妊産婦及び乳幼児の栄養管理の支援のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201707004A
報告書区分
総括
研究課題名
妊産婦及び乳幼児の栄養管理の支援のあり方に関する研究
課題番号
H28-健やか-一般-003
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
楠田 聡(東京女子医科大学 院長室)
研究分担者(所属機関)
  • 伊東宏晃(浜松医科大学 産婦人科)
  • 鈴木俊治(葛飾赤十字産院 産婦人科)
  • 野村恭子(秋田大学 公衆衛生学)
  • 清水俊明(順天堂大学 病態学・小児科学)
  • 塙 佳生(日本小児科医会)
  • 堤 ちはる(相模女子大学 栄養科学部健康栄養学科)
  • 田村文誉(日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック)
  • 米本直裕(京都大学 生物統計学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
6,480,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成18年「妊産婦のための食生活指針」および平成19年「授乳・離乳の支援ガイド」の内容を最新の科学的根拠で検証し、改定案への提言を行う。
研究方法
「妊産婦のための食生活指針」の体格別の妊娠中の推奨体重増加量の妥当性および「授乳・離乳の支援ガイド」の内容についてクリニカルクエッション(CQ)を設定し、系統的に文献検索を行った。それぞれ、3個、18個のCQを設定した。CQに基づき論文の検索をおよび吟味を行った結果、それぞれ、46編、41編の論文を検証した。なお、検索された文献の質の評価については、PRISM声明、AMSTAR法を用いた。さらに、非ランダム化試験の評価には、ROBINS-I toolの適応を検討した。また、体格別の妊娠中の推奨体重増加量については、最新の国内の4編のコホート研究のデータも用いた。
他に、授乳婦の栄養摂取状況調査、「授乳・離乳の支援ガイド」が十分に活用できるように、乳幼児の栄養状況と課題をスクリーニングできるチェックシートを試作した。
結果と考察
<結果>
今年度は、現行の指針およびガイドの変更案に対する提言を確定した。指針の推奨体重増加量については、新たに提唱できるだけの科学的根拠が揃わなかった。ただ、今後の改定のために、大規模コホート研究の必要性が明らかとなった。
 一方、ガイドについては、母乳栄養の推奨を変更する必要はないが、栄養法に関わらず育児支援が重要であること、母乳栄養の効果には限界があること、離乳開始時期は生後5~6か月で変更する必要はないが、離乳食の進め方を十分説明する必要があること、等に関して提言を行った。
授乳婦の栄養摂取量調査では、エネルギーおよび多くの栄養素で摂取不足が認められた。
 乳幼児の栄養状況と課題をスクリーニングできるチェックシートを「授乳・離乳期」と「離乳完了期」の2つに分けて作成しその有用性を評価した。
<考察>
体格別の妊娠中の推奨体重増加量については、今回新たな基準を設定できるだけの科学的根拠を得ることができなかった。その理由は、公表されている大規模コホート研究が国外で実施されていたこと、国内のコホート研究の結果に地域差が存在したことによる。したがって、新たな推奨体重増加量の設定のためには、複数の地域での大規模な国内コホート研究の実施が必須である。ただし、1997年に日本産科婦人科学会周産期委員会から報告された妊娠中毒症(妊娠高血圧症候群)予防のための体重増加制限の推奨値は今後使用しない。
「授乳・離乳の支援ガイド」については、母乳栄養推進の方針を維持しつつ、混合栄養あるいは育児用調製粉乳栄養のみの場合でも、適切な育児支援を母親に行うことが重要である。また、母乳栄養の神経発達促進あるいはアレルギー疾患予防の効果は限定的であることも明記する必要がある。一方、母乳栄養が将来の肥満発症のリスクを減らす効果は、科学的に示された。しかし、母乳栄養児と混合栄養児との間には肥満や2型糖尿病の発症の差は明確でなく、乳児用調製粉乳で肥満になるといった表現で誤解を与えない。一方、早期の離乳食開始が小児期の過体重や肥満のリスクになるので、少なくとも生後4か月以前に離乳食を開始しない。したがって、成長・発達に伴い乳汁だけでは不足してくるエネルギーや栄養素の補完のために、現行通り離乳食を生後5~6か月に開始する。また、乳幼児期は食事内容が大きく変わるため、離乳食の進め方に関しては母親に十分に説明する必要がある。
なお、提言を最終的に確定する前に、関連学会から意見を聴取し、その意見も提言に反映させた。
結論
平成28、29年度の研究班での検討の結果、現行指針およびガイドの改定案に対する提言を作成した。
1.「妊産婦のための食生活指針」については、現行の推奨体重増加量を変更すべき新たな科学的根拠は見いだせなかった。これは、わが国で大規模コホート研究が十分に実施されていないことが理由であり、今後全国規模のコホート研究を実施する必要であることを提言する。
2.「授乳・離乳の支援ガイド」については、現行の母乳栄養の推奨を変更する必要はないが、栄養法に関わらず育児支援が重要であること、母乳栄養の効果には限界があること、栄養とアレルギー疾患の関係をより科学的に説明する必要があること、離乳食の開始時期は変更する必要はないこと、離乳食の進め方に関しては十分に説明する必要があること、等を提言する。

公開日・更新日

公開日
2018-11-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-11-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201707004B
報告書区分
総合
研究課題名
妊産婦及び乳幼児の栄養管理の支援のあり方に関する研究
課題番号
H28-健やか-一般-003
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
楠田 聡(東京女子医科大学 院長室)
研究分担者(所属機関)
  • 伊東宏晃(浜松医科大学 産婦人科)
  • 鈴木俊治(葛飾赤十字産院 産婦人科)
  • 野村恭子(秋田大学 公衆衛生学)
  • 清水俊明(順天堂大学 病態学・小児科学)
  • 塙 佳生(日本小児科医会)
  • 堤 ちはる(相模女子大学 栄養科学部健康栄養学科)
  • 田村文誉(日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック)
  • 米本直裕(京都大学 生物統計学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成18年「妊産婦のための食生活指針」および平成19年「授乳・離乳の支援ガイド」の内容を最新の科学的根拠で検証し、改定案への提言を行う。
研究方法
「妊産婦のための食生活指針」の体格別の妊娠中の推奨体重増加量の妥当性および「授乳・離乳の支援ガイド」の内容についてクリニカルクエッション(CQ)を設定し、系統的に文献検索を行った。検索された文献の質の評価については、PRISM声明、AMSTAR法を用いた。さらに、非ランダム化試験の評価には、ROBINS-I toolの適応を検討した。また、体格別の妊娠中の推奨体重増加量については、最新の国内の4編のコホート研究のデータを用いた。
他に、授乳婦の栄養摂取状況調査、「授乳・離乳の支援ガイド」が十分に活用できるように、乳幼児の栄養状況と課題をスクリーニングできるチェックシートを試作した。
さらに、「小児ビタミンD欠乏症の実態把握と発症率の推定」研究班の研究成果および平成27年度乳幼児栄養調査の結果を参照した。
なお、作成した提言については、事前に関連学会の意見を聴取した。
結果と考察
現行の「妊産婦のための食生活指針」および「授乳・離乳の支援ガイド」の変更案に対する提言を、それぞれ、22項目、56項目作成した。指針の推奨体重増加量については、新たに提唱できるだけの科学的根拠が揃わなかった。今後の改定のために、大規模コホート研究の必要性が明らかとなった。ただし、1997年日本産科婦人科学会周産期委員会から提唱された推奨値に関しては、使用しない。
 一方、ガイドについては、母乳栄養の推奨を変更する必要はないが、栄養法に関わらず育児支援が重要であること、母乳栄養の効果には限界があること、離乳開始時期は生後5~6か月で変更する必要はないが、離乳食の進め方を十分説明する必要があること、等に関して提言を行った。
 授乳婦の栄養摂取状況調査では、授乳中の栄養摂取量が多くの授乳婦で不足している結果となった。
 乳幼児の栄養状況と課題をスクリーニングできるチェックシートは有用性が示唆されたが、今後のさらなる検討も必要であった。
「妊産婦のための食生活指針」体格別の妊娠中の推奨体重増加量については、今回新たな基準を設定できるだけの科学的根拠を得ることができなかった。その理由は、公表されている大規模コホート研究が国外で実施されていたこと、国内のコホート研究の結果に地域差が存在したことによる。したがって、新たな推奨体重増加量の設定のためには、複数の地域での大規模な国内コホート研究の実施が必須である。
「授乳・離乳の支援ガイド」については、母乳栄養推進の方針を維持しつつ、混合栄養あるいは育児用調整粉乳栄養のみの場合でも、適切な育児支援を母親に行うことが重要である。また、母乳栄養の神経発達促進あるいはアレルギー疾患予防の効果は限定的であることも明記する必要がある。一方、母乳栄養が将来の肥満発症のリスクを減らす効果は、科学的に示された。しかし、母乳栄養児と混合栄養児との間には肥満や2型糖尿病の発症の差は明確でなく、乳児用調製粉乳で肥満になるといった表現で誤解を与えない。一方、早期の離乳食開始が小児期の過体重や肥満のリスクになるので、少なくとも生後4か月以前に離乳食を開始しない。したがって、成長・発達に伴い乳汁だけでは不足してくるエネルギーや栄養素の補完のために、現行通り離乳食を生後5~6か月に開始する。また、乳幼児期は食事内容が大きく変わるため、離乳食の進め方に関しては母親に十分に説明する必要がある。
結論
平成28、29年度の研究班での検討の結果、現行指針およびガイドの改定案に対する提言を作成した。
 具体的な提言内容は、提言集を参照。

公開日・更新日

公開日
2018-11-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201707004C

収支報告書

文献番号
201707004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,100,000円
(2)補助金確定額
7,992,000円
差引額 [(1)-(2)]
108,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,957,977円
人件費・謝金 2,802,491円
旅費 858,924円
その他 753,250円
間接経費 1,620,000円
合計 7,992,642円

備考

備考
642円は自己資金より支出した。

公開日・更新日

公開日
2021-08-30
更新日
-