国際的・地域的視野から見た少子化・高齢化の新潮流に対応した人口分析・将来推計とその応用に関する研究

文献情報

文献番号
201701011A
報告書区分
総括
研究課題名
国際的・地域的視野から見た少子化・高齢化の新潮流に対応した人口分析・将来推計とその応用に関する研究
課題番号
H29-政策-指定-003
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
石井 太(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 林玲子(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部 )
  • 鈴木透(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部 )
  • 小島克久(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部 )
  • 小池司朗(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部 )
  • 守泉理恵(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、先進諸国のみならず、新興国においても「ポスト人口転換」とも呼ばれる低出生・低死亡の継続や、国際人口移動の活発化など、国際的な人口動向が変化する一方、国内では継続的な低出生力や人口減少と人口の大都市集中、高齢期の長期化やこれに伴う生活・居住形態の多様化等、少子化・高齢化に関する新たな動きが顕在化してきている。本研究では、このような人口や世帯の新潮流について、国際的・地域的視野を踏まえながら的確に捉えるとともに、国立社会保障・人口問題研究所が行う人口・世帯の将来推計の精度改善及びその応用を目的とした人口学的研究を行うものである。
研究方法
研究は、大きく分けて以下の3項目の課題領域ごとに進められる。
1.国際的・地域的視野から見た少子化・高齢化の新潮流に対応した総合的な人口・世帯の動向分析
2.地域・世帯推計に重点を置いた将来推計モデルの深化に関する基礎的研究:
3.将来推計を活用した政策的シミュレーション
なお、社人研や研究者個人が属する国際的研究ネットワークを最大限に活用し、諸外国や国際機関などと緊密な連携を図って研究を進める。
結果と考察
本研究は、①国際的・地域的視野から見た少子化・高齢化の新潮流に対応した総合的な人口・世帯の動向分析、②地域・世帯推計に重点を置いた将来推計モデルの深化に関する基礎的研究、③将来推計を活用した政策的シミュレーションに関する研究の3領域に分けて進める。初年度は①については家族人口学の発展と課題、都道府県別介護施設需要の将来推計、東京都区部における人口移動傾向の変化、日本における出生をめぐる行動と意識の長期的変遷に関する分析、ひとり親の世帯構造、2015年国勢調査人口移動集計における「不詳」と転出率の関係、自然災害が地域の出生力に与える影響、安定人口模型による少子・高齢化構造の解析、外国人集住地区の分布とその変化、②については年齢別出生率の数理モデルに関する動向、地域別将来推計人口の精度評価、③については外国人介護労働者受入れシナリオに対応した将来人口変動と公的年金財政シミュレーションに関して研究を行った。
結論
家族人口学の発展と課題については法制度や政策、企業文化、消費行動等もその対象になり得るが、中核はカップルと世帯の形成・解体行動の計量と推計であるべきで、質の良い個票データの収集と分析が鍵となる。
今後の介護施設需要の推移は地域により異なり、首都圏および愛知県・沖縄県では右肩上がりに増加する一方、それほど増えない都道府県も多く、計画的な施設建設・運営が求められる。
東京都の区別のモビリティ変化については、一定の空間的な循環性があること、地域ブロック別にみた区部への転入モビリティ比と区部からの転出モビリティ比には西高東低の傾向があること、転入モビリティ比と転出モビリティ比の相関がきわめて高いことなどの知見が得られた。
日本の出生力転換および近年に至る出生率低下について子どもの需要・供給・出生抑制という観点からデータを整備しこれら要因の動向を把握した。
母子世帯はその親と同居することで、親から私的支援を受けていることが示唆されたが、同居割合が母子世帯・父子世帯それぞれについてあまり大きな変化が無く推移しているのは様々な要因があると考えられ、世態構造別にひとり親を把握出来るデータにより要因を探ることが課題である。
2015年国勢調査による移動状況不詳人口の調整は多くの自治体で転出率を大きくする。また、期末・期首国勢調査と死亡統計の整合性を2~3割高める調整が可能である。
東日本大震災の被害の大きい地域は、沿岸部の高齢化が進んだ経済機能の復興が困難な地域である可能性が高く、若者の働き口の確保なしには定住や結婚・出産に結びつきにくいと考えられる。
安定人口模型を用いた感度分析は理論的側面も強いものの、少子・高齢化を理解する有効な方法の1つとなり得る。
外国人人口の地理的偏在について、近年、市区町村レベル未満の単位でのデータ整備・利用が進んでいる。今後、居住する外国人の属性の違いによって集住地区を類型化し経年変化を検証することが有用である。
近年、日本の第1子出生率で単峰型カーブからの逸脱が観察されており、これを競合リスクモデル・混合分布モデルでモデル化する試みがある。また、セミパラメトリックモデルの試みもあるが、公的推計での利用例は少なくさらなる研究が必要である。
地域別将来推計人口の推計誤差は、推計単位や年次・期間によって傾向は様々ではあるものの、推計誤差の空間的特性の所在や回帰モデルで規定要因を推定する場合の一定の指針が得られた。
外国人労働者受入れ議論はしばしば短期的視点で行われるが、公的年金への財政影響は長期の人口動向に大きく影響を受けることから、長期的な評価を行うことが重要である。

公開日・更新日

公開日
2018-11-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-11-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201701011Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,000,000円
(2)補助金確定額
5,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,878,992円
人件費・謝金 609,550円
旅費 1,818,576円
その他 693,502円
間接経費 0円
合計 5,000,620円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2019-05-15
更新日
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