文献情報
文献番号
201707014A
報告書区分
総括
研究課題名
乳幼児健康診査に関する疫学的・医療経済学的検討に関する研究
課題番号
H29-健やか-指定-002
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
山崎 嘉久(あいち小児保健医療総合センター 保健センター)
研究分担者(所属機関)
- 山縣 然太朗(山梨大学大学院総合研究部 医学域社会医学講座公衆衛生学)
- 弓倉 整(弓倉医院)
- 秋山 千枝子(西山 千枝子)(医療法人社団千実会)
- 小倉 加恵子(大道会森之宮病院 神経リハビリテーション研究部)
- 野口 晴子(早稲田大学政治経済学術院 公共経営研究科医療経済学)
- 田中 太一郎(東邦大学医学部 公衆衛生学)
- 鈴木 孝太(愛知医科大学医学部 衛生学講座)
- 佐々木 渓円(横浜創英大学 こども教育学部幼児教育学科)
- 朝田 芳信(鶴見大学歯学部 小児歯科学)
- 船山 ひろみ(鶴見大学歯学部 小児歯科学)
- 石川 みどり(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
- 黒田 美保(広島修道大学 健康科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
7,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
乳幼児健康診査(以下、「乳幼児健診」とする。)は、乳幼児の健康状況を把握することによる健康の保持増進を主たる目的としているが、疾病をスクリーニングする役割も重要である。乳幼児健診で対処すべき疾病や健康課題に対して、疫学的、医療経済学的な視点も加味して標準的な健診項目を提示すること、及び、乳幼児健診事業と他の健診事業との連携を視野に入れた政策提言を行うことが本研究の目的である。
研究方法
疫学的、医療経済学的な視点に基づいた乳幼児健診の標準的な健診項目提示(研究目標1)では、乳幼児期までに発症する疾病を、成書や小児慢性特定疾患等のリストから抽出し、スクリーニング対象疾患と判断する基準として1)乳幼児健診で発見できる手段がある、2)疾患に臨界期がある、あるいは乳幼児健診で発見することで治療や介入効果が得られる、3)発症頻度が出生10万人に1人以上、に該当する疾患を、疫学データや文献データを用いて抽出した。また、乳幼児健診で見逃された疾病に関する文献について、対象領域や施策等との関連性について、医学中央雑誌を用いた文献検索により検討した。
全国都道府県の母子保健担当部局に対して、2017年12月に調査票を用いた調査により医師の診察項目に関する都道府県の集計状況を把握した。乳幼児健診事業に対する費用対効果等の医療経済学的検討のため、乳幼児健診に対する医療経済学的な解析手法について検討した。
他の健康診査等との連携を視野に入れた乳幼児健診事業のあり方の検討(研究目標2)では、各分担研究者において、乳幼児健診と学校健診の比較(目的、実施者、実施時期、検査項目、事後措置等)、妊娠期から乳幼児期の縦断的な母子保健情報のデータベース構築などを始め、地域保健分野、歯科保健分野、栄養分野、発達臨床心理分野のそれぞれで調査・分析を行った。
先行研究で開発した乳幼児健診の事業評価モデルの全国展開(研究目標3)では、モデル地域における股関節開排制限、視覚検査、聴覚検査や検尿(蛋白尿)に対する精度管理の状況を把握し、愛知県および沖縄県が収集している乳幼児健診のデータを用いて、モデル地域における医師判定頻度を比較した。
全国都道府県の母子保健担当部局に対して、2017年12月に調査票を用いた調査により医師の診察項目に関する都道府県の集計状況を把握した。乳幼児健診事業に対する費用対効果等の医療経済学的検討のため、乳幼児健診に対する医療経済学的な解析手法について検討した。
他の健康診査等との連携を視野に入れた乳幼児健診事業のあり方の検討(研究目標2)では、各分担研究者において、乳幼児健診と学校健診の比較(目的、実施者、実施時期、検査項目、事後措置等)、妊娠期から乳幼児期の縦断的な母子保健情報のデータベース構築などを始め、地域保健分野、歯科保健分野、栄養分野、発達臨床心理分野のそれぞれで調査・分析を行った。
先行研究で開発した乳幼児健診の事業評価モデルの全国展開(研究目標3)では、モデル地域における股関節開排制限、視覚検査、聴覚検査や検尿(蛋白尿)に対する精度管理の状況を把握し、愛知県および沖縄県が収集している乳幼児健診のデータを用いて、モデル地域における医師判定頻度を比較した。
結果と考察
本年度の研究では、小児期に発症する疾病を網羅的に捉え、有病率とスクリーニング手法や発見後の治療や介入の有無、乳幼児期に発見する必然性などの点から、文献情報に基づいた検討を行った。その結果、疾病スクリーニングの対象疾患の候補を提示することができた。今後は、これらの疾患の妥当性やスクリーニングの有効性等について検討する予定である。
乳幼児健診を医療経済学的に検討するには、数多くの課題があった。特にアウトプット指標としての有所見率、陽性尤度比のデータが不十分であること、健康の保持増進への寄与度を測る指標が未確立であることや、常勤職員の経費推計(案分比率)については基礎調査が必要など基礎データの集約が必要である。
他の健康診査等との連携を視野に入れた乳幼児健診事業のあり方については、その方向性について検討した。乳幼児健診は、妊婦健診や学校健診とともに、すべて長い歴史と高い受診率が得られ、住民にしっかりと根付いた制度である。一貫して健康の保障(健康の保持・増進)を目的としている。妊婦健診、乳幼児健診と学校健診は、住民のライフサイクルの中で、健やかな次世代を継承することを目指す、いわば「基本領域」と考えることができる。
一方、妊婦健診の妊娠高血圧症、感染症スクリーニング、新生児期の先天代謝異常スクリーニングや聴覚スクリーニング、乳幼児健診の乳児股関節検診、視覚検査、聴覚検査、及び学校健診の心電図検診、学校検尿など、健診ごとに特有な検査項目がある。これらは特定健診・特定保健指導、各種のがん検診などとともに、いわば「個別疾患領域」の健診事業と整理することができる。これら早期の発見による医療費削減効果が見込めるものである。
乳幼児健診を医療経済学的に検討するには、数多くの課題があった。特にアウトプット指標としての有所見率、陽性尤度比のデータが不十分であること、健康の保持増進への寄与度を測る指標が未確立であることや、常勤職員の経費推計(案分比率)については基礎調査が必要など基礎データの集約が必要である。
他の健康診査等との連携を視野に入れた乳幼児健診事業のあり方については、その方向性について検討した。乳幼児健診は、妊婦健診や学校健診とともに、すべて長い歴史と高い受診率が得られ、住民にしっかりと根付いた制度である。一貫して健康の保障(健康の保持・増進)を目的としている。妊婦健診、乳幼児健診と学校健診は、住民のライフサイクルの中で、健やかな次世代を継承することを目指す、いわば「基本領域」と考えることができる。
一方、妊婦健診の妊娠高血圧症、感染症スクリーニング、新生児期の先天代謝異常スクリーニングや聴覚スクリーニング、乳幼児健診の乳児股関節検診、視覚検査、聴覚検査、及び学校健診の心電図検診、学校検尿など、健診ごとに特有な検査項目がある。これらは特定健診・特定保健指導、各種のがん検診などとともに、いわば「個別疾患領域」の健診事業と整理することができる。これら早期の発見による医療費削減効果が見込めるものである。
結論
小児期に発症する疾病を網羅的に捉え、1)乳幼児健診で発見できる手段がある、2)疾患に臨界期があること、あるいは乳幼児健診で発見することで治療や介入効果が得られる、3)発症頻度が出生10万人に1人以上の条件を定め、文献情報に基づいた検討を行った。その結果、疾病スクリーニングの対象疾患の候補を提示することができた。今後、これらの疾患の妥当性やスクリーニングの有効性等について検討する予定である。
また、乳幼児健診と他の健診事業との連携については、生涯を通じた健康の保持を目的とする基本領域と、妊娠期・乳幼児期・学童期及び成人期それぞれのライフステージに特有の個別疾病領域に整理する基本的な考え方を提示することができた。今後、医療経済学的な視点から乳幼児健診事業を評価する視点も交え、連携のあり方を検討する必要がある。
また、乳幼児健診と他の健診事業との連携については、生涯を通じた健康の保持を目的とする基本領域と、妊娠期・乳幼児期・学童期及び成人期それぞれのライフステージに特有の個別疾病領域に整理する基本的な考え方を提示することができた。今後、医療経済学的な視点から乳幼児健診事業を評価する視点も交え、連携のあり方を検討する必要がある。
公開日・更新日
公開日
2018-11-01
更新日
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