エステティックの施術による身体への危害についての原因究明及び衛生管理に関する研究

文献情報

文献番号
201625009A
報告書区分
総括
研究課題名
エステティックの施術による身体への危害についての原因究明及び衛生管理に関する研究
課題番号
H27-健危-一般-005
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
関東 裕美(公益財団法人日本エステティック研究財団)
研究分担者(所属機関)
  • 舘田 一博(東邦大学医学部微生物・感染症学講座)
  • 古川 福実(和歌山県立医科大学法医学教室)
  • 山本 有紀(和歌山県立医科大学皮膚科学教室)
  • 鷲崎久美子(東邦大学医学部皮膚科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
5,011,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
エステティックにおける施術は、消費者ニーズの高まりとともに普及している。一方で、エステティックには法的な規制がなく、実態が十分に把握されていないため、衛生管理や施術に関係する健康被害が懸念される。本研究は、エステティックの健康被害を防止するための原因究明及び施設の衛生環境の向上を目指し、安全に施術が提供される環境を整備することを目的とした。
研究方法
Ⅰ エステティックサービスによる健康被害の実態把握及び原因の究明
●エステティック営業施設利用者が持つ疾患やアレルギー等に関する調査
●独立行政法人国民生活センターの健康被害情報の収集
●エステティックサロンにおける健康被害実態調査
●機器及び手技、化粧品等の安全性調査
●営業施設対象アンケート調査
Ⅱ 施設の衛生管理の徹底について
●衛生管理状況に関するアンケート調査
●フェイシャルスキンケアの皮膚に対する影響試験
●施術用スチームタオル保管庫とスチームタオルの汚染状況調査
●衛生管理教育に関するアンケート調査
結果と考察
エステティック施術は本来心身が健康な人に手技,化粧品,機器を使用して施術するものであるが,利用者背景については規制がなく種々の目的で多くの人が利用する可能性がある。施術の組み合わせは,施設により決められた工程で進行することが予想され顧客の状況や条件で変更する技量が施術者に備わっているかどうかは疑問である。平成28年度の研究では,国民生活センターの危害情報及び皮膚科医師のアンケートにおいて健康被害は,皮膚障害,熱傷が主であることは変わらなかった。皮膚科医師のアンケートから,健康被害で受診した患者の原因として,光を利用した脱毛,オーガニック化粧品,ラジオ波があげられた。今年度はラジオ波の安全性試験を行ったが,1例発赤を認めるなど使用方法を誤ると健康被害のおそれがあることが分かった。エステティック営業施設対象のアンケートでは,施設で使用している機器として光を利用した脱毛21.5%ラジオ波32.3%だった。利用者背景の調査では,利用者の理解を得るのに時間がかかり今年度収集できたサンプル数は少ないが,利用者の半数以上がアレルギーの既往を持ち,約2割で高血圧や糖尿病などの既往があった。
衛生学的調査では,昨年と同様技術者の手を介した細菌類の伝搬について調査を行ったが,施術者の技能差(実務経験20年以上と1年未満))で比較検討をした所感染媒介という点では有意な差は見られなかった。エステティック営業施設の衛生管理状況に関する調査では,必要な21項目の実施状況において平成25年度に行った同様の調査との比較では,「衛生管理のマニュアルがある」などをはじめ全体的に「実施」が微増していた。また,手洗いについては,時間が短めであり消毒剤の使用も半数以下にとどまり,十分な手洗いができているか疑問が残った。昨年度作成した正しい手洗いを示した補助教材については,「手洗い手順のイラストが小さい」,「施術前後の細菌付着状況の写真の解説が必要」などの意見をふまえた上で新たな情報を付け加えることなど改善を検討している。
結論
エステティック施術は年間のべ1,000万人以上の利用者が施術を受けていると言われている。施術の安全性は,これまで検証した手技や機器,化粧品について通常の手順や使用方法では健康被害につながる可能性は低く,顧客の要望にこたえて刺激を強くするなど通常の手順を逸脱しない限り安全と思われた。今後さらに機器や手技,化粧品(特にオーガニック化粧品)について検証を行っていく。また,報告されている健康被害では,被施術者に皮膚過敏性素因,末梢神経・血管障害のリスクを持つ場合があり,健常人では問題がない場合でも健康被害につながっていることが考えられた。本来エステ施設は,健康な人を対象に癒しを提供する施設であるが,内臓疾患,皮膚疾患,アレルギーをもつ消費者も利用している。健康被害を防止するためには,個々の施術の安全性を検証していくとともに,社会が高齢化していくにつれ,内臓疾患など健常人より健康被害のリスクが高いことで癒しを求めてエステティックを受ける場合が増える可能性がある。施術者教育として被施術者の心身の状況を把握する問診,カウンセリングが取れるように,加えて脆弱皮膚の扱い方に関する基礎知識が得られるような啓発教育をすべきと考えている。
衛生環境の向上では,種々の理由から教育方法が施設によって異なることや講師の理解に差があることが分かり,感染対策の実習教育などが課題として提起されている。いままでの研究で得た成果を元に技術者養成における衛生教育が均質化できるよう,補助教材の作成や施設経営者啓発も含め検討していきたい。

公開日・更新日

公開日
2017-06-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-06-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201625009Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,396,000円
(2)補助金確定額
5,396,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,742,093円
人件費・謝金 487,190円
旅費 454,740円
その他 1,327,094円
間接経費 385,000円
合計 5,396,117円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-03-01
更新日
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