畜産食品の生物学的ハザードとその低減手法に関する研究

文献情報

文献番号
201622023A
報告書区分
総括
研究課題名
畜産食品の生物学的ハザードとその低減手法に関する研究
課題番号
H28-食品-一般-005
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 由美子(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究分担者(所属機関)
  • 等々力節子(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所)
  • 朝倉 宏(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年日本国内では、これまで生食されなかった畜産食品が生食されるなど、食文化が多様化してきている。しかしながら、畜産食品は微生物や寄生虫等による汚染を完全に防ぐことが難しく、生食或いは加熱不十分な喫食による健康被害の発生リスクは高い。畜産食品の生食による食中毒の発生を防ぐために必要な行政措置が取られてきたが、生食用の牛肝臓を安全に提供する技術を望む声も聞かれる。本研究では、牛肝臓における微生物汚染実態を明らかにすると共に、汚染細菌を低減させる非加熱殺菌法の検討を行った。
研究方法
平成28年6月~9月(夏季)及び同年12月~29年2月(冬季)に、5自治体の食肉センターでとさつ・解体された計51頭の肉用牛の肝臓表面、胆管内胆汁、肝実質(右葉、左葉各2部位)の計6部位について衛生指標菌の定量試験を行った。非加熱殺菌法は、放射線照射と高圧処理を検討した。放射線照射では、牛肝臓に2 x 10^6cfu/g のサルモネラを接種し、9.65~10.2 kGyの範囲のガンマ線を照射した。高圧については、処理前の保管温度、高圧処理時の温度及び高圧処理後の保管温度について条件を組み合わせ、300 MPa 5分間を2回反復する処理により、牛肝臓に接種したサルモネラ及び病原大腸菌の低減効果を調べた。
結果と考察
汚染実態調査では、3施設由来の計25検体については実質から腸内細菌科菌群、大腸菌群、大腸菌は検出されなかった。残り2施設のうち、1施設で冬季に採材された5検体の実質では各種指標菌は陰性であった。別の1施設由来の全15検体は、季節の別を問わずそれぞれ15検体、15検体、7検体が腸内細菌科菌群、大腸菌群、大腸菌の陽性を示した。2施設由来検体の実質内細菌汚染は、左葉に比べ右葉で高い傾向を示し、腸内細菌科菌群の最大菌数は1.5 x 10^5 cfu/gであった。一部施設由来の検体は、採材後の輸送時間が肝実質での細菌汚染動態に影響を及ぼした可能性が考えられた。3施設における胆汁中の腸内細菌科菌群陽性数は、10検体中1検体、15検体中2検体、9検体中2検体が陽性となり、最大数値は1.2 x 10^3 cfu/mLと実質に比べ低い定性・定量成績となった。放射線照射では、脱気試料は5検体中2検体、含気試料は5検体中1検体でサルモネラが非検出となったが、残りの検体ではサルモネラが検出された。先行研究で得た生残曲線に95%予測信頼区間を設けた結果を基に曝露線量を検討することは妥当と考えられた。高圧処理では、牛肝臓に接種したサルモネラは1.26~2.15 logの、病原大腸菌は1.41~2.22 logの低減を示した。サルモネラは高圧処理前に検体を‐20 ℃で保管した場合に、菌数低減効果が高くなる傾向がみられた。一方病原大腸菌では、処理前後の冷凍保管による菌数低減効果は見られなかった。高圧処理による肝臓の肉質変化は、処理圧力に比例していたが、処理前に検体を冷凍保存することにより、一部変化を軽減しうる可能性が示された。
結論
牛肝臓における細菌汚染分布状況を計5自治体の協力を得て検討した。施設や季節の別による差異が明確に認められ、その要因として、採材から供試までの輸送・保存方法あるいは胆嚢結紮の程度等が関与していると推察された。来年度以降は、更なる検体数、施設数を増やし、その要因の解明を行うと共に、衛生的取り扱いを行った際の肝臓実質内での細菌数を把握したい。
 放射線照射においては、牛肝臓に6log cfu/g のサルモネラを接種し、9.65~10.2 kGyの範囲のガンマ線を照射したところ、脱気試料は5検体中2検体、含気試料は5検体中1検体でサルモネラが非検出となったが、残りの検体ではサルモネラが検出された。先行研究で得た生残曲線に95 %予測信頼区間を設けた結果を基に線量を検討することは妥当と考えられた。
高圧処理においては、牛肝臓に人工的に添加したサルモネラ及び病原大腸菌の高圧処理及びその前後の保管温度による不活化効果を検討したところ、300 MPaで5分を2回反復する処理により、サルモネラ、病原大腸菌共に2logの菌数低減が可能であった。サルモネラでは処理前後に冷凍保存することにより、更に1logの菌数低減が可能であったが、病原大腸菌においては冷凍保存の効果は見られなかった。一方、牛肝臓の肉質についても、高圧処理前の冷凍保存により色調や硬さの変化を一部軽減しうることが示された。

公開日・更新日

公開日
2018-07-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-07-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201622023Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,000,000円
(2)補助金確定額
9,999,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 7,818,701円
人件費・謝金 1,360,041円
旅費 442,670円
その他 378,264円
間接経費 0円
合計 9,999,676円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-07-04
更新日
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