検診効果の最大化に資する、職域を加えた新たながん検診精度管理手法に関する研究

文献情報

文献番号
201708033A
報告書区分
総括
研究課題名
検診効果の最大化に資する、職域を加えた新たながん検診精度管理手法に関する研究
課題番号
H27-がん政策-指定-006
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
斎藤 博(国立研究開発法人国立がん研究センター 社会と健康研究センター検診研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐川元保(東北医科薬科大学・医学部)
  • 青木大輔(慶應義塾大学・医学部産婦人科)
  • 渋谷大助(公益財団法人宮城県対がん協会・がん検診センター)
  • 松田一夫(公益財団法人福井県健康管理協会)
  • 中山富雄(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター・がん予防情報センター疫学予防課)
  • 笠原善郎(恩賜財団福井県済生会病院・乳腺外科)
  • 濱島ちさと(国立研究開発法人国立がん研究センター・社会と健康研究研究センター検診研究部)
  • 高橋宏和(国立研究開発法人国立がん研究センター・社会と健康研究研究センター検診研究部)
  • 雑賀公美子(国立研究開発法人国立がん研究センター・社会と健康研究研究センター検診研究部)
  • 町井涼子(国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター・がん医療支援部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
7,614,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国でがん検診によるがん死亡率低減を達成するためには、欧米の組織型検診に倣い、品質保証の手法による精度管理体制を確立する必要がある。今年度は、全国の精度管理体制の実態把握、および、更なる精度管理改善に必要な方策の検討を行った。後者は、現状で特に改善が必要な「精検受診率向上対策」「検診機関の質担保」「個別検診でのモニタリング」について、優良自治体の事例をもとに解決策を検討した。以上の研究は国のがん対策に直結するテーマであり、今後研究成果を全国の精度管理に活用することにより、がん検診の質向上と標準化に寄与し、最終目的であるがん死亡率減少に資することが期待できる。
研究方法
①全国の精度管理体制の実態把握
全自治体を対象に、健康増進法にもとづく住民検診(健康増進事業)の精度管理体制を把握、分析した。具体的には、平成29年における「事業評価のためのチェックリスト(以下、CL)」の実施状況、及び平成28年における生活習慣病検診等管理指導協議会(以下、協議会)の活動状況を調査した。
②精度管理をさらに向上させるための方策の検討
現在体制整備が現在特に不十分な「精検受診率向上対策」および「検診機関の質担保」について、約20の優良自治体から事例を収集した。また、個別検診受託医療機関のモニタリング体制構築を目的とし、4県3市と連携して、体制整備上の課題と解決策を検討した。
結果と考察
①全国の精度管理体制の実態把握
市区町村CLの回収率は96.3%(1673/1737市区町村)だった。集団検診のCL全項目実施率は5がんで概ね共通で約76%、実施率が特に低かった項目は、受診者への説明実施(51~56%)、個別受診勧奨の実施(約51~53%)、精検機関に対する精検結果報告書の返却依頼(約46~49%)、適切な仕様書による検診機関の委託(約51~56%)、検診機関への精度管理評価のフィードバック(約28%)だった。一方、個別検診のCL全項目実施率は約61~64%で、全体的に集団検診の実施率を下回っていた。特に、検診機関に適切な仕様書により委託すること、仕様書が遵守されたかを確認すること、要精検者に受診可能な精検機関名を提示すること、精検結果を検診機関にも共有すること(検診機関の精度向上の為)、については大幅に実施率が下回っていた。都道府県については45県から回答を得た。45県中、がん部会を開催したのは38~40県、がん部会の検討結果を公表した県は34~35県だった。がん部会の検討結果を公表した県は平成23年の第1回調査時(45%)より大幅に改善した。これは、H23年に本研究班が開発・更新してきた協議会の活動を支援するツールや、全国研修会での啓発の効果と考えられる。 ②精度管理をさらに向上させるための方策の検討
精検結果回収率向上が期待できる事例として、「県による要精検者の登録・追跡の一元化」、「県による精密検査機関の登録制度の整備」、「県外精検施設との契約」、精検受診率向上が期待できる事例として「精検受診日の指定」、「医師による紹介状の作成」などを把握した。検診機関の質担保が期待できる事例として、「県によるフィードバックの実施」、「検診機関チェックリスト遵守状況を満たす検診機関との契約」などを把握した。これらの事例は、他自治体がすぐに導入可能なものもあれば、導入までに時間をかけた検討が必要なものもある。今後各地域の実情に合わせて取り入れてもらうことで、精度管理の向上が期待できる。今回収集した事例は国立がん研究センターが事例集としてまとめ、全都道府県、全市区町村に配布した。個別検診のモニタリングについては、いずれの地域のおいても、地域医師会等への丁寧な説明と、回答経路の調整が必須であった。また、地域医師会の協力の有無により、モニタリングの実行性が大きく変わることも分った。どの地域でも医師会や医療機関への説明(精度管理やチェックリストの意義など)に多大な労力を要しており、今後は自治体の説明を支援するツールの開発が必要であろう。
結論
がん死亡率減少の実現にむけた検診精度管理体制の構築のため、精度管理の現状把握、および更なる精度管理向上のための方策を検討した。これらの研究成果を今後政策に反映させることにより、精度管理水準の均てん化に繋がり、ひいてはがん死亡率減少に寄与することが期待できる。

公開日・更新日

公開日
2018-08-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-08-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201708033B
報告書区分
総合
研究課題名
検診効果の最大化に資する、職域を加えた新たながん検診精度管理手法に関する研究
課題番号
H27-がん政策-指定-006
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
斎藤 博(国立研究開発法人国立がん研究センター 社会と健康研究センター検診研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐川元保(東北医科薬科大学 医学部)
  • 青木大輔(慶應義塾大学 医学部産婦人科)
  • 渋谷大助(公益財団法人宮城県対がん協会 がん検診センター)
  • 西田 博(パナソニック健康保険組合健康管理センター)
  • 松田一夫(公益財団法人福井県健康管理協会)
  • 中山富雄(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター がん予防情報センター疫学予防課)
  • 笠原善郎(恩賜財団福井県済生会病院 乳腺外科)
  • 濱島ちさと(国立研究開発法人国立がん研究センター・社会と健康研究研究センター検診研究部)
  • 高橋宏和(国立研究開発法人国立がん研究センター・社会と健康研究研究センター検診研究部)
  • 雑賀公美子(国立研究開発法人国立がん研究センター・社会と健康研究研究センター検診研究部)
  • 町井涼子(国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター・がん医療支援部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国でがん検診によるがん死亡率低減を達成するためには、欧米の組織型検診に倣い、品質保証の手法による精度管理体制を確立する必要がある。本研究は対策型検診の精度管理体制構築を目的として、1)精度管理指標の設定、2)指標によるモニタリング、3)フィードバックについて各々課題を設定し検討した。その他、第2期基本計画の推進に必要な手法として、住民に対する情報提供のあり方について検討を開始した。
研究方法
住民検診のデータベースの元となる地域保健・健康増進事業報告(以下、事業報告)について、精度向上のための検討を行った。また、現行のプロセス指標基準値(H20年、厚労省公表)の修正を検討した。
2)指標によるモニタリング(全自治体のモニタリング)
全自治体を対象に、健康増進法にもとづく住民検診(健康増進事業)の精度管理体制を把握、分析した。具体的には、平成27-29年における「事業評価のためのチェックリスト(以下、CL)」の実施状況、及び平成26-28年における生活習慣病検診等管理指導協議会(以下、協議会)の活動状況を調査した。
3)フィードバック
前身研究班が開発した、都道府県主導による精度管理を支援するためのツールを更新した。
4)精度管理をさらに向上させるための方策の検討
現在体制整備が現在特に不十分な「精検受診率向上対策」および「検診機関の質担保」について、優良事例を収集した。また、個別検診受託医療機関のモニタリング体制構築を目的とし、4県3市と連携して、体制整備上の課題と解決策を検討した。
結果と考察
1)精度管理指標の設定
現行の事業報告では発見がんに大幅な計上漏れがあり、その主な原因が自治体担当者が医療機関からの報告を正確に判断できないことにあると分かった。そこで計上漏れが無くかつ妥当な集計のための要件を5がんについて検討し、新たな事業報告の様式を開発した。これらの様式はH29年度事業報告から反映される。今後新しい様式の運用によりがん検診本来のターゲットである原発性がんが正確に計上され、正確なプロセス指標値の分析に繋がることが期待される。また、現行のプロセス指標基準値を引き上げる改訂案を作成した。この改訂により今後精度管理水準の更なる向上が期待される。
2)指標によるモニタリング(例としてH28年度の結果を示す)
市区町村CLの回収率は95.8%(1664/1737市区町村)だった。集団検診のCL全項目実施率は約72%で、実施率が特に低かった項目は、受診者への説明実施(約25%)、call-recallの実施(約7%)、精検機関に対する精検結果報告書の返却依頼(約45%)、適切な仕様書による検診機関の委託(約45%)、検診機関への精度管理評価のフィードバック(約19%)だった。一方、個別検診のCL全項目実施率は約59~64%で、全体的に集団検診の実施率を下回っていた。特に検診機関に適切な仕様書により委託すること、仕様書が遵守されたかを確認すること、要精検者に受診可能な精検機関名を提示すること、精検結果を検診機関にも共有すること(検診機関の精度向上の為)、については大幅に実施率が下回っていた。これらの実施率が特に低かった項目については、今後自治体にヒアリングを行い体制改善のバリアや解決策を収集する。
都道府県については46県から回答を得た。協議会の活動は改善傾向にあり、特に住民にがん部会の検討結果を公表した県は約70%(32~34県)で、平成23年の第1回調査時(45%)より大幅に改善した。これはH23年に本研究班が開発・更新してきた協議会の活動を支援するツールや、全国研修会での啓発の効果と考えられる。今後はこれら協議会の活動と、県内の精度管理水準向上の関連について分析を進める。
3)フィードバック
都道府県部会が市町村や検診機関に事業評価をフィードバックする際の文書雛型(約20種)を作成した。
4)精度管理をさらに向上させるための方策の検討
約20自治体にヒアリングを実施し、県による精検結果把握の一元化や精検機関の登録制など、約10種類の優良事例を収集した。個別検診のモニタリングについては、いずれの地域のおいても、地域医師会等への丁寧な説明と、回答経路の調整が必須であった。また、地域医師会の協力の有無により、モニタリングの実行性が大きく変わることも分った。どの地域でも医師会や医療機関への説明(精度管理やチェックリストの意義など)に多大な労力を要しており、今後は自治体の説明を支援するツールの開発が必要であろう。
結論
がん死亡率減少の実現にむけた検診精度管理体制の構築のため、精度管理の各段階について課題を設定し検討を進めた。これらの研究成果を今後政策に反映させることにより、精度管理水準の均てん化に繋がり、ひいてはがん死亡率減少に寄与することが期待できる。

公開日・更新日

公開日
2018-08-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-08-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201708033C

収支報告書

文献番号
201708033Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,898,000円
(2)補助金確定額
9,898,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 642,022円
人件費・謝金 206,334円
旅費 2,856,571円
その他 3,909,076円
間接経費 2,284,000円
合計 9,898,003円

備考

備考
物品購入が入札のため差額がでた。(自己資金:3円)

公開日・更新日

公開日
2018-11-01
更新日
-