食品での新たな病原大腸菌のリスク管理に関する研究

文献情報

文献番号
201622012A
報告書区分
総括
研究課題名
食品での新たな病原大腸菌のリスク管理に関する研究
課題番号
H27-食品-一般-006
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
工藤 由起子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究分担者(所属機関)
  • 西川 禎一(大阪市立大学大学院 生活科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
8,579,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2012年に感染症報告数集計において、下痢原性大腸菌(食中毒統計の病原大腸菌)の分類が改訂された。この新たな病原大腸菌の分類は、その判定のための病原因子またはマーカーが明示され、患者から分離された大腸菌株の病原大腸菌としての同定・判定が行いやすくなった。このため、食中毒事例での原因食品や汚染食品の調査に有用な方法が必要とされる。しかし、腸管出血性大腸菌以外の病原大腸菌についての食品での検査法は、国内外ともにあまり検討されておらず、早急な確立が求められている。本研究では、特に、腸管毒素原性大腸菌(ETEC)はその病原性が明確であることから、優先して食品での検査法を確立し、国の試験法の策定に貢献する。また、検査の対象として重要と考えられるヒトの感染に関与する家畜・食品群についても、ヒトと家畜での共通の病原因子を明らかにすることによって解明したい。
研究方法
平成28年度には、分担研究(1)食品での統一的検査法の開発では、1)ETEC主要7血清群のうち未検討であったO153について増菌培養法および選択分離培地の検討した;2)本菌の病原因子であるエンテロトキシン(易熱性エンテロトキシン;LT、耐熱性エンテロトキシン; ST)の遺伝子を対象としたリアルタイムPCR法を昨年とは別法を検討した;3)ETEC主要7血清群の免疫磁気ビーズを自家調製し、食品培養液中のETEC検出における免疫磁気ビーズの感度試験を行った。分担研究(2)ヒトの感染に関与する家畜の探索では、血清群O169の菌株について、異なる宿主に対応できる定着因子を組込んだ菌株のヒト腸管上皮細胞での付着試験を行った。
結果と考察
(1)食品での統一的検査法の開発では、1)7血清群を対象として平成27年度および平成28年度に研究を行い、これら血清群は、食品からの腸管出血性大腸菌検査法と同一の増菌方法(mEC培地、42℃)で発育することが判明した;2)新たに構築した反応系によるSTおよびLT遺伝子検出を評価し、菌濃度10^3cfu以上/食品培養液mLで検出でき、平成27年度に報告したHidakaらのリアルタイムPCRの検出感度と一致する結果が得られた。また、ETECを食品1g当たりに100cfu接種し、mEC培地で42℃培養後、新リアルタイムPCRによりST遺伝子およびLT遺伝子が検出され、ETECが10^8cfu/mLまで増殖することが検量線から推定された。3)免疫磁気ビーズについては、直接塗抹法よりも検出性が優れる食品が多く、抗生物質加SMACに塗抹して37℃で培養することによって、食品培養液中のETECが約10^4 CFU/mlの濃度以上であれば、ETECを分離することが可能であることが示された。(2)ヒトの感染に関与する家畜の探索では、pEntYN10のK88-like遺伝子を含む領域を組み込んだpSV28K88-likeで形質転換されたTOP10K88-like株は、ヒト由来のHEp-2、ブタ由来のIPEC-1およびIPEC-J2に対する細胞接着性を示し、O169野生株と同様の凝集接着像を示した。ウシ由来のBIEに対する細胞接着性には病原プラスミドは関係なかった。実際に今回の組み換え実験によってK88-likeがin vitroにおけるO169の特異な接着像を創り出していることが明らかになった。3種の定着因子遺伝子を使い分けることによってO169が多様な宿主に感染する能力を得ている可能性が考えられる。
結論
腸管出血性大腸菌の食品での検査法と共通のmEC培養液を試験に用いることが可能であり、食品培養液からのSTおよびLT遺伝子を対象とした遺伝子スクリーニングの有用性であることが明らかになった。また、主要7血清群を対象とした免疫磁気ビーズを開発し、食品、特に野菜からの分離培養での分離の向上効果が認められた。加えて、腸管毒素原性大腸菌の選択性に優れる抗生物質を加えた分離培地を使用することが重要であることも示された。また、研究対象とした腸管毒素原性大腸菌O169:H41の保有するCS6、CS8-likeおよびK88-likeの3種類の腸管定着因子の、ヒト、ブタ、ウシの腸粘膜上皮細胞に対する付着性と宿主特異性を検討した結果、K88-like遺伝子で組み換えた株はヒトおよびブタの細胞に強い接着性を示し、ヒトとブタ両方への感染力を保有する可能性が示された。

公開日・更新日

公開日
2017-07-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2017-07-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201622012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,579,000円
(2)補助金確定額
8,579,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,696,483円
人件費・謝金 1,625,400円
旅費 477,878円
その他 779,239円
間接経費 0円
合計 8,579,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2017-07-04
更新日
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