文献情報
文献番号
201701013A
報告書区分
総括
研究課題名
患者調査等、各種基幹統計調査におけるNDBデータの利用可能性に関する評価
課題番号
H29-政策-指定-005
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 源太(京都大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
- 田村 寛(京都大学 国際高等教育院)
- 平木 秀輔(京都大学 医学部附属病院)
- 大寺 祥佑(京都大学 医学部附属病院)
- 奥村 泰之(医療経済研究機構)
- 酒井 未知(医療経済研究機構)
- 野田 龍也(奈良県立医科大学)
- 佐藤 大介(国立保健医療科学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
7,873,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
患者調査は厚生労働省主幹の各種会議における検討資料として広く活用されている基幹統計である。また、レセプト情報等データベース(NDB)は、ほぼ全ての保険請求情報ならびに特定健診等情報を含み、更なる利活用が期待されているデータベースである。当研究は、従来の患者調査をNDBデータでどの程度活用することが可能かについて評価を行うことを目的としている。仮にNDBデータの活用が可能であれば、現行患者調査の一部代替や、3年毎に行われている患者調査の高頻度化等に道を開くことが期待される。一方、患者調査における調査項目とレセプトデータにおける各項目とでは、共通するものもあれば全く異なるものがあり、データ収集経路等も大きく異なることから、両者の相互性について十分に知悉しておく必要がある。こうした問題意識に基づき、本研究は2017年度より2年の計画で行われるものである。
研究方法
以下、大きく分けて「」の5つの研究を実施した。「NDBデータ(特別抽出)の提供依頼申出」では、実際にNDBデータを入手し、患者調査の集計値をレセプトデータから如何に得られるかを評価することを目的として、NDBデータ申出審査(第13回レセプト情報等の提供に関する有識者会議 審査分科会)にデータ提供依頼申出を行った。「患者調査/レセプトデータ項目比較」では、患者調査の集計項目ごとに整理を行い、レセプトデータによってそれらの集計値を得ることが可能なのかについて評価を行った。「既存NDBを活用した個別研究」では、現在他の研究においてNDBデータを用いて成果を導いている分担研究者を中心に、現在実施している各研究の成果に対し、特に傷病同定アルゴリズムの適切性に関する検証や患者調査への応用の可能性等の再整理を行った。「NDB以外の保健医療データによる研究利用の可能性の評価」では、保健医療データの二次利用という観点から、NDB以外のデータについても、研究利用の可能性について評価することを目的に、他のデータを利用した保健医療領域での知見導出の可能性を評価した。「保健医療データ利用の海外動向調査」では、NDBデータの今後の政策利用について活性化の在り様を探るため、アメリカ(CMSおよびResDAC)、イギリス(CPRD)、フランス(CNAMTS)および台湾(衛生福利部)の事例について調査を行った。
結果と考察
「NDBデータ(特別抽出)の提供依頼申出」では、データの提供を受けたのは2018年に入ってからであり、実質的なデータ分析は2018年度の課題となった。「患者調査/レセプトデータ項目比較」では、平成26年度患者調査の各集計項目を「NDBデータをそのまま利用可能」な項目、「一定の処理の下で置き換え可能」な項目、「相応の処理の下で一定程度の置き換え可能」な項目、「不可能」な項目の、4つのパターンに区分した。このうち「一定の処理の下で置き換え可能」な項目、「相応の処理の下で一定程度の置き換え可能」な項目については、どの程度の処理が必要なのか、またそうした処理によってどの程度の精度の結果が得られるかのかを、NDBデータを実操作しながら更に情報収集を行っていく必要がある。「既存NDBを活用した個別研究」として、死亡事例、脂質異常症、潰瘍性大腸炎ならびにパーキンソン病に関する評価を行い、いずれもNDBデータの有効性・可能性が示唆される結果となった。「NDB以外の保健医療データによる研究利用の可能性の評価」として、他のレセプトデータ及び健康診断データ、病院情報システムの処方データならびに臨床検査データによる分析を試みたが、いずれもデータの有効性が示唆される結果となった。「保健医療データ利用の海外動向調査」では、いずれの事例においても、多数の提供依頼申出に対してデータ提供が行われており、運用体制も充実していた。これらの調査から、一方ではNDBデータを利用する際には適切なアルゴリズムを導入して集計処理を行わなければならず、それでも全ての項目をNDBで再現できるわけではないという現実、他方ではNDBデータのみならず他の保健医療データも、二次利用が有効であることが示される結果となった。海外でこうしたデータ提供の取り組みが積極的に行われていることも、この結果を裏付けるものである。
結論
患者調査に対してNDBデータがどの程度利用可能であるかを評価することを目的として、患者調査の集計項目とレセプトデータの各項目との比較、NDBデータや他の保健医療データの利活用の可能性、海外でのレセプトデータ利活用の動向について調査を行った。これらの研究によって得られた知見に基づき、2018年度は提供を受けたNDB特別抽出データに対して実分析を行い、NDBデータの利用可能性について掘り下げた研究を行っていく予定である。
公開日・更新日
公開日
2018-11-27
更新日
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