効果的な献血推進および献血教育方策に関する研究

文献情報

文献番号
201623012A
報告書区分
総括
研究課題名
効果的な献血推進および献血教育方策に関する研究
課題番号
H27-医薬A-一般-006
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
白阪 琢磨(独立行政法人国立病院機構 大阪医療センター 臨床研究センター エイズ先端医療研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 秋田 定伯(福岡大学・医学部・教授)
  • 井上 慎吾(日本赤十字社 血液事業本部 経営企画部 次長)
  • 松田 清功(日本赤十字社 血液事業本部 経営企画部 献血推進課推進係長 )
  • 林 清孝(エフエム大阪音楽出版株式会社 代表取締役社長)
  • 河原 和夫(東京医科歯科大学政策科学 教授)
  • 田中 純子(広島大学大学院医歯薬保健学研究科 疫学・疾病制御学・教授)
  • 生島 嗣(特定非営利活動法人ぷれいす東京)
  • 大川 聡子(大阪府立大学 地域保健学域看護学類)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
4,400,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 研究分担者 秋田 定伯 長崎大学(平成28年4月1日~28年9月30日)→福岡大学(平成28年10月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
 我が国は、少子高齢化による人口動態、疾病構造の変化、臓器移植の推進などにより献血液の需要が一段と高まると予測される。他方、若者の献血離れが指摘され、将来の高まる需要に見合った献血の確保は極めて重要である。我々が行った将来推計でも需要に対する供給は大きく不足すると予測された。また、昨今、問題となったHIV感染事例を考えれば、安全な献血液の確保のための方策の強化も必要である。すなわち、需要に見合った安全な献血液の確保のために有効な献血推進策の実施が今後も必要と考えられる。本研究では限られた資源で有効な普及啓発方法を明らかにし、安全な血液についてハイリスク層の実態を把握し有効な対策を提示、若年層の献血液の確保のため献血教育についても検討を行う。さらに海外で我が国に実状が類似した国の献血推進策を調査し我が国の献血推進に役立てる。
研究方法
 次の4つの研究として、1)効果的普及啓発方法に関する研究、2)献血教育研究、3)安全な献血に関する情報提供方法の研究、4)海外の実態調査に関する研究を中心に取り組んだ。
結果と考察
結果
研究1. 効果的普及啓発方法に関する研究では、インターネットを用いて、献血に関する種々の啓発活動の認知度や献血の意識調査結果を分析し、献血推進に繋がる要素の抽出を試みた。研究2. 献血教育研究では、近年の献血推進策により若年層の人口あたり献血者数の低下傾向は何とか阻止できているかにも見えるが、献血教育も含めた新たな取組も必要と考えられる。複数の地域での若者を対象とした献血に関する意識調査を行い、献血推進支援モデルを計画する。研究3. 安全な献血に関する情報提供方法の研究では、献血の安全対策は提供された献血液についての血液媒介感染等の検査技術の改良と検査体制の充実が必要ではあるが、献血者のウインドウ期の問題は完全には避け得ないのが現状と言わざるを得ない。献血時の問診に加え、献血者の安全な献血についての事前の理解と認識が重要と考え、ハイリスク層を対象とした実態の把握と、安全な血液についての情報の伝達方法につき検討を進めた。研究4. 海外の実態調査に関する研究では、今年度は国情が日本に類似した国を選択して、研究対象国の高齢化などの社会的課題、それと対峙する血液事業の現況、献血推進方策や献血教育、社会において血液事業の認知度を上げるための対策などを調査した。これらの研究から、我が国の献血事業の推進に寄与するための最適な解決策を検討した。なお、いずれの研究も日本赤十字社と協力体制を築いて行った。
考察 
 以前の研究から、献血推進プロジェクトLove in Actionは実施月で0.8%の増加をもたらしていたが、将来予測からは特に若年層を中心とした献血行動の推進が必要と考える。そのために、今回分析したインターネット全国調査の結果を十分検討し、献血推進施策の立案が重要である。献血推進には献血の認知率を高める必要性はあるが、献血行動を後押しする啓発、啓発資材の開発も有効である事を意味していると考えた。同調査から、献血に行って献血できなかった者が少なからずおり、MSW向けのアンケート調査結果と合わせ、献血者が献血前に献血の制限項目内容について、ある程度知っておけば効率良く献血できた可能性もあり、周知が必要と考えた。若年者に向けた献血推進方策として日本赤十字社の学生献血推進ボランティア組織の自主的活動と大学生への献血教育の推進は、献血セミナーの実施と共に若者の献血推進が期待できると考えられた。長崎大学や大阪府の大学の学生を対象としたアンケート調査からは、献血を敬遠するとか、家族に勧めないという傾向が一定の割合で示され、その理由を明らかにする事は献血推進に役立つと考えられる。献血推進の新しい手法としてマルチメディア放送による地域密着型の広報(V-Low)i-dioの導入実現についても、さらに検討を進めたい。海外の献血推進の情報については、ドイツ連邦を現地調査し、有益な情報を得た。2年間の献血本数の詳細な解析から、ある年齢層の世代(コホート)が献血推進に大きく貢献している可能性が示され、この解析結果は今後の献血の推定あるいは献血推進戦略にとっても重要な所見と考える。MSMを対象とした献血行動に関するウェブ調査の結果では、「生涯でHIV検査の代わりに献血をした」と回答者は4.5%であり、多くは献血の動機が社会貢献であった。また、集団献血が比較的多いことと、献血に関する制限事項などの周知が必要と考える。
結論
 今年度は献血推進と献血教育方策に関する研究を実施し、多くの知見を得た。次年度はさらに研究を深め、必要であれば提言を纏めたい。

公開日・更新日

公開日
2017-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-06-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201623012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,500,000円
(2)補助金確定額
4,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 421,906円
人件費・謝金 1,036,425円
旅費 825,459円
その他 2,116,210円
間接経費 100,000円
合計 4,500,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2017-11-15
更新日
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