食品関連製品に含有されるナノ素材の経口動態・ハザード情報の集積と、新規物性・品質解析手法に関する研究

文献情報

文献番号
201622040A
報告書区分
総括
研究課題名
食品関連製品に含有されるナノ素材の経口動態・ハザード情報の集積と、新規物性・品質解析手法に関する研究
課題番号
H28-食品-若手-014
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
東阪 和馬(大阪大学 大学院薬学研究科 毒性学分野)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
2,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年の食と健康に関する研究の進展により、健康の維持・増進や生活習慣病の予防に役立つ新たな素材や成分が次々と開発されている。従って、食の安全・安心に対する希求は増しており、食品に使用される新素材・新成分についても同様に、安全性の確保が喫緊の課題となっている。一方で昨今、ナノ素材(NM:粒子径100 nm以下)をはじめとした、21世紀テクノロジーを活用した新素材の利用が食品業界においても急速に進行している。しかし、食品関連製品に含有されるNMにおいては、経口摂取時のハザード情報すら少ないうえ、その動態情報、とりわけ、蓄積性や排泄性に関しては殆ど理解されておらず、世界的に観ても、リスク解析の必要性を検証することすらできていないのが現状である。さらに、NMの動態特性とその後の安全性を運命付ける、存在様式(粒子径・分散/凝集状態等)を分析・理解するための解析手法も確立されていない。そこで本研究では、種々物性の食品関連製品に含有されるNM(ナノ銀・ナノ白金等)を用い、①食品関連製品に含有されるNMの経口動態・ハザード情報の収集を図ると共に、②既存のNMの定量法を応用・改変することで、NMの経口曝露後の存在量・存在様式を同時解析するための技術基盤の構築を試みた。
研究方法
食品分野において汎用されているナノ銀粒子、ナノ白金粒子をモデル粒子として用い、①ナノ白金粒子を経口曝露した際の動態解析、および、②単回投与による一般毒性に関するハザード解析を試みた。また、③ナノ銀粒子の物性・品質解析法の開発に向けた、血液・組織中における存在量と存在様式を同時に評価し得る方法の構築に向けた基礎情報の収集を図った。
結果と考察
平成28年度研究では、ナノ白金粒子を経口曝露した際の動態情報について、①単回経口曝露したナノ白金粒子(5 nm、30 nm、70 nm)が、いずれも腸管バリアを通過し、体内に吸収され得ること、②その移行量の増加は、投与後8時間がピークであると共に、③ナノ白金粒子の粒子径が小さいほど、血中移行率が上昇することを明らかとした。また、④静脈内投与後のナノ白金粒子は、いずれの臓器(脳、肺、心臓、肝臓、脾臓、腎臓、精巣)にも分布し、その移行量は用量依存的に増加し得ることを示した。さらに、ハザード情報に関しては、単回経口曝露したナノ白金粒子について、⑤いずれの粒子投与群においても、対照群と比較し、各種血球細胞数(白血球、赤血球、血小板、リンパ球、単球、顆粒球)に有意な変動は認められなかった。また、血液生化学検査の結果、血中肝障害マーカー(ALT、AST、CHE)、腎障害マーカー(BUN)、膵障害マーカー(AMYL)、胆障害マーカー(LAP)量に群間で有意な変動は認められなかった。従って、本投与条件においては、ナノ白金粒子の経口曝露による血液成分への影響は殆ど認められないことが示唆された。次に、血液中での各粒子の存在量と存在様式を同時に評価し得る基盤技術の構築に向けては、現在保有の機器の検出感度において、本研究に用いたナノ銀粒子では、粒子径50 nmから100 nmにおいて粒度分布を得ることができ、平均粒子径と粒子濃度を同時に測定できることを示した。従って、⑥TMAH処置により、血中夾雑物の影響を受けず、量的には添加量相当、かつ質的には添加粒径にほぼ等しい銀ナノ粒子を検出することができることが示唆された。
結論
近年、食品汚染による深刻な健康被害が問題視され、国民の「食の安全・安心」に対する希求は増すばかりである。従って、健康立国・技術立国である我が国から発信される食品関連製品については、高度に安全性が保障されたものでなければならない。しかし現状では、食品関連製品に含有されるNMについて、品質を評価・管理し、安全に製造・使用していくための規制は整備されていない。この点で、本研究により得られる、NMの経口動態・ハザード情報は、今後のリスク解析の是非を議論するうえで重要な知見となり得るものである。さらに、NMの動態特性とその後の安全性を運命付ける、NMの粒子径・分散/凝集状態等といった、物性・品質の解析を可能にする評価基盤の構築は、安全性を高度に担保可能な物性・品質を見出すことにつながると共に、食品関連製品に含有されるNMの品質評価・確保、安全性評価手法などに関するレギュレーション策定に資する情報を提供し得るものと考えている。即ち、本研究成果は将来的に、食品全般に含有されるNMの社会受容や恩恵享受を促進し、新技術を活用した安全で豊かな食社会の構築に貢献するものである。さらに、市民講座などでのリスクコミュニケーションにより、行政機関や食品事業者は勿論のこと、一般社会を対象とした、NMの安全・安心の確保、納得にもつながることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2017-11-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201622040Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,000,000円
(2)補助金確定額
3,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,668,691円
人件費・謝金 0円
旅費 301,340円
その他 337,969円
間接経費 692,000円
合計 3,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2017-11-28
更新日
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