文献情報
文献番号
201707007A
報告書区分
総括
研究課題名
出生前診断実施時の遺伝カウンセリング体制の構築に関する研究
課題番号
H29-健やか-一般-002
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
小西 郁生(京都大学 大学院医学研究科器官外科学婦人科学産科学講座)
研究分担者(所属機関)
- 三宅 秀彦(お茶の水女子大学 大学院人間文化創成科学研究科ライフサイエンス専攻遺伝カウンセリングコース)
- 山田 重人(京都大学 大学院医学研究科人間健康科学系専攻)
- 山田 崇弘(京都大学 医学部附属病院遺伝子診療部)
- 関沢 明彦(昭和大学 医学部)
- 浦野 真理(東京女子医科大学 附属遺伝子医療センター)
- 金井 誠(信州大学 大学院医学系研究科保健学専攻)
- 斎藤 加代子(東京女子医科大学 附属遺伝子医療センター)
- 佐村 修(東京慈恵会医科大学 産婦人科教室)
- 澤井 英明(兵庫医科大学 医学部)
- 高田 史男(北里大学 大学院医療系研究科臨床遺伝医学講座)
- 中込 さと子(山梨大学 大学院総合研究部医学域看護学系成育看護学講座)
- 吉橋 博史(東京都立小児総合医療センター 臨床遺伝科)
- 久具 宏司(東京都立墨東病院 産婦人科)
- 池田 真理子(谷口 真理子)(藤田衛生大学病院 遺伝カウンセリング室)
- 左合 治彦(国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター)
- 佐々木 愛子(国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター)
- 佐々木 規子(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科保健学専攻)
- 鈴森 伸宏(名古屋市立大学 大学院医学研究科産科婦人科)
- 福島 明宗(岩手医科大学 医学部臨床遺伝学科)
- 福嶋 義光(信州大学 医学部)
- 蒔田 芳男(旭川医科大学 医学部教育センター)
- 松原 洋一(国立成育医療研究センター 研究所)
- 江川 真希子(東京医科歯科大学 茨城県小児・周産期地域医療学講座)
- 小林 朋子(東北大学 東北メディカル・メガバンク機構ゲノム医学普及啓発寄附研究部門)
- 西垣 昌和(京都大学 大学院医学研究科人間健康科学系専攻)
- 浜之上 はるか(横浜市立大学 附属病院遺伝子診療部)
- 増崎 英明(長崎大学)
- 三浦 清徳(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
- 吉田 雅幸(東京医科歯科大学 生命倫理研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
6,150,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動
研究分担者 山田崇弘
所属機関名 北海道大学大学院医学研究院・総合女性医療システム学分野
(平成29年4月1日~5月31日)
京都大学医学部附属病院・遺伝子診療部
(平成29年6月1日以降)
研究報告書(概要版)
研究目的
母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査(Non-Invasive Prenatal Testing: NIPT)が平成25年度より臨床研究として開始されたことにより、出生前診断に関する遺伝カウンセリングの重要性に焦点が当たっている。しかし、臨床遺伝の専門家の全てが出生前診断に対応するには限界があり、さらに本邦の産婦人科医は減少傾向にあるため、有効な人材活用に向けた教育体制の構築が必要である。一方で、出生前診断の受け手側である妊婦自身が、自律的な判断が出来るようなリテラシーの醸成を含めて、社会体制を整備することも、効率のよい出生前診断のシステム構築を行う上で極めて重要な課題である。そこで、本研究班では、妊婦への出生前診断体制を構築するための教育体制、一般に向けた出生前診断に関する啓発方法を検討することを目的とした。
研究方法
主任研究者が以下の研究課題の成果を総括する。(小西)
本研究班では、分科会により研究を行い、各班の研究成果を相互に利用し、統合的な研究を行うため、3名の研究統括補佐をおき、各分科会の調整、統合を行う。(三宅、山田重人、山田崇弘)
分科会は、以下の3つの分科会を設定する。
第1分科会:出生前診断の前後において、妊婦に提供すべき情報やその伝え方等に関するマニュアルの作成(関沢、浦野、金井、斎藤、佐村、澤井、高田、中込、吉橋)
第2分科会:遺伝カウンセリングに関する知識及び技術向上に関する医療従事者向けの研修プログラムの開発(久具、池田、左合、佐々木愛子、佐々木規子、鈴森、福島、福嶋、蒔田)
第3分科会:一般の妊婦及びその家族に対する出生前診断に関する適切な普及および啓発方法の検討(松原、江川、小林、西垣、浜之上、平原、増崎、三浦、吉田)
本研究班では、分科会により研究を行い、各班の研究成果を相互に利用し、統合的な研究を行うため、3名の研究統括補佐をおき、各分科会の調整、統合を行う。(三宅、山田重人、山田崇弘)
分科会は、以下の3つの分科会を設定する。
第1分科会:出生前診断の前後において、妊婦に提供すべき情報やその伝え方等に関するマニュアルの作成(関沢、浦野、金井、斎藤、佐村、澤井、高田、中込、吉橋)
第2分科会:遺伝カウンセリングに関する知識及び技術向上に関する医療従事者向けの研修プログラムの開発(久具、池田、左合、佐々木愛子、佐々木規子、鈴森、福島、福嶋、蒔田)
第3分科会:一般の妊婦及びその家族に対する出生前診断に関する適切な普及および啓発方法の検討(松原、江川、小林、西垣、浜之上、平原、増崎、三浦、吉田)
結果と考察
第1分科会では、 1次医療機関に対する出生前検査に関するアンケート調査を行い、1次施設における遺伝カウンセリングの実施における問題点が抽出された。その結果に基づき、臨床遺伝の専門家でない産科医療従事者が出生前遺伝学的検査に関して妊婦に提供すべき情報やその伝え方等に関するマニュアル案を作成した。これを使用することで、実際に妊婦健診を担う産科1次施設において産婦人科医およびコメディカルスタッフ等の医療従事者が1次、2次対応を適切に行うための知識とカウンセリングスキルの習得が可能かについて評価が必要である。
第2分科会では、出生前検査に対応するための医療者研修における、学修目標および教材の第1版を作成することができた。これをカリキュラムにするためには、評価方法の確定が必要であり、適切な運用のための指導者の研修システムの構築が必要である。評価法の策定の後には、研修会での試験利用を行い、カリキュラムを通した評価、改善を行う事が必要である。
第3分科会では、出生前診断に関する認識とリテラシー構成要素について、インタビュー調査およびWeb調査による横断研究によりその実態を調査した。Web調査では、妊娠経験のない20〜30代の一般集団においてはおよそ4人に1人が、妊娠経験がある同年代の集団においてもおよそ6人に1人が「出生前診断」という言葉を聞いたことがないと回答した。これは言葉そのものの認知を示したものであり、実際の出生前診断の内容についての認知はさらに低いことが推察される。特に、男性、若年、低所得が出生前診断の低い認知と関連していた。これらの層を、今後の啓発対象として強化する必要がある。その際には、地域差も考慮する必要がある。
第2分科会では、出生前検査に対応するための医療者研修における、学修目標および教材の第1版を作成することができた。これをカリキュラムにするためには、評価方法の確定が必要であり、適切な運用のための指導者の研修システムの構築が必要である。評価法の策定の後には、研修会での試験利用を行い、カリキュラムを通した評価、改善を行う事が必要である。
第3分科会では、出生前診断に関する認識とリテラシー構成要素について、インタビュー調査およびWeb調査による横断研究によりその実態を調査した。Web調査では、妊娠経験のない20〜30代の一般集団においてはおよそ4人に1人が、妊娠経験がある同年代の集団においてもおよそ6人に1人が「出生前診断」という言葉を聞いたことがないと回答した。これは言葉そのものの認知を示したものであり、実際の出生前診断の内容についての認知はさらに低いことが推察される。特に、男性、若年、低所得が出生前診断の低い認知と関連していた。これらの層を、今後の啓発対象として強化する必要がある。その際には、地域差も考慮する必要がある。
結論
本研究では3つの分科会に分けて研究を行った。第1分科会では1次施設における遺伝カウンセリングの実施における問題点が抽出された。この課題を解決するために臨床遺伝の専門家でない産科医療従事者が出生前遺伝学的検査に関して妊婦に提供すべき情報やその伝え方等に関するマニュアル案が作成された。第2分科会では産婦人科の一般診療における出生前検査に対応するためのコンピテンシーを策定し、その研修のための事例集を策定した。第3分科会ではアンケート調査や面接調査の結果、妊娠・出産に関する様々なリスクに関する知識や出生前診断に関する具体的知識を、当事者になる以前から身につけておくことが、出生前診断のプロセスにおける当事者の負担を軽減することが示唆された。以上の成果から、遺伝カウンセリング体制の構築に必要となるマニュアルや教材の作成の目処がつき、実際に講習会を行える体制作りに進むことが可能となった。また、一般市民や出生前診断を受けた経験のある人への調査から、出生前診断の適切な普及および啓蒙へのヒントを得ることができた。
公開日・更新日
公開日
2019-01-29
更新日
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