小児死亡事例に関する登録・検証システムの確立に向けた実現可能性の検証に関する研究

文献情報

文献番号
201707005A
報告書区分
総括
研究課題名
小児死亡事例に関する登録・検証システムの確立に向けた実現可能性の検証に関する研究
課題番号
H28-健やか-一般-007
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
溝口 史剛(前橋赤十字病院 小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 神薗淳司(北九州市立八幡病院小児科)
  • 岩瀬博太郎(千葉大学法医学教育研究センター、東京大学大学院法医学)
  • 小林博(日本医師会、岐阜県医師会)
  • 森臨太郎(国立成育医療研究センター研究所政策科学研究部)
  • 藤原武男(東京医科歯科大学国際健康推進医学分野)
  • 山中龍宏(産業技術総合研究所人工知能研究センター)
  • 小熊栄二(埼玉県立小児医療センター放射線科)
  • 沼口敦(名古屋大学救急科)
  • 柳川敏彦(和歌山県立医科大学保健看護学部保健看護学科)
  • 菊地祐子(東京都立小児総合医療センター心理福祉科)
  • 小保内俊雅(多摩北部医療センター小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
3,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
昨年度、CDRを社会実装段階に移行するために本研究班が立ち上がり、そのための諸問題を整理し、施策反映の基礎資料とするための研究と、フィールドを使った実践的研究である「医療機関を主体とした全国版後方視的小児死亡登録検証」の登録準備作業を行った。
本年度は、CDR社会実装の実現性をさらに高めることを目的とし、引き続き上記の対応を進めた。
研究方法
研究代表者である溝口は、各分担研究者の研究のサポートを行うとともに、CDRの論点整理を進めた。分担研究者の柳川は、諸外国のCDR立ち上げ段階を学ぶため、各国の関係者へのインタビューを行った。沼口は愛知県における後方視的研究から得た方法論をパッケージング化し、全国を飛び回りその普及に努めた。小林は、日本医師会との協力関係の下、いわゆる警察協力医師の検案実務に関する調査を行った。藤原は、CDRの社会実装において重要な役割を発揮しうる保健所を対象とした調査を行った。神薗は、成人救急分野における小児死亡と、小児科医との連携体制についての調査を行った。山中はCDRの周知のための医療機関向けコンテンツ作成にかかわるとともに、幅広く国民の関心を集めやすい事故死事例を通じ、CDRの啓発方法につき考察を行った。その他に各地の実践例として、森は、新生児の新たな死亡登録検証の取り組みを紹介した。岩瀬は、千葉県の研究会の場を活用した、法医-臨床医連携の取り組みの報告を行った。小熊は、CDRにおける重要な側面である「死因究明」における、小児を対象とした死後画像の現状の問題点につき調査した。
小保内は、現状の都道府県別のSIDS事例の解剖率の差異を調査し、医療現場における剖検の現状と認識についてのアンケート結果報告を行った。また社会実装研究を進めるうえで、我々の進むべき羅針盤を確認し修正するため、子どもを亡くした遺族の方との座談会を企画した。菊地は医療機関におけるグリーフサポートの在り方について自身の勤務する東京都立小児総合医療センターの実践のまとめを行い、全国の病院小児科を対象としたグリーフケアの提供状況についての調査を行った。

結果と考察
研究班班会議の場や日本小児科学会子どもの死亡登録検証委員会(以下、委員会)の場で、班員や委員の意見を吸収し、CDR社会実装の研究班案をまとめた。研究を通じ、英国のCDR実践と本邦との親和性を確認し、英国のCDR法定ガイドラインや、遺族へ提供するための各種コンテンツの翻訳を行い、英国の制度設計を行っている立場の人物へのヒアリングを行った。委員会との合同研究に関し、多くの都道府県での研究参加協力者との協力関係を結び、地域単位で協力する地域は増加した。さらなる参加促進のための、医療者向けの啓発ツールも各種作成し、研究班のHP(https://www.child-death-review.jp/)を充実させた。警察医の小児死体検案状況が明らかになり、地域住民の信頼の高く、かつ発言力のある医師会の、CDR社会実装における重要性が明確化した。保健所のCDRに果たす役割の可能性と限界につき明示することもできた。また乳児の10%、幼児の15%、学童の20%が、死亡の際に救急医と小児が連携しえていないことを明らかにした。事故による死亡は、すべての国民に等しく可能性のありうる事象であり、国民啓発のきっかけとして事故分析の取り組みをシンポジウムなどで報告し、マスコミに多く取り上げられた。新生児分野の死亡登録検証の新たな方法論が議論され、CDOP(専門家によるパネルレビュー)の在り方の模索に繋がった。現状でも多機関連携が連携したうえで法医情報を活用しうる実践が示され、情報共有の障壁を如何に取り払うのかを考察する上で有意義な取り組みを、全国に知ってもらうことができた。また死後画像の線量不足の問題点を明確化したうえで、適切な撮影方法についての提言を行った。また死亡事例を詳細に検討することが施策に結びついた一例として、東京都のこども救命センターの実例を挙げ、概説した。乳児不詳死事例の解剖率の地域均霑化が進んでいない現状を明らかにし、医療者の認識も明確にした。座談会で遺族の声をきき、モデル案に反映させた。医療機関のグリーフケアの現状と考え方について明確化した。本年度の研究成果の一部は、日本小児科学会と共同開催の形で行った「小児死亡時対応講習会」で示した。
結論
 CDRの社会実装を進めていくための基盤整備をさらに進めた。CDRを真に有効なものとするための課題をまとめ、提示した。最終年度に向けて、さらなる議論を進めガイドラインとしてまとめ上げるとともに、実践研究の報告を受けたエビデンスを提示するための準備は整いつつある。

公開日・更新日

公開日
2018-11-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-11-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201707005Z