発芽前後におけるGMダイズの遺伝子発現プロファイリングに関する基盤研究

文献情報

文献番号
201622038A
報告書区分
総括
研究課題名
発芽前後におけるGMダイズの遺伝子発現プロファイリングに関する基盤研究
課題番号
H27-食品-若手-023
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
中村 公亮(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ダイズが発芽する際に発現誘導される遺伝子(発芽遺伝子)について、転写、及び、翻訳レベルで全ゲノム上の遺伝子を網羅し解析する方法を開発し、遺伝子組換え(GM)ダイズと非GMダイズの構成成分の変化等を比較する際の有用性について検証を行うことを目的とする。
研究方法
試験には、非GMダイズ2品種(国内で流通しているアメリカ産 GL3494品種とカナダ産 OAC Kent品種)、Jack品種、Williams品種、及び、Green Fluorescent Protein(GFP)とダイズ由来SYNC1を発現するよう組換えたWilliams品種(GMダイズ)の5品種を供した。発芽ダイズ生産の発芽条件(40℃)下で48時間培養し発芽させたダイズ5品種より、粒単位でmRNAを抽出・精製し、合成したcDNAは、イルミナHiSeq2500を用いてRNA-Seqを行った。得られたデータは、edgeRソフトウェアを使用して2群の比較検定を行った。個々の遺伝子発現についてはABI7900HTリアルタイムPCRシステムを使用し定量した。発芽ダイズのプロテオーム解析は、LC-MS/MSを用いて行った。
結果と考察
発芽ダイズ1粒からトータルRNAを抽出精製し、RNA-Seqへ実用可能な試料調製法を開発した。種子間で変動が見られる発芽遺伝子の発現量差は、edgeRソフトウェアで算出した場合、約600倍以下で検出されることが判った。転写レベルにおける発芽遺伝子発現パターンは、品種間で異なることが示唆された。また、本研究で得られた発芽遺伝子に関するRNA-SeqデータとRT-PCRのデータは、合致した。GMダイズと非GMダイズの発芽遺伝子を定量的に比較する場合、遺伝子発現量差の閾値(edgeR算出値>600倍)を設定し、それ以上の差のある遺伝子については、個々にRT-PCR法等を用いて精査する必要があった。RNA-Seqについては、スプライシングバリアントや、ダイズのアノテーション情報の不完全性から、RNA-Seqを使用し全ゲノムを網羅した遺伝子の発現量の定量は、現時点では不可能であると考えられた。よって、RNA-Seqは、発芽遺伝子の「スクリーニング」目的の用途として適している方法と考えられた。また、RNA-Seqより得られるデータは、遺伝子のスプライシング位置を、ゲノム配列上で特定することが可能であったことから、RNA-Seqは、発芽遺伝子を定量的に解析する際のRT-PCR用プライマーを設計する有効なツールであることが示唆された。RNA-SeqとLC-MS/MSにて検出された発現量差のある発芽遺伝子群の相関性は確認されなかった。これは、転写レベルと翻訳レベルでの発芽遺伝子のプロセッシングの違い、又は、発芽ダイズ中に存在するタンパク質を検出する機器等の性能の違いを示唆した。
結論
RNA-Seqは、各発芽遺伝子の発現量や発芽遺伝子の特定をスクリーニングするための有効なツールであることが示唆された。しかし、発芽ダイズのRNA-Seqを行う場合は、同じ品種間で発芽時の環境を揃える必要があり、発現量の再現性比較のため、1サンプルにつき2粒以上からトータルRNAを抽出精製し分析する必要があった。発現量の確実な定量値の算出に関しては、各遺伝子に特異的なRT-PCRを行う必要があった。RNA-Seqを用いたトランスクリプトームデータとLC-MS/MSを用いたプロテオームデータの、定性・定量的な相関性は確認されなかった。これは、転写レベルと翻訳レベルの発芽遺伝子のプロセッシングの違い、又は、発芽ダイズ中に存在するタンパク質を検出する機器等の性能の違いを示唆した。

公開日・更新日

公開日
2017-11-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201622038B
報告書区分
総合
研究課題名
発芽前後におけるGMダイズの遺伝子発現プロファイリングに関する基盤研究
課題番号
H27-食品-若手-023
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
中村 公亮(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ダイズが発芽する際に発現誘導される遺伝子(発芽遺伝子)について、転写、及び、翻訳レベルで全ゲノム上の遺伝子を網羅し解析する方法を開発し、遺伝子組換え(GM)ダイズと非GMダイズの構成成分の変化等を比較する際の有用性について検証を行うことを目的とする。
研究方法
試験には、非GMダイズ2品種(国内で流通しているアメリカ産 GL3494品種とカナダ産 OAC Kent品種)、Jack品種、Williams品種、及び、Green Fluorescent Protein(GFP)とダイズ由来SYNC1を発現するよう組換えたWilliams品種(GMダイズ)の5品種を供した。発芽ダイズのRNA-Seqライブラリーは、イルミナHiSeq2500を用いてシークエンス解析を行った。得られたデータは、ダイズゲノムデータ(V1.0.29)へマッピングし、発現差解析には、edgeRソフトウェアを使用した。発芽遺伝子は、既知のアレルゲンとの比較(相同性検索)をデータベース上で行った。すなわち、80以上のアミノ酸残基で35%以上の相同性、及び、6~8アミノ酸残基の完全一致の条件で検索した。RNA-Seq解析より得られたデータを基に、個々の遺伝子発現についてはABI7900HTリアルタイムPCRシステムを使用し定量した。リファレンス遺伝子の発現解析には、ダイズ由来内在性遺伝子Actinの発現を検知するプライマー対を使用した。プロテオーム解析は、LC-MS/MSを用いて行った。各試料から得られたLC-MS/MS のデータをNonlinear Dynamics社のProgenesis QI for proteomics(ver. 2.0)に入力し、各検出ピークの強度値を取得した。続いて、ペプチドの同定情報を各検出ピークに連結し、連結された検出ピークの強度を当該ペプチドの検出強度とした。また、タンパク質の計量値は、各タンパク質に帰属するユニークペプチドの検出強度の積算値とした。有意なペプチド同定は、False discovery rate(FDR)を指標にして選定した。すなわち、FDRが1%になるようにペプチド同定のスコア閾値を調整した。
結果と考察
本研究結果より、RNA-Seqは、ダイズの発芽遺伝子の特定と発現量をスクリーニングする有効なツールであることが示唆された。しかし、発芽ダイズのRNA-Seqを行う場合は、同じ品種間で発芽時の環境を揃えた発芽ダイズを用意する必要があり、発現量の統計的な処理のため、1サンプルにつき2粒以上からトータルRNAを抽出精製し、分析する必要があった。発現量の確実な定量値の算出に関しては、各遺伝子に特異的なRT-PCRを行う必要があった。発芽遺伝子から発現すると予想されるタンパク質のアミノ酸配列は、アレルゲンデータベースと照合し、既知アレルゲンとの相同性検索に使用する事が可能であった。また、ダイズの未発表の発芽遺伝子を複数特定し、発現するタンパク質のアミノ酸配列予測を行うことができた。なお、RNA-Seqを用いたトランスクリプトームデータとLC-MS/MSを用いたプロテオームデータを比較した場合、遺伝子発現の定性・定量的な相関性は確認されなかった。
結論
RNA-Seqは、各発芽遺伝子の発現量や発芽遺伝子の特定をスクリーニングする方法として有効なツールの一つであることが確認された。しかし、発芽ダイズのRNA-Seqを行う場合は、同じ品種間で発芽時の環境を揃える必要があり、発現量の再現性の検証、及び、統計学的なデータの処理のため、1サンプルにつき2粒以上からトータルRNAを抽出精製し分析する必要があった。発現量の確実な定量値の算出に関しては、各遺伝子に特異的なRT-PCRを行う必要があった。発芽遺伝子から発現すると予想されるタンパク質のアミノ酸配列は、アレルゲンデータベースなどのデータと照合し、既知アレルゲンとの相同性検索に使用する事が可能であった。また、ダイズの未知の発芽遺伝子を複数特定し、発現するタンパク質のアミノ酸配列予測を行うことができた。RNA-Seqを用いたトランスクリプトームデータとLC-MS/MSを用いたプロテオームデータの、定性・定量的な相関性は確認されなかった。これは、転写レベルと翻訳レベルの発芽遺伝子のプロセッシングの違い、又は、発芽ダイズ中に存在するタンパク質を検出する機器等の性能の違いを示唆した。

公開日・更新日

公開日
2017-11-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201622038C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ダイズが発芽する際に発現誘導される遺伝子(発芽遺伝子)について、転写、及び、翻訳レベルで全ゲノム上の遺伝子を網羅し解析する方法を開発した。
臨床的観点からの成果
ダイズの発芽遺伝子について、タンパク質のアミノ酸配列を予測し、既知アレルゲンとの相同性検索を行う方法を開発した。
ガイドライン等の開発
発芽遺伝子組換え(GM)ダイズと発芽非GMダイズの構成成分の変化等を比較する方法を開発した。ダイズの発芽遺伝子について、転写、及び、翻訳レベルで全ゲノム上の遺伝子を網羅し解析する方法を開発した。
その他行政的観点からの成果
発芽GMダイズ食品の安全性審査資料に必要なデータの作成方法を開発した。
その他のインパクト
開発した発芽ダイズのRNA-Seq解析法のプロトコルは、インターネットホームページ上にて公開。次世代シークエンスからの出力データは、DDBJ Sequence Read Archiveへ登録。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
21件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
1件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

特許の名称
遺伝子組換え植物の判定法
詳細情報
分類:
特許番号: 特開2016-019480
発明者名: 中村公亮、小林友子、近藤一成
権利者名: 中村公亮、小林友子、近藤一成
出願年月日: 20140714
取得年月日: 20160204
国内外の別: 国内

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nakamura, K., Kondo, K., Akiyama, H., et al.
Interlaboratory validation data on real-time polymerase chain reaction detection for unauthorized genetically modified papaya line PRSV-YK
Data in Brief , 7 , 1165-1170  (2016)
原著論文2
Nakamura, K., Kondo, K., Akiyama, H., et al.
Whole genome sequence analysis of unidentified genetically modified papaya for development of a specific detection method
Food Chemistry , 205 , 272-279  (2016)

公開日・更新日

公開日
2017-11-28
更新日
2020-10-02

収支報告書

文献番号
201622038Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,750,000円
(2)補助金確定額
8,750,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,833,344円
人件費・謝金 1,170,936円
旅費 613,546円
その他 2,115,747円
間接経費 0円
合計 8,733,573円

備考

備考
差異は、消耗品の購入の際に生じた意図しないもの。

公開日・更新日

公開日
2017-11-28
更新日
-