文献情報
文献番号
201706011A
報告書区分
総括
研究課題名
障害者の福祉的就労・日中活動サービスの実態把握及び質の向上に関する調査研究
課題番号
H29-特別-指定-011
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
原田 将寿(独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園 施設事業局)
研究分担者(所属機関)
- 大村 美保(筑波大学 人間系障害科学域)
- 相馬 大祐(福井県立大学 看護福祉学部社会福祉学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
2,880,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、障害福祉サービスの日中活動において事業所数、利用者数ともに多くを占める生活介護事業所ならびに就労継続支援B型事業所について、運営主体や契約者数、実利用者数等の基本情報や、利用者の年齢や障害支援区分等の利用者の状況を把握することで、両事業の運営状況や利用者の実態等を明らかにすることを目的とした。
研究方法
具体的には以下の2つの調査・研究を行った。
①就労継続支援B型事業、生活介護事業の制度創設の経緯や社会的背景の変化等について先行文献等によってまとめ、アンケート調査等を行ううえでの基礎資料とした。
②全国の生活介護事業所ならびに就労継続支援B型事業所を対象としたアンケート調査を行い、現状の利用者像やサービス内容等の実態を把握する調査を実施した。具体的には、全国の生活介護事業所、就労継続支援B型事業所4,000事業所を対象に、平成29年10月10日~10月31日の間に、平成29年10月1日現在の生活介護、就労継続支援B型事業所の基本情報、利用者の状況、支援内容等の基礎データ及び、平成28年度新規利用者の実態像等を把握するアンケート調査を実施した。また、②のアンケート調査結果を踏まえた二次調査として、ヒアリング調査を実施した。
①就労継続支援B型事業、生活介護事業の制度創設の経緯や社会的背景の変化等について先行文献等によってまとめ、アンケート調査等を行ううえでの基礎資料とした。
②全国の生活介護事業所ならびに就労継続支援B型事業所を対象としたアンケート調査を行い、現状の利用者像やサービス内容等の実態を把握する調査を実施した。具体的には、全国の生活介護事業所、就労継続支援B型事業所4,000事業所を対象に、平成29年10月10日~10月31日の間に、平成29年10月1日現在の生活介護、就労継続支援B型事業所の基本情報、利用者の状況、支援内容等の基礎データ及び、平成28年度新規利用者の実態像等を把握するアンケート調査を実施した。また、②のアンケート調査結果を踏まえた二次調査として、ヒアリング調査を実施した。
結果と考察
各々の結果として、①については、障害者自立支援法施行以降障害福祉サービスの日中支援の利用者数は倍以上に増え、多様なニーズの障害者が就労継続支援B型、生活介護を利用しており、また障害者の権利利益の擁護が重視される時代に変化している等の社会的背景の変化があり、新たなサービス体系検討に向けての実態調査が必要な時期に来ていることがわかった。
②については、調査結果として以下の6点について特徴点としてまとめる。
(1)新規事業所の増加と利用状況:生活介護通所系、就労B型で、ここ数年で、新規で事業を開始したNPO法人や営利法人を運営主体とした事業所が増加していることがわかった。また、特に就労B型で、利用者数が定員に満たない事業所や、利用率が不安定な事業所が少なくないことが示された。
(2)利用者の高齢化:生活介護では65歳以上の利用者の割合が増えており、全体的に高齢化が進行していると言える。就労B型では、65歳以上の利用者が1人以上あった事業所は47.2%で、平成28年度新規利用者の利用開始時年齢は「40~50歳未満」が22.5%で最も多く、全体の23.8%が50歳以上であり、就労B型においても高齢の利用者の割合が高いことがわかった。
(3)重度、多様な障害の利用者:利用者の障害支援区分5以上の割合は、生活介護全体では66.4%であり、障害支援区分において重度化の傾向が見られており、就労B型では、障害支援区分5以上の重度の利用者が利用している事業所が全体の3割以上であり、行動障害等の支援が必要な利用者の利用も一定数あることから、就労B型においても、重度の利用者の割合が低くないことが示された。また、平成28年度新規利用者の利用開始時の所持手帳「精神」の割合が、利用者全体の割合よりも多く、精神障害者に加えて発達障害者の利用が増加していることが推察された。
(4)工賃向上の課題:就労B型の平成28年度の平均工賃(月額)で、1万円未満の事業所の割合は全体の32.1%であり、工賃向上が就労B型事業所の重点課題となっているが、一方で、利用者の高齢化や送迎支援のニーズの対応、利用者確保等の課題を抱えている現状のなかで、その達成に困難さを抱えている事業所が多いことがうかがえた。
(5)自法人内サービス等利用計画の作成:利用者のサービス等利用計画では、生活介護入所系では約30%、生活介護通所系、就労Bでは約22%が、自法人内の相談支援事業所で全利用者分作成し、利用者の権利擁護の観点からも課題となっていると言える。
(6)広範囲の送迎支援と地域性:送迎支援について、送迎距離数(事業所で実施している送り、迎えを含めた1週間の送迎支援全てののべ距離数)では、500km以上実施している事業所が生活介護、就労B型ともに約3割であり、多くの事業所が広範囲の送迎支援を実施していることが示された。
②については、調査結果として以下の6点について特徴点としてまとめる。
(1)新規事業所の増加と利用状況:生活介護通所系、就労B型で、ここ数年で、新規で事業を開始したNPO法人や営利法人を運営主体とした事業所が増加していることがわかった。また、特に就労B型で、利用者数が定員に満たない事業所や、利用率が不安定な事業所が少なくないことが示された。
(2)利用者の高齢化:生活介護では65歳以上の利用者の割合が増えており、全体的に高齢化が進行していると言える。就労B型では、65歳以上の利用者が1人以上あった事業所は47.2%で、平成28年度新規利用者の利用開始時年齢は「40~50歳未満」が22.5%で最も多く、全体の23.8%が50歳以上であり、就労B型においても高齢の利用者の割合が高いことがわかった。
(3)重度、多様な障害の利用者:利用者の障害支援区分5以上の割合は、生活介護全体では66.4%であり、障害支援区分において重度化の傾向が見られており、就労B型では、障害支援区分5以上の重度の利用者が利用している事業所が全体の3割以上であり、行動障害等の支援が必要な利用者の利用も一定数あることから、就労B型においても、重度の利用者の割合が低くないことが示された。また、平成28年度新規利用者の利用開始時の所持手帳「精神」の割合が、利用者全体の割合よりも多く、精神障害者に加えて発達障害者の利用が増加していることが推察された。
(4)工賃向上の課題:就労B型の平成28年度の平均工賃(月額)で、1万円未満の事業所の割合は全体の32.1%であり、工賃向上が就労B型事業所の重点課題となっているが、一方で、利用者の高齢化や送迎支援のニーズの対応、利用者確保等の課題を抱えている現状のなかで、その達成に困難さを抱えている事業所が多いことがうかがえた。
(5)自法人内サービス等利用計画の作成:利用者のサービス等利用計画では、生活介護入所系では約30%、生活介護通所系、就労Bでは約22%が、自法人内の相談支援事業所で全利用者分作成し、利用者の権利擁護の観点からも課題となっていると言える。
(6)広範囲の送迎支援と地域性:送迎支援について、送迎距離数(事業所で実施している送り、迎えを含めた1週間の送迎支援全てののべ距離数)では、500km以上実施している事業所が生活介護、就労B型ともに約3割であり、多くの事業所が広範囲の送迎支援を実施していることが示された。
結論
本研究での調査結果より、利用者の高齢化や重度化、送迎支援の長距離化等、生活介護と就労B型で共通する課題があり、事業は違えども利用者の状態像や支援内容等が類似している状況があることがわかった。また、広範囲の送迎支援は、特に都市部よりも地方部において表面化しており、地域の社会資源の不足や、過疎地域、山間部、僻地等の地理的な要因が背景としてあることが推察された。また、アンケート調査結果を踏まえた二次調査として実施したヒアリング調査では、いずれも送迎支援が長距離で、支援員の負担や車両の維持費、燃料費等による経営面での影響が顕在化していた。
公開日・更新日
公開日
2018-12-11
更新日
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