文献情報
文献番号
201623020A
報告書区分
総括
研究課題名
採血基準の見直しに関する研究
課題番号
H27-医薬-指定-011
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
河原 和夫(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
- 中島 一格(日本赤十字社関東甲信越ブロック血液センター)
- 松崎 浩史(福岡県赤十字血液センター)
- 谷 慶彦(大阪府赤十字血液センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
3,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
赤血球製剤の有効期間を21日から30日やそれ以上に延ばした場合の安全性と製剤の使用可能性の変化、ならびに欧米諸国で既に導入されている赤血球成分献血システムの安全性を評価し、わが国の血液事業への適合性に関する検証は行い、赤血球成分採血システムの導入に関して検討する際の基礎資料を提供することも目的としている。加えてドイツの血液事業のうち、採血基準に関連する項目を調べ、わが国の血液事業の参考資料とすることも目的である。
研究方法
先行研究論文などをもとに、赤血球製剤の有効期間延長と安全性の問題をレビューした。また、赤血球製剤の有効期間の延長が、血液事業と輸血医療に及ぼす影響を調べた。なお、いずれも公表資料を用いて研究を遂行した。加えて、赤血球成分採血に関する内外の論文をレビューし、わが国での導入の可能性を検討した。加えて、平成27年の偶数月の成分献血者データを基に、わが国における赤血球成分採血システムの導入をめぐる論点を整理した。さらに、ドイツ在住の研究協力者からの情報提供により、ドイツの血液事業の詳細を明らかにし、同国とわが国との基準、規定、運営上の違いなどをまとめた。
(倫理面への配慮)
研究の実施にあたっては、東京医科歯科大学医学部研究利益相反委員会および倫理審査委員会の審査を受けている。
(倫理面への配慮)
研究の実施にあたっては、東京医科歯科大学医学部研究利益相反委員会および倫理審査委員会の審査を受けている。
結果と考察
赤血球製剤の有効期間は、以前は42日あった。その後、赤血球製剤の有効期限は、半減して21日となった。当時と比して現在では、血液製剤の安全性は飛躍的に高まった。白血球除去フィルターの導入、初流血除去などの安全対策が講じられている。そこで本研究では、赤血球製剤の有効期間を21日から30日やそれ以上に延ばした場合の安全性と供給体制の変化などについて考察した。採血後14日前後の赤血球製剤が日本赤十字社の地域血液センターから医療機関へ搬送されている実態を考えると、現時点では赤血球製剤の有効期間を21日から30日前後に延長することが望ましいと考える。次に、わが国での赤血球成分採血実施の可能性を検討した。欧米の赤血球成分採血では、800~900mL程度の血液が採取され、その中から赤血球部分を自動で分離して製剤化している。そこで、平成27年の偶数月に成分献血を行った67万5,407人の献血者(男性46万3,601人、女性21万1,806人)のデータを解析し、わが国で赤血球成分採血を行った場合の採決採血可能対象者数およびこれらの対象者の属性としての理学的所見や生化学データなどを分析し、赤血球成分採血を実施した場合の論点を整理した。また、国内外の赤血球成分採血に関する論文をレビューして、安全性やわが国で実施する場合の課題等も併せて整理した。
さらに、わが国の採血基準を考える上で、海外諸国の採血基準は大変貴重な指標となる。中でもわが国と国民性が似ており、規則、規律に厳しいドイツは、過去の歴史においてもわが国の手本とされてきた。売血を法律上容認し、高い献血率を維持しながら多くの血漿分画製剤を製造しているドイツでは、どのように基準を定め、いかなる血液事業が展開されているのだろうか。今回、ドイツ在住の研究協力者からの情報提供により、その詳細が明らかにした。
さらに、わが国の採血基準を考える上で、海外諸国の採血基準は大変貴重な指標となる。中でもわが国と国民性が似ており、規則、規律に厳しいドイツは、過去の歴史においてもわが国の手本とされてきた。売血を法律上容認し、高い献血率を維持しながら多くの血漿分画製剤を製造しているドイツでは、どのように基準を定め、いかなる血液事業が展開されているのだろうか。今回、ドイツ在住の研究協力者からの情報提供により、その詳細が明らかにした。
結論
赤血球製剤の有効期限の延長は、何らかの事情で使用できなかった赤血球製剤の転用の機会を増大させるとともに、期限切れ製剤の減少に寄与するものと考えられる。
安全性を確保しながら赤血球成分採血に関しては、男性献血者の約1/3は実施可能と考えられるが、女性では対象者がほとんど存しない。また、わが国における赤血球成分採血システムの導入については、血液事業としての実用を考えると、全血採血の7割を占める移動採血車1台の中で4台のCCSを稼動させることには、スペース的にも電気容量的にも無理があり、現行のBag採血の利便性を凌駕するのは難しいと考えられる1)。さらに、次回献血までの間隔をどのように設定するかも論点となる。米国では安全性が検証され、すでに赤血球成分採血が行われている。この方法は、赤血球のみならず同時に血小板も採血が可能であるとともに1回の採血量を増加させることによりコストの削減も期待できる。上記の問題の解決手法の開発と併せて、赤血球成分採血の導入の経済的メリットも考慮して、より良い方向性を提示していくことが残された論点である。
安全性を確保しながら赤血球成分採血に関しては、男性献血者の約1/3は実施可能と考えられるが、女性では対象者がほとんど存しない。また、わが国における赤血球成分採血システムの導入については、血液事業としての実用を考えると、全血採血の7割を占める移動採血車1台の中で4台のCCSを稼動させることには、スペース的にも電気容量的にも無理があり、現行のBag採血の利便性を凌駕するのは難しいと考えられる1)。さらに、次回献血までの間隔をどのように設定するかも論点となる。米国では安全性が検証され、すでに赤血球成分採血が行われている。この方法は、赤血球のみならず同時に血小板も採血が可能であるとともに1回の採血量を増加させることによりコストの削減も期待できる。上記の問題の解決手法の開発と併せて、赤血球成分採血の導入の経済的メリットも考慮して、より良い方向性を提示していくことが残された論点である。
公開日・更新日
公開日
2017-06-01
更新日
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