文献情報
文献番号
201624009A
報告書区分
総括
研究課題名
気道障害性を指標とする室内環境化学物質のリスク評価手法の開発に関する研究
課題番号
H27-化学-一般-009
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
神野 透人(名城大学 薬学部 衛生化学研究室)
研究分担者(所属機関)
- 埴岡 伸光(横浜薬科大学 薬学部 公衆衛生学研究室)
- 伊藤 一秀(九州大学大学院 総合理工学研究院 エネルギー環境共生工学部門)
- 香川 聡子(横浜薬科大学 薬学部 環境科学研究室)
- 河上 強志(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
- 小野 敦(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科・薬学系 毒性学講座)
- 東 賢一(近畿大学 医学部 環境医学・行動科学教室)
- 酒井 信夫(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
15,600,000円
研究者交替、所属機関変更
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研究報告書(概要版)
研究目的
現在、厚生労働省のシックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会において、「室内濃度指針値見直しスキーム」にしたがって室内濃度指針値の改定あるいは対象化合物の追加に関する議論が進められている。そのスキームでは、全国実態調査等に基づく初期曝露評価に続いて、既存のハザード情報を活用して初期リスク評価を行うこととされている。この初期リスク評価は、その評価結果に基づいて詳細曝露評価および詳細リスク評価を実施するか否かが判断される重要なステップである。しかし、多くの室内環境化学物質では、初期リスク評価に資するハザード情報が比較的限られていることから、この段階が指針値策定/改定作業において律速となることが危惧されている。このような背景から、本研究では、室内濃度指針値策定に必要なハザード情報の網羅的な収集、ならびに不足情報の補完方法の確立を目的として、1) 気道内挙動のin vitro/in silico予測、2) 気道障害性のin vitro評価、3) 気道障害性にかかる情報収集および優先順位判定、および4) 定量的VOC放散データベースの構築の4つのサブテーマを設定して研究を実施した。
研究方法
サブテーマ1では、数値気道モデルを人体幾何形状モデルに統合して、室内環境中で発生した汚染物質の経気道曝露を予測するための総合的な数値人体モデルCSPを作成した。さらに、このCSPにPBPKモデルを組み込んだ一連の解析モデルを構築した。また、気道内での異物代謝予測法を確立する目的で、ヒト由来ミクロゾームを酵素源として用いて、テキサノールおよびTXIBの代謝挙動を検討した。サブテーマ2では、気道障害性にかかる動物実験の結果をヒトに外挿する際の妥当性を検証する目的で、気道の知覚神経刺激の種差について検討を行った。ヒトTRPA1およびマウスTRPA1安定発現細胞株を用いて、2-エチル-1-ヘキサノール、テキサノール、TXIBおよびテルペン類による侵害受容チャネル活性化の種差について検討を行った。感作性については、揮発性有機化合物および準揮発性有機化合物に分類される27化合物についてDPRA法による評価を実施した。サブテーマ3では、JP-GHSデータベースを用いて気道障害性に関連する情報を検索し、クラスタリング解析を行った。さらに、JP-GHSで皮膚感作性についての情報が得られる707物質について化学構造分類を行い、化学構造群ごとに皮膚感作性と呼吸器感作性との関連について解析を行った。また、実態調査で検出された化学物質等について有害性情報を網羅的に収集し、有害性評価ならびに健康リスクの初期評価を実施した。サブテーマ4では、ISO 12219-3およびASTM D7706に準拠する超小形チャンバーを使用して、壁紙等の内装材40製品について放散試験を実施した。
結果と考察
研究課題1では、CSP/PBPKモデルを床材から放散されたホルムアルデヒドの曝露を想定した予備的な解析に適用し、気道内の部位によって曝露濃度が著しく異なることを示した。研究課題2では、侵害受容チャネルTRPA1について、顕著な種差を示す室内環境化学物質が存在することを明らかにした。また、DPRA法が室内環境化学物質の感作性を評価する上で有用な試験系であること示し、防腐剤Bronopolおよびその代謝物がDPRA陽性物質であることを明らかとした。研究課題3では、呼吸器感作性・刺激性に関連する可能性のある皮膚感作性、皮膚刺激性、眼刺激性などについて網羅的な検索を行い、それぞれの化合物群の化学構造的な特徴を明らかとした。また、室内空気中の化学物質の有害性にかかる情報を網羅的に収集してRfCを導出し、室内空気全国調査における最高検出濃度を基に初期リスク評価を行った。研究課題4では、放散試験の結果から、2-エチル-1-ヘキサノールの重要な放散源としてフロアタイル、カーペットなどを同定した。
結論
本研究の成果の一部は既にシックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会において有効に活用されているが、今後、本研究で得られた気道刺激性 (TRPチャネル活性化) や感作性 (DPRA法) に関する知見およびCSP/PBPKモデルなどの要素技術の活用によって、シックハウス (室内空気汚染) 問題に関する検討会における室内濃度指針値の策定/改定作業の一層の加速化に貢献できるものと期待される。
公開日・更新日
公開日
2017-06-07
更新日
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