血液製剤及び献血血の安全性確保と安定供給の維持のための新興・再興感染症に関する総合的研究

文献情報

文献番号
201623006A
報告書区分
総括
研究課題名
血液製剤及び献血血の安全性確保と安定供給の維持のための新興・再興感染症に関する総合的研究
課題番号
H26-医薬A-一般-002
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
倉根 一郎(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 横山 直明(帯広畜産大学 原虫病研究センター)
  • 沢辺 京子(国立感染症研究所 昆虫医科学部 )
  • 平 力造(日本赤十字社 血液事業本部 )
  • 岡田 義昭(埼玉医科大学 医学部)
  • 高崎 智彦(神奈川県衛生研究所 所長)
  • 大隈 和 (国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、ヒトや物の国際間の頻繁な移動によって感染症が拡大し、これまで日本には存在しなかった病原体が国内に持ち込まれる可能性がある。国内でデング熱等が流行した場合、献血血の安全性確保のためスクリーニング法の導入が必要となる。ベクターとなる蚊に関しては行動範囲等の生態の解明が対策のための科学的基盤の一つとなる。シャーガス病は南米で流行する慢性の感染症であり、リーシュマニア症は、地中海沿岸やインド、南米に存在する。当地からの旅行者や当地での長期滞在者により日本に持ち込まれる可能性がある。バベシア症については検査法の確立を進める必要が生じている。本研究は、これらの病原体に関して、検査法開発や媒介ベクターの生態の解明によって、血液製剤及び献血血の安全性確保と安定供給に貢献することを目的とした。
研究方法
献血血の安全性確保と安定供給のため、シャーガス病、リーシュマニア症、バベシア症、デングウイルス、ウエストナイルウイルス等の蚊媒介性ウイルス感染症、を対象として検査・スクリーニン グ法等の開発、さらに媒介ベクターに関する研究を行った。
結果と考察
シャーガス病については、シャーガス病にリスクがあると考えられた日本の献血者におけるT. cruzi抗体陽性率は、3/18,487 (0.016%)であった検査可能であった受血者5名は、T.cruziの感染は認められなかった。リーシュマニア症については、マクロファージ様細胞に分化させたTHP−1細胞や肝癌細胞株に鞭毛型リーシュマニアを感染させ無鞭毛型原虫を得た。この培養液をTHP−1細胞や胚細胞癌株に添加し評価したが、コントロールと比較して有意な感染価は得られなかった。バベシア症に関して、イムノクロマト法および迅速な遺伝子増幅法であるLAMP法について検討を行った。その結果、米国の流行地のヒト血清60例のうち、33例がELISAとICTで陽性と判定され、両診断法に高い相関が示された。また、米国の流行地で得られたヒトDNAサンプルを用いたLAMPでPCRとほぼ同様の陽性結果が得られた。ウエストナイルウイルスの検査体制について血液事業情報システムの運用も含めたシミュレーションと対応マニュアル案について輸血用血液製剤の安全性を担保するために検査が必要な状況下における検体搬送、プール検体の作製及び検査の実施にかかるWNV検査マニュアル(案)を策定した。ジカウイルス/デングウイルス/チクングニアウイルスのマルチプレックス遺伝子検出法に関して評価した。デングウイルス1~4型、チクングニアウイルスは検出された。HTLV-1/2高感度Multiplex qPCR法を確立した。献血血液などの抗体スクリーニング検査の確定診断に適している。ウイルス媒介蚊について、アカイエカはすべての温度条件でコガタアカイエカよりも有位に長命であった。ヒトスジシマカの乾燥卵は,4℃および20℃では4ヵ月は生存し、羽化し得ることが明らかになった。羽化率は4℃>20℃>25℃の順に高かったが、25℃では4ヵ月後に羽化成虫は全く得られなかった。
結論
本研究班では研究代表者とウイルス、衛生昆虫、寄生虫、血液製剤の専門家である7名の研究分担者が参加し、それぞれの専門分野を有機的に結合させた形で共同研究を行なった。献血血の安全性確保と安定供給のため、シャーガス病、リーシュマニア症、バベシア症、HTLV-2および蚊媒介性ウイルスを対象として検査法・スクリーニング法等の開発、媒介蚊に関する研究を行った。
輸血関連病原原体に関して、検査法開発や検査情報を科学的知見から検討することによって献血血の安全性確保と安定供給に寄与する科学的基盤が進展した。

公開日・更新日

公開日
2017-06-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-06-01
更新日
2017-06-02

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201623006B
報告書区分
総合
研究課題名
血液製剤及び献血血の安全性確保と安定供給の維持のための新興・再興感染症に関する総合的研究
課題番号
H26-医薬A-一般-002
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
倉根 一郎(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 横山 直明 (帯広畜産大学 原虫病研究センター)
  • 沢辺 京子(国立感染症研究所 昆虫医科学部)
  • 五十嵐 滋(日本赤十字社 血液事業本部)
  • 平 力造(日本赤十字社 血液事業本部)
  • 岡田 義昭(埼玉医科大学 医学部)
  • 高崎 智彦(神奈川県衛生研究所)
  • 大隈 和(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、ヒトや物の国際間の頻繁な移動によって感染症が拡大し、これまで日本には存在しなかった病原体が国内に持ち込まれる可能性がある。国内でデング熱等が流行した場合、献血血の安全性確保のためスクリーニング法の導入が必要となる。ベクターとなる蚊に関しては行動範囲等の生態の解明が対策のための科学的基盤の一つとなる。シャーガス病は南米で流行する慢性の感染症であり、リーシュマニア症は、地中海沿岸やインド、南米に存在する。当地からの旅行者や当地での長期滞在者により日本に持ち込まれる可能性がある。バベシア症については検査法の確立を進める必要が生じている。本研究は、これらの病原体に関して、検査法開発や媒介ベクターの生態の解明によって、血液製剤及び献血血の安全性確保と安定供給に貢献することを目的とした。
研究方法
献血血の安全性確保と安定供給のため、シャーガス病、リーシュマニア症、バベシア症、デングウイルス、ウエストナイルウイルス等の蚊媒介性ウイルス感染症、を対象として検査・スクリーニン グ法等の開発、さらに媒介ベクターに関する研究を行った。
結果と考察
シャーガス病については、シャーガス病に関する検査法の評価をしつつキャリアの状態を把握した。輸血用血液製剤製造工程および各輸血用血液製剤保存条件下中におけるT. cruzi原虫の動態、及び、日本の献血者におけるT. cruzi抗体陽性率を把握した。リーシュマニア症については、リーシュマニアの生存率を解析した。4℃、3週間保存で約2Log感染価が低下した。一方、-20℃では,生存は確認できなかった。白血球除去フィルターは、ヒト血中に存在するリーシュマニア感染細胞を除去するために非常に有効であることが示された。バベシア感染に対する血清及び遺伝子診断法の開発と標準化、血液スクリーニング法の標準化を目的とした。イムノクロマト法(ICT)により、日本でおよびアメリカの流行地の患者血清から抗体検出が可能であった。また、LAMP法も、ヒトDNAサンプルを用いた研究でPCRとほぼ同様の陽性結果が得られた。ウエストナイルウイルスの検査体制に関して、PANTHERシステムによるWNV用検査試薬は、感度、特異性ともに、e-SASシステム(以前の導入システム)と比較して同等以上であり、同システムを活用したWNV-NAT検査体制を構築した。蚊媒介性ウイルス検査法については、日本脳炎ウイルス遺伝子Ⅰ~Ⅴ型に対応し、かつウエストナイルウイルスにも対応できるTaqMan系を開発した。また、原料血漿や血液製剤などに微量に混入した病原体を高感度に検出できる方法として、マルチプレックスPCR法を用いたデングウイルスおよびHTLV-2の新規高感度検出系を確立したウイルス媒介蚊について、アカイエカはコガタアカイエカよりも有位に長命であった。ヒトスジシマカの乾燥卵は,4℃および20℃では4ヵ月は生存し、羽化し得ることが明らかになった。また、ヒトスジシマカの飛翔能力を明らかにした。
結論
本研究班では研究代表者とウイルス、衛生昆虫、寄生虫、血液製剤の専門家である7名の研究分担者が参加し、それぞれの専門分野を有機的に結合させた形で共同研究を行なった。献血血の安全性確保と安定供給のため、シャーガス病、リーシュマニア症、バベシア症、HTLV-2および蚊媒介性ウイルスを対象として検査法・スクリーニング法等の開発、媒介蚊に関する研究を行った。
輸血関連病原原体に関して、検査法開発や検査情報を科学的知見から検討することによって献血血の安全性確保と安定供給に寄与する科学的基盤が進展した。

公開日・更新日

公開日
2017-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-06-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201623006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
これまで日本に存在しなかった病原体の国内への侵入や、国内に存在しても大きな問題とされなかった病原体等による、輸血を介した感染が問題となる。現在わが国においては献血血についてこれらの病原体の検査はなされていないが、これらの病原体による感染症が国内で発生した場合に備え、輸血用血液や血液製剤の安全性確保と安定供給のための検査法の開発と標準化、血液スクリーニング法の標準化がなされた。患者診断のみでなく、献血血液や血液製剤の安全性確保に大きな意義を有する。
臨床的観点からの成果
これまで日本に存在しなかった病原体の国内への侵入や、国内に存在しても大きな問題とされなかった病原体等による感染症は、臨床的な診断が困難であり、確定診断には病原体検査が必須である。一方、これらの感染症の検査法は、確立されていないものが多く、又確立されていても普及していない。今回確立した検査法は、このような感染症の確定診断に有用であり、臨床的にも大きな意義を有する。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
新たな蚊媒介性病原体による感染症が国内で発生した場合、地域的な献血制限を考慮すべき状況も発生すると考えられるが、これらの地域は媒介する蚊の種類や季節によって考え方が異なる。従って、本研究度データは媒介蚊の生態を把握することが献血制限区域等を考える上で必須な情報となる。
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
6件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
1件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

特許の名称
デングウイルス検出用プライマー対、デングウイルス検出用プローブ及びデングウイルス検出用キット
詳細情報
分類:
特許番号: 特願2015-215906
発明者名: 手塚 健太、倉光 球、大隈 和、浜口 功、高崎 智彦
出願年月日: 20151102
国内外の別: 国内

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Munkhjargal T, Yokoyama N, Igarashi I.
Recombinant methionine aminopeptidase protein of Babesia microti: immunobiochemical characterization as a vaccine candidate against human babesiosis.
Parasitol Res. , 115 (9) , 3669-3676  (2016)
原著論文2
Munkhjargal T, Yokoyama N, Igarashi I, et al.
Molecular and biochemical characterization of methionine aminopeptidase of Babesia bovis as a potent drug target.
Vet Parasitol. , 221 , 14-23  (2016)
原著論文3
Munkhjargal T, Yokoyama N, Igarashi I, et al.
Identification and characterization of profilin antigen among Babesia species as a common vaccine candidate against babesiosis.
Exp Parasitol. , 166 , 29-36  (2016)
原著論文4
Tezuka K, Okuma K, Kurane I, et al.
Development of a novel dengue virus serotype-specific multiplex real-time reverse transcription-polymerase chain reaction assay for blood screening.
Transfusion , 56 (12) , 3094-3100  (2016)
原著論文5
Tuvshintulga B, Sivakumar T, Yokoyama N, et al.
The PCR detection and phylogenetic characterization of Babesia microti in questing ticks in Mongolia.
Parasitol Int. , 64 (6) , 527-532  (2015)
原著論文6
Terkawi MA, Yokoyama N, Xuan X, et al.
Macrophages are the determinant of resistance to and outcome of nonlethal Babesia microti infection in mice.
Infect Immun. , 83 (1) , 8-16  (2015)

公開日・更新日

公開日
2017-06-01
更新日
2021-05-28

収支報告書

文献番号
201623006Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,000,000円
(2)補助金確定額
4,996,000円
差引額 [(1)-(2)]
4,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,494,529円
人件費・謝金 696,400円
旅費 214,939円
その他 590,532円
間接経費 0円
合計 4,996,400円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-