免疫染色の意義解析:研究代表・分担施設より臨床病理学的にデスモイドと診断のついた検体(プレパラート)を集積し、β-カテニン免疫染色を実施し、診断に有用と言われている核内陽性染色率を明らかにする。交替の種類によって陽性率が異なることが予想されるため2種類の異なった抗体を使用して陽性率を検討する。また核内陽性率と細胞質陽性率についても調査する。(ii)非リン酸化β-カテニン免疫染色の有用性に関する解析:デスモイドにおいてはβ-カテニンのリン酸化が起きないと、APC複合体による分解ができず、β-カテニンの核内集積が起こるとされている。したがって、非リン酸化β-カテニンの染色性解析により、デスモイドの活動性を推測できると仮説をたて、(i)と同様に症例を集積し、染色性と臨床成績の関連を調査した。(iii) 診断基準と重症度分類の作成・承認:診断基準と重症度分類を作成し、外部評価委員(病理医、日本整形外科学会骨軟部腫瘍委員会)の評価後、日本整形外科学会にて承認を得る。(iv)診療アルゴリズム確立:平成28年度に作成した診療アルゴリズムの承認:デスモイドに対する診療のアルゴリズムを作成した。これを日本整形外科学会骨軟部腫瘍委員会、理事会で承認を受ける。(v)診療ガイドラインの策定:平成28年度に抽出したデスモイド診療における重要臨床課題にもとづき、クリニカルクエスチョンを決定する。また、各クリニカルクエスチョンに対してシステマティックレビュー(SR)を実施するために日本整形外科学会を通してSR委員を新規選定する。文献検索は図書館協会に依頼し、文献の評価と統合、推奨文の作成をSR委員と本班研究班員の協力によって実施する。難病情報センターホームページへの掲載、NPO法人鶴舞骨軟部腫瘍研究会-患者会SNSを通した患者への情報発信を図る。
結果と考察
(i)研究代表・分担施設よりデスモイドと診断された113症例を集積し、β-カテニン免疫染色を実施した。94例(83%)で核内陽性所見が得られ、45F遺伝子変異において強い陽性像を認めた。細胞質染色は45F、41Aにおいてwild typeより強い陽性所見を認めた。CTNNB1変異解析でhot spotに変異を認めた54例中、5例(10.2%)では核内陰性所見であった。抗体の種類を変えて実施した場合、デスモイドにおける核内陰性率はより高くなった。β-カテニン免疫染色はデスモイド診断において偽陰性である症例が少なからずあることが明らかとなった。(ii)研究代表施設で前向きにメロキシカム治療を実施したデスモイド40例を対象とした。非リン酸化βカテニン染色による核内陽性像は、CTNNB1変異解析によるhot spot陽性症例で有意に多く認められ、メロキシカム治療抵抗症例に有意に多く認められた。一方、通常のβ-カテニン染色と変異型およびメロキシカム治療成績との関連を認めなかった。非リン酸化β-カテニン免疫染色がより臨床像を反映することが示唆された。(iii)診断基準として通常の病理学的診断とCTNNB1あるいはAPC遺伝子変異特定による診断項目を設けた。重症度分類は機能障害と痛みを中心に軽症・中等症・重症に分類し、日整会骨軟部腫瘍委員会、理事会で承認された。(iv)作成した診療アルゴリズムについて、日本整形外科学会骨軟部腫瘍委員会、理事会で承認を受けた。(v)クリニカルクエスチョンを11項目作成した。本研究班員をガイドライン策定委員とし、SR委員と協力して図書館協会によって抽出された文献の1次・2次スクリーニングを実施し、最終的に絞った論文について評価と統合、推奨文の作成と推奨度の決定を全員の投票によって行った。
結論
デスモイド型線維腫症に対する診療アルゴリズム、診断基準・重症度分類作成について達成できた。診療ガイドラインについても推奨文作成、推奨の強さまで決定できた。
公開日・更新日
公開日
2018-05-31
更新日
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