国保特定健診における唾液検査システムを用いた歯科検診の有用性に関する検討(標準的な成人歯科検診プログラムとの比較および全身の健康状態との関連)

文献情報

文献番号
201709026A
報告書区分
総括
研究課題名
国保特定健診における唾液検査システムを用いた歯科検診の有用性に関する検討(標準的な成人歯科検診プログラムとの比較および全身の健康状態との関連)
課題番号
H29-循環器等-一般-013
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
栗田 浩(国立大学法人 信州大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 濃沼政美(国立大学法人 信州大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
3,328,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 より多くの者に対して充実した歯科医療管理を行うために、既存の歯科医師が口腔内の検査を行うことによる検診手法に代わる、唾液を用いた簡便なスクリーニング手法の有用性を検討する。
研究方法
1,対象
 本研究の対象(フィールド)は長野県安曇野市および塩尻市における国保特定健診・後期高齢者健診受診者(安曇野市 約4,700人、塩尻市 約2,400人)である。
2,方法
(1)データ収集:研究参加に同意がえられた受診者を対象に、特定健診に併せて歯科に関する問診、従来の歯科医師による歯科健診(以下、従来の歯科健診)、歯科保健指導、および、唾液を用いた口腔スクリーニング検査(以下、唾液検査)を併せて行い、特定健康診査結果と歯科健診結果のデータを収集した。
•歯科健診は「標準的な成人歯科健診プログラム・保健指導マニュアル」(社団法人日本歯科医師会)に沿って行った。
•唾液を用いた検査は、多項目・短時間唾液検査システム(SMT,ライオン株式会社)を用いて行った。検査項目は、う蝕との関連で、むしば菌、酸性度、緩衝能の3項目、歯周病との関連で、潜血、白血球、タンパク質の3項目、口腔内の清潔度で、アンモニアの1項目の計7項目で、それぞれの項目が100分率で数値化され、過去の研究結果から3段階(低め、平均レベル、高め)に評価される。サンプルは、うがい液3 mlで歯科健診前に採取した。
(2)アンケート調査:歯科健診受診者を対象に、唾液検査の①感想、②歯科医師が行う検診との比較、③歯科健診動機への影響に関してアンケート調査を行った。
(3)データ解析
1)唾液検査の精度
 唾液検査結果と従来の歯科健診結果とを比較検討し、唾液検査の精度を検討した。
2)唾液検査結果と全身の健康との関連
 唾液検査結果と特定健診結果とを比較検討し、唾液検査結果と全身の健康状態との関連性を検討した。
3)唾液を用いた歯科スクリーニング検査に関する健診者の受け入れ
 唾液検査を行った健診者のアンケート調査結果を分析し、唾液を用いた歯科スクリーニング方法が受診者から受け入れられるか否かを検討した。

結果と考察
結果
1)未処置う蝕のスクリーニングとしては、特異度は低い(17.8%)ものの、感度が最も高かった(感度84.5%)ことから、アンモニアが最も有用と考えられた。歯周炎のスクリーニングに関しては、潜血が最も精度が高い(感度63.8%、特異度58.9%、精度61.2%)と考えられた。しかしながら、潜血とアンモニアを併せて行うことにより、特異度は低いものの、高い感度(94.5%)が得られた。
2)特定健診結果と唾液検査項目との関連では、唾液中のアンモニアは、血圧、血糖、腎機能と関連が見られた。
3)唾液検査に関する健診者の受け入れも良好(唾液検査を受けないと回答した者は1.2%)であった。



結論
 以上の結果から、特定健診における唾液検査は、歯科疾患および全身疾患のスクリーニングに有用である可能性が示され、項目としてはアンモニアおよび潜血が有用であると考えられた。今後、当該年度の医療機関受診状況および医療費データ(KDBデータ)を入手し、医療機関への受診状況の変化、医療費への影響を検討する予定である。また、研究期間の2年目には、ほとんどの受診者に唾液検査を受けてもらい、特定健診全受診者を対象とした検討を行う予定である。

公開日・更新日

公開日
2018-07-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201709026Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,326,000円
(2)補助金確定額
3,918,000円
差引額 [(1)-(2)]
408,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,728,979円
人件費・謝金 546,000円
旅費 346,900円
その他 298,688円
間接経費 998,000円
合計 3,918,567円

備考

備考
人件費(歯科健診時)が予算より少なくすんだため(塩尻市、安曇野市の職員の協力、当科の医員の協力)。※567円は自己資金

公開日・更新日

公開日
2018-10-26
更新日
-