東日本大震災後に発生した小児への健康被害への対応に関する研究

文献情報

文献番号
201707012A
報告書区分
総括
研究課題名
東日本大震災後に発生した小児への健康被害への対応に関する研究
課題番号
H28-健やか-指定-003
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
呉 繁夫(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 栗山 進一(東北大学 災害科学国際研究所)
  • 釣木澤 尚実(山本 尚実)(独立行政法人国立病院機構埼玉病院 呼吸器内科)
  • 渡辺 麻衣子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
  • 奥山 眞紀子(国立研究開発法人国立成育医療研究センター病院 こころの診療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
20,645,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成24~26年度「東日本大震災被災地の小児保健に関する調査研究」において、東日本大震災と被災地の小児の肥満・過体重、アレルギー疾患、こころの問題との関連を明らかにした。平成27に開始した本研究では、これらの震災後に発生した小児の健康被害に対する効果的な介入方法及び継続的モニタリング方法を検討し、小児保健の向上に資する対策を確立することを目的とする。この目的の達成のため、①肥満への健康教育を取り入れた効果的な介入方法の確立及び継続的な小児の発育・健康状態モニタリング方法の確立、②アレルギー疾患、特に「喘息」の寛解に対する環境整備介入方法の確立、③被災地域に確立したメンタルヘルスに関するコホートに対する5年間の調査の分析を実施する。
研究方法
本研究における新たな調査は、被災地である石巻市、岩沼市の小学生、非被災地として加美町の小学生を対象として実施した。
・小児肥満への健康教育を取り入れた効果的な介入方法の確立に関する研究では、昨年度は石巻市の小学生を対象に、肥満予防の講話や運動指導のためにイベントなどの介入を実施し、これらの効果を分析したが介入効果は乏しかった。平成29年度は、岩沼市と加美町の小学生を対象に、食事摂取頻度調査票の実施とその結果に基づく、個別栄養指導を取り入れ、その効果を検討した。(分担研究者 栗山進一)
・アレルギー疾患、特に「喘息」の寛解に対する環境整備介入では、アレルギー疾患の有症率を調査し、寝具のダニアレルゲン量(Der1量)の測定を行い、Der1量と震災の影響を調査した。保護者に環境整備指導を行い、指導後のDer1量から、この介入がアレルギー疾患の改善や発症抑制への効果について検討する。H29年度は、保護者への環境整備指導を実施し、寝具のDer1量および真菌数の継時的変化を調査し、小児アレルギー疾患の調査票による調査する。また、Der1量と真菌量の関連性、および被災状況とアレルゲン量の関連性を明らかにする。(分担研究者 釣木澤尚美、渡辺麻衣子)
・震災後に認められたメンタルヘルス問題の発生要因を検討するため、平成24~28年度の震災後5年間に実施した質問紙による調査結果や対面調査結果を詳細に検討した。発生要因として、親の養育態度、親のメンタルヘルス、ソーシャルキャピタル、などに特に注目して分析を行った。(分担研究者 奥山眞紀子)
平成29年度は、以上3つの調査研究により震災後に発生した小児の健康被害に対応する方法を検討した。
結果と考察
1)肥満
食事摂取頻度調査に個別の栄養指導による介入を実施した場合、介入前後で体重の有意差はなかった。なかしながら、食事記録と体重測定をすべて実施した完遂群の体重は低下したが、非完遂群の体重は減少していなかったことから、日々の食事・運動の記録を継続して行うこのとの重要性が示唆された。食事摂取頻度調査の結果を用いた栄養指導は肥満の介入方法として、その指導方法を含め更に検討していく必要がある。
2)アレルギー性疾患
石巻市小学校2(現3)年生の児童(保護者)を対象とした環境整備指導介入では児童の寝具Der 1量が減少し、アレルギー疾患の臨床症状が有意に改善することを検証した。その結果、真菌数においても、寝室および寝具のメンテナンスを中心とした介入方法によって、アレルゲン物質の軽減効果が得られたことが確認できた。さらに、一度環境整備介入を行えば、この軽減効果は持続的に得られる可能性が高いことが示された。
3)メンタルヘルス問題
問題行動の発症により通年非臨床群、遅発群、持続群に分類した。その3群になる発生要因の分析を検討した。その結果、親の養育態度、親のメンタルヘルス、ソーシャルキャピタルといった養育環境要因が問題行動の遅発や持続で関連していた。
結論
東日本大震災後増加した小児のアレルギー性疾患に対する対応として、寝具のアレルゲン定量と環境整備指導による介入が有効であることが、被災地のコホート研究で明らかになった。肥満に対する対応は、食事摂取頻度調査と個別栄養指導を行い、日々の体重・食事の記録を徹底させることの重要性が示唆された。震災後のメンタルヘルス問題の発症要因としては、親の養育態度、親のメンタルヘルス、ソーシャルキャピタルといった養育環境要因が重要であることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2018-11-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-11-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201707012Z