ラット前がん病変の生物学的特徴に基づいた新たな肝発がんバイオマーカーの探索

文献情報

文献番号
201624022A
報告書区分
総括
研究課題名
ラット前がん病変の生物学的特徴に基づいた新たな肝発がんバイオマーカーの探索
課題番号
H27-化学-若手-010
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
高須 伸二(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
1,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
化学物質の迅速なリスク評価を実現するうえで、動物個体を用いたハザード評価の迅速化・効率化は大変重要である。胎盤型グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST-P) 陽性細胞巣の定量解析は、ラットにおける化学物質の肝発がん性予測に非常に有効な手段である。しかし我々はこれまでに、diethylnitrosamine (DEN) 誘発GST-P陽性細胞巣はDEN休薬後に増加するのに対して、furan誘発のGST-P陽性細胞巣はfuran休薬後に減少し、それは大型のGST-P陽性細胞巣の減少が大きく寄与していることを見出した。本研究では、発がん性評価のためのGST-P陽性細胞巣定量化解析の精緻化を目的として、動態の異なるGST-P陽性細胞巣に対し網羅的遺伝子発現解析を行い、生物学的特徴からの両者の峻別法を確立する。
研究方法
6週齢の雄性F344ラットにDENを10 ppmの濃度で13週間飲水投与またはfuranを8 mg/kg体重/日の用量で1日1回、週5日間の頻度で13週間強制経口投与した。投与終了後、肝臓を摘出し、それぞれのGST-P陽性細胞巣ならびにGST-P陰性領域をレーザーマイクロダイセクション法により採取した。採取したサンプルからtotal RNAを抽出し、RNA増幅を行った後に網羅的遺伝子発現解析を実施した。
結果と考察
DENを投与した肝臓のGST-P陰性領域に対してDEN誘発GST-P陽性細胞巣のみで発現上昇した遺伝子として4遺伝子が抽出された。同様にfuranに関しては35遺伝子が抽出された。今後、発現変動が認められた遺伝子に関して発現変動のパターン、程度を精査するとともに、発がん過程における遺伝子の役割を考慮して、新たな肝発がんバイオマーカーの候補対象となる分子を同定する。
結論
生物学的特徴が異なるGST-P陽性細胞巣の峻別による発がん性評価の精緻化を達成するため、DEN誘発GST-P陽性細胞巣とfuran誘発のGST-P陽性細胞巣の網羅的遺伝子発現解析を行った結果、それぞれのGST-P陽性細胞巣で特異的に発現上昇した遺伝子を抽出した。今後、発現変動のパターンや程度、遺伝子の機能を考慮し、生物学的特徴が異なるGST-P陽性巣峻別のためのバイオマーカーとなり得る候補分子を同定する。

公開日・更新日

公開日
2017-07-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201624022Z