新規in vitro評価系とマーカーの開発によるナノマテリアルのリスク評価及びリスク低減化に関する研究

文献情報

文献番号
201624008A
報告書区分
総括
研究課題名
新規in vitro評価系とマーカーの開発によるナノマテリアルのリスク評価及びリスク低減化に関する研究
課題番号
H27-化学-一般-008
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 昌俊(横浜国立大学 大学院工学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 林 幸壱朗(名古屋大学 未来材料・システム研究所)
  • 戸塚 ゆ加里(国立がん研究センター研究所 発がん・予防研究分野)
  • 中江 大(東京農業大学 応用生物科学部)
  • 宮島 敦子(国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部)
  • 花方 信孝(国立研究開発法人物質・材料研究機構)
  • 河上 強志(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
13,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ナノマテリアルの社会的受容の実現には、十分なリスク評価を行い、仮にリスクがある場合、ベネフィット・リスクバランスを考慮した適切なリスク低減が必要である。また、動物愛護の3Rの観点から、動物実験代替法の開発、使用も必要である。本研究は、ナノマテリアルの物性解析後、新規in vitro評価系の確立、細胞内応答機構等の解析で従来の評価系との比較検討、新たなマーカーの確立、適切な動物実験による妥当性の検証を目的としている。
研究方法
ナノマテリアルの物理化学的性状解析では、本研究の1つの焦点である同じ材質のナノ粒子の一次粒子径が同じで、二次粒子径が異なる、あるいは一次粒子径が異なり、二次粒子径が同じである性状の影響の解析では、その調整に粉砕用のジルコニアボールと遊星ボールミル型粉砕器を使用している。(B)ナノマテリアルの気道及び皮膚毒性新規評価系の開発及びマーカーの開発について、共培養システム(RAW264およびGDL-1細胞)、3Dヒト皮膚再構成系としてLabCyte EPI24、A549細胞の切片担体培養系の構築および曝露実験を開始した。また、マイクロアレイを用いて、ナノ粒子の非曝露群と曝露群のmicroRNA発現の比較から、エピジェネティクスマーカーの抽出を行い、前年度と同様の実験を行い,再確認した。(C)適切なin vivo動物実験による当該代替法の有効性の検証については、共培養システム(RAW264およびGDL-1細胞)のデータとgpt deltaマウスのデータ比較を行った。

結果と考察
ナノマテリアルの毒性評価において、ナノ粒子の物理化学的性状および形状・表面修飾は重要な因子である。異なる一次粒子径の酸化ニッケルナノ粒子を同程度の二次粒子径あるいは同程度の1次粒子径で異なる二次粒子径の懸濁液による細胞毒性への影響やナノ粒子の分散性に重要な役割を果たす分散剤の毒性を排除するナノ粒子の製造法の開発を行った。また、酸化鉄ナノ粒子の細胞への影響は、粒子側の修飾によるROS産生の有無のみならず、細胞側の活性酸素種に対する抵抗性との複合的関わりを明らかにした。これらは、ナノマテリアルの物性が細胞毒性あるいは反応に影響する事を明らかにし、同時にリスク低減に重要な示唆を与えると考えられた。また、ナノマテリアルの物性のみならず、生体側の問題も明らかにし、その部位に対応した対策の必要性を示唆すると考えられた。多層カーボンナノチューブ(MWCNT)に対するin vivoおよび共培養システムによるgpt遺伝子を指標とした遺伝毒性試験より、in vivo系のデータとの比較により共培養系の妥当性および多層カーボンナノチューブの長さに影響されない可能性がある事が認められた。3D皮膚モデルを用いたナノマテリアルの経皮毒性評価系構築では、いくつかの考慮すべき点が存在するが、皮膚組織のナノ粒子侵入に対する抵抗性が認められた。A549細胞の切片担体培養系の使用可能を認めた。これらの結果は、新しい知見とともに動物代替としての新規in vitro評価系の可能性が示された。同時に、3D皮膚モデルを用いたナノマテリアルの経皮毒性評価系では、分担研究者作成のナノ粒子が使用された。非修飾/カルボキシル基修飾磁性体ナノ粒子のA549細胞への曝露実験で、網羅的遺伝子発現解析を行い、miRNA発現のクラスタリング解析から、ナノマテリアルによる特徴的なmiRNA変動、すなわちマーカーとしての可能性を認めたが、酸化鉄ナノ粒子曝露マーカーとしての解析は検討を要する点も認めた。
結論
本研究において、一次粒子径と二次粒子径の関係が細胞毒性に影響を与える事やナノ粒子の分散性に重要な分散剤の毒性を排除する製造法に新たな知見が得られた。MWCNTに対するin vivoおよび共培養システムによる遺伝毒性試験より、共培養系の妥当性およびMWCNTの長さに影響されない可能性がある事が認められた。さらに、3D皮膚モデルを用いたナノマテリアルの経皮毒性評価系構築では、いくつかの考慮すべき点が存在するが、皮膚組織のナノ粒子侵入に対する抵抗性が認められた。非修飾/カルボキシル基修飾磁性体ナノ粒子のA549細胞への曝露実験で、網羅的遺伝子発現解析を行い、miRNAのクラスタリング解析から、ナノマテリアルによる特徴的なmiRNA変動、すなわちマーカーとしての可能性を認めたが、酸化鉄ナノ粒子曝露マーカーとしての解析は検討を要する点も認めた。A549細胞の切片担体培養系の使用可能を認めた。また、酸化鉄ナノ粒子の細胞への影響は、粒子側の修飾によるROS産生の有無のみならず、細胞側の活性酸素種に対する抵抗性との複合的関わりを明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2017-05-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

分担研究報告書
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研究成果の刊行に関する一覧表
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2017-05-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201624008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
17,160,000円
(2)補助金確定額
17,160,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 10,772,772円
人件費・謝金 810,991円
旅費 470,448円
その他 1,145,797円
間接経費 3,960,000円
合計 17,160,008円

備考

備考
預金利息として8円を計上した。

公開日・更新日

公開日
2017-05-26
更新日
-