診断群分類を用いた病院機能評価手法とデータベース利活用手法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201701017A
報告書区分
総括
研究課題名
診断群分類を用いた病院機能評価手法とデータベース利活用手法の開発に関する研究
課題番号
H29-政策-指定-009
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
伏見 清秀(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 医療政策情報学)
研究分担者(所属機関)
  • 石川ベンジャミン光一(国立がん研究センター 社会と健康研究センター 臨床経済研究室)
  • 今中 雄一(京都大学 大学院医学研究科)
  • 阿南 誠(川崎医療福祉大学 医療福祉マネジメント学部)
  • 康永 秀生(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 藤森 研司(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 池田 俊也(国際医療福祉大学 医学部公衆衛生学)
  • 松田 晋哉(産業医科大学 医学部公衆衛生学)
  • 堀口 裕正(国立病院機構本部 総合研究センター 診療情報分析部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
33,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究の目的を以下の2つとした。
①急性期入院医療における医療提供の評価手法に関する研究
②DPCデータの適切な第三者提供手法の開発
研究方法
研究に使用する厚生労働省DPC調査データ(各施設が厚生労働省に提出するDPC関連データ、様式1、様式3、D/E/Fファイル、外来EFファイル等)は、医療機関と個別に守秘義務契約を結んだ上で収集し、分析資料とした。必要に応じて、病棟機能等に関するデータを収集して研究を進めた。
結果と考察
昨年度までの研究に引き続き、パブリック・クラウドサービスを利用して研究班ホームページを作成し、1181病院から3年間で延べ2340万人の暗号化したDPC調査データファイルを安全かつ効率的にデータベース化して研究を進めた。
平成30年度の調整係数廃止に向けて導入された傷病名、手術・処置等に基づく重症度を考慮した評価手法(CCPM、Comorbidity Complication Procedureマトリックス)等を用いたDPC診断群分類のさらなる精緻化手法の検証を行った。平成28年度のデータを用いた検証では、CCPMの導入により従来の手法では分けることのできなかった症例群が比較的明確に分離されている状況が示され、統計学的手法によっても脳梗塞、肺炎、糖尿病全ての疾患群においてCCPMによる説明力の改善が示された。DPC制度の在院日数への影響の評価では、平成19年度~平成28年度の平均在院日数の変化から、この10年でⅠ,Ⅱ,Ⅲ群には有意な減少トレンドがみられた。一方準備病院・出来高算定病院では明確なトレンドは無かった。平成30年度の診療報酬改定において同時に改定される予定のDPC/PDPSコーディングテキスト(以下、コーディングテキスト)の見直しを行った。また、ICD-10(2013年版)への移行に伴い、定義等の置き換えを検討した。CCPマトリックスの導入拡大について引き続き検討することとした。病院情報の公開に関しては、患者数の公表対象を広げるなどの修正を検討した。また、EFファイルを使用した診療プロセスにかかわる指標について、すでに国立病院機構やいくつかの病院団体等でプロセス指標の公開等を参考に、検討を進めた。
急性期入院医療の評価手法の視点からの分析において、精神科領域では精神疾患を持った高齢者は譫妄や問題行動等、若年患者とは異なる医療資源投入を必要とする場合が多いこと、がんの化学療法などでは続発症としての「うつ」の影響度が大きいことなどを示した。リハビリテーション医療の分析では、脳梗塞や股関節骨折の症例について、地域包括ケア体制構築における急性期病院位於けるリハビリテーション医療と連携の有効性を示した。医療の質評価については、DPCデータを用いて病院ごとクオリティ・インディケーターを(QI)算出し、全国での病院間比較を実施した。また、MRSA感染症を抗菌薬の使用から同定し、MRSA感染症症例の入院費用は約3.4倍、在院日数は約3.0倍、死亡率は3.7倍であることを示した。今年度調査から追加されたDPC調査対象病院の看護必要度データ(Hファイル)については、高齢者の身体状況の把握や入院中のADL評価のために有用と考えられ、特にケアプロセスやその質の評価のための方法論の検討を行った。
さらに、DPCデータの臨床疫学研究への応用手法に関する検討を進めた。DPCデータは臨床研究を行うための貴重なデータベースであり、すでに今年度からDPCデータの第三者提供が開始されているが、要配慮個人情報であるDPCデータを、確実な個人情報の保護を行いながら、臨床研究に活用するシステムをどのように構築するかについては必ずしも十分な議論が行われていない。そこで、産業医科大学の臨床系教室、日本脳外科学会、日本集中治療学会などの関係者との協力のもと、DPCを用いた臨床研究のサポート体制構築に関する研究を行った。臨床疫学研究の成果として、約50本の査読付き英文専門誌に研究成果を報告した。
地域における病院機能の評価に関しては、地域医療構想等と関連させて、高度急性期病棟の診療実態やばらつきの分析、経日的な医療資源投入量の動向による急性期以降の医療の実態に関する医療連携とケアミックス医療機関の比較分析、また、DPCデータに基づく疾患別の診療プロセス時系列解析を発展させ、病床機能の評価への応用手法を示し、これらに基づく、病床機能ごとの医療需要将来推計の方法論の検討を進めた。
結論
本研究は、DPC診断群分類の今後の維持・整備手法を明らかとし、平成30年度以降の改定手法の基盤を提供するとともに、DPC包括評価の妥当性の確保につながる分析と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2018-11-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
総括研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-11-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201701017C

成果

専門的・学術的観点からの成果
DPCデータを用いた医療の質評価手法を開発し、臨床指標の作成、医療安全管理への応用などの観点から学術集会等でその成果を報告した。
臨床的観点からの成果
DPCデータを用いた臨床疫学研究の成果として、約50本の査読付き英文専門誌に研究成果を報告した。一例として高リスク内視鏡治療を受けた患者の術後のGI出血のリスクは、DOAC患者よりもワルファリンで高いこと、ヘパリンブリッジングは出血リスクの増加と関連し、血栓塞栓症を予防にはつながらないことを示した。
ガイドライン等の開発
適切な診療報酬制度の維持とDPCデータの精度向上のために平成29年度版のDPC傷病名コーディイングテキストの作成を行った。
その他行政的観点からの成果
研究成果は平成30年度およびそれ以降の診療報酬改定におけるDPC制度の改定に反映されると考えられる。平成31年度以降の病院情報の公表への医療の質評価項目の追加の検討が中医協DPC評価分科会において決定され、DPCデータの利活用手法の開発は、病院によるDPCデータの解析と公表・評価の普及・啓発と今後の分析手法の発展につながることが期待された。
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
60件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
11件
医療マネジメント学会、医療情報管理学会、地域医療構想に関するワーキンググループ、外科学会、骨折治療学会、泌尿器科学会、整形外科学会、透析医学会、呼吸器内視鏡学会、集中治療医学会、医療病院管理学会
学会発表(国際学会等)
2件
59th ASH Annual Meeting and Exposition、18th World Conference on Lung Cancer
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Mizuno S, Kunisawa S, Sasaki N, Fushimi K, Imanaka Y.
Effects of night-time and weekend admissions on in-hospital mortality in acute myocardial infarction patients in Japan.
Plos One , 13 (1) , e0191460-  (2018)
10.1371/journal.pone.0191460
原著論文2
Umegaki T, Kunisawa S, Nakajima Y, Kamibayashi T, Fushimi K, Imanaka Y.
A comparison of in-hospital outcomes between transcatheter and surgical aortic valve replacement in patients with aortic valve stenosis: a retrospective cohort study using administrative data.
Journal of Cardiothoracic and Vascular Anesthesia , 32 (3) , 1281-1288  (2018)
10.1053/j.jvca.2017.06.047
原著論文3
Wada T, Yasunaga H, Doi K, Matsui H, Fushimi K, Kitsuta Y, Nakajima S.
Impact of hospital volume on mortality in patients with severe torso injury.
J Surg Res , 222 , 1-9  (2018)
10.1016/j.jss.2017.08.048
原著論文4
Usui T, Hanafusa N, Yasunaga H, Nangaku M.
Association of dialysis with in-hospital disability progression and mortality in community-onset stroke.
Nephrology (Carlton) , in press  (2018)
原著論文5
Tsuchiya A, Yasunaga H, Tsutsumi Y, Matsui H, Fushimi K.
Mortality and Morbidity After Hartmann's Procedure Versus Primary Anastomosis Without a Diverting Stoma for Colorectal Perforation: A Nationwide Observational Study.
World J Surg , 42 (3) , 866-875  (2018)
10.1007/s00268-017-4193-2
原著論文6
Suzuki S, Yasunaga H, Matsui H, Fushimi K, Ando M, Yamasoba T.
Postoperative mechanical bowel obstruction after pharyngolaryngectomy for hypopharyngeal cancer: Retrospective analysis using a Japanese inpatient database.
Head Neck , in press  (2018)
原著論文7
Shinkawa H, Yasunaga H, Hasegawa K, Matsui H, Fushimi K, Michihata N, Kokudo N.
Mortality and morbidity after hepatic resection in patients undergoing hemodialysis: analysis of a national inpatient database in Japan.
Surgery , in press  (2018)
原著論文8
Sawada Y, Sasabuchi Y, Nakahara Y, Matsui H, Fushimi K, Haga N, Yasunaga H.
Early Rehabilitation and In-Hospital Mortality in Intensive Care Patients With Community-Acquired Pneumonia.
Am J Crit Care , 27 (2) , 97-103  (2018)
10.4037/ajcc2018911
原著論文9
Okubo Y, Morisaki N, Michihata N, Matsui H, Fushimi K, Yasunaga H.
Dose-dependent relationships between weight status and clinical outcomes among infants hospitalized with respiratory syncytial virus infections.
Pediatr Pulmonol , 53 (4) , 461-466  (2018)
10.1002/ppul.23949
原著論文10
Okubo Y, Michihata N, Uda K, Morisaki N, Miyairi I, Matsui H, Fushimi K, Yasunaga H.
Dose-response relationship between weight status and clinical outcomes in pediatric influenza-related respiratory infections.
Pediatr Pulmonol , 53 (2) , 218-223  (2018)
10.1002/ppul.23927
原著論文11
Okubo Y, Michihata N, Morisaki N, Uda K, Miyairi I, Ogawa Y, Matsui H, Fushimi K, Yasunaga H.
Recent trends in practice patterns and impact of corticosteroid use on pediatric Mycoplasma pneumoniae-related respiratory infections.
Respir Investig , 56 (2) , 158-165  (2018)
10.1016/j.resinv.2017.11.005
原著論文12
Okubo Y, Michihata N, Morisaki N, Hangai M, Matsui H, Fushimi K, Yasunaga H.
Recent trends in practice patterns and comparisons between immunoglobulin and corticosteroid in pediatric immune thrombocytopenia.
Int J Hematol , 107 (1) , 75-82  (2018)
10.1007/s12185-017-2322-1
原著論文13
Oichi T, Oshima Y, Chikuda H, Ohya J, Matsui H, Fushimi K, Tanaka S, Yasunaga H.
In-hospital complication rate following microendoscopic versus open lumbar laminectomy: a propensity score-matched analysis.
Spine J , in press  (2018)
原著論文14
Mitani A, Jo T, Yasunaga H, et al.
Venous thromboembolic events in patients with lung cancer treated with cisplatin-based versus carboplatin/nedaplatin-based chemotherapy.
Anticancer Drugs , 29 (6) , 560-564  (2018)
10.1097/CAD.0000000000000625
原著論文15
Koizumi C, Michihata N, Matsui H, Fushimi K, Yasunaga H.
In-Hospital Mortality for Hepatic Portal Venous Gas: Analysis of 1590 Patients Using a Japanese National Inpatient Database.
World J Surg , 42 (3) , 816-822  (2018)
10.1007/s00268-017-4189-y
原著論文16
Isogai T, Matsui H, Tanaka H, Kohyama A, Fushimi K, Yasunaga H.
Clinical features and peripartum outcomes in pregnant women with cardiac disease: a nationwide retrospective cohort study in Japan.
Heart Vessels , in press  (2018)
原著論文17
Funakoshi H, Matsui H, Fushimi K, Yasunaga H.
Variation in Patient Backgrounds, Practice Patterns, and Outcomes of High-Risk Pulmonary Embolism in Japan.
Int Heart J , 59 (2) , 367-371  (2018)
10.1536/ihj.16-585
原著論文18
Wada T, Yasunaga H, Yamana H, Matsui H, Fushimi K, Morimura N.
Development and validation of an ICD-10-based disability predictive index for patients admitted to hospitals with trauma.
Injury , 49 (3) , 556-563  (2018)
10.1016/j.injury.2017.12.021
原著論文19
Uda K, Matsui H, Fushimi K, Yasunaga H.
Preoperative short-term plus postoperative physical therapy versus postoperative physical therapy alone for patients undergoing lung cancer surgery: retrospective analysis of a nationwide inpatient database.
Eur J Cardiothorac Surg , in press  (2018)
原著論文20
Okubo Y, Michihata N, Morisaki N, Sundel RP, Matsui H, Fushimi K, Yasunaga H.
Association between dose of glucocorticoids and coronary artery lesions in Kawasaki disease.
Arthritis Care Res (Hoboken) , in press  (2018)

公開日・更新日

公開日
2019-05-15
更新日
2019-05-21

収支報告書

文献番号
201701017Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
33,000,000円
(2)補助金確定額
33,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,513,421円
人件費・謝金 3,031,742円
旅費 5,496,686円
その他 17,964,495円
間接経費 0円
合計 33,006,344円

備考

備考
消耗品がやや多く必要であったため、自己資金を追加で使用したため

公開日・更新日

公開日
2019-02-20
更新日
-