文献情報
文献番号
201622006A
報告書区分
総括
研究課題名
検査機関の信頼性確保に関する研究
課題番号
H26-食品-一般-011
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 卓穂(一般財団法人食品薬品安全センター 秦野研究所 食品衛生事業部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
18,270,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
食品の安全性確保のために精度管理体制の整備や適正な精度管理用調査試料の開発とこれに付随した精度管理を実施し、食品衛生検査機関における検査成績の信頼性の確保に貢献することを目的とした。
研究方法
残留分析の測定値に与える食品成分の影響に関する研究では、LC-MS(/MS)を用い、合成抗菌剤の分析におけるマトリックス効果の顕在化と影響を及ぼす要因について検討を行った。同位体希釈質量分析法による残留農薬の高信頼性分析に関する研究では、多くの検査機関が採用しているQuEChERS法等の簡易分析法について、正確なIDMS法を基に実際に農薬が残留した試料を分析し、その抽出能力を評価した。食品衛生外部精度管理調査用適正試料の作製と信頼性確保に関する研究の理化学検査では、枝豆ペースト、玄米及び精米を基材とし4種農薬を添加し、各種保存安定性を検討した。微生物学検査では、一般細菌数測定検査用基材としてのゼラチン基材中の枯草菌芽胞液の生菌数の経時的変化を調べた。アレルギー関連物質検査では、卵のELISAキット3種の反応性と定量検査を対象にスモールスケールでの外部精度管理調査を実施した。食品中に残留するマイコトキシン分析に係る精度管理体制の構築に関する研究では、開発した固相蛍光誘導体化法について、内部精度管理を行うと共に、精度管理用の試料(香辛料,チーズ)を作製し、複数の外部検査機関に配布して分析法の外部精度管理調査を実施した。
結果と考察
残留分析の測定値に与える食品成分の影響に関する研究では、LC-MS(/MS)を用い、合成抗菌剤の分析におけるマトリックス効果の顕在化について検討を行い、抗菌剤の系統の違いにより生じるマトリックス効果が概ね逆であることを確認した。同位体希釈質量分析法による残留農薬の高信頼性分析に関する研究では、簡易分析法であるQuEChERS法やSTQ法によって認証標準物質(実農薬残留作物から調製したもの)を前処理しその処理液をIDMSによって評価することにより、これらの方法が一斉試験法と同等の抽出能力を有することを明らかにした。食品衛生外部精度管理調査用適正試料の作製と信頼性確保に関する研究のうち、理化学検査では枝豆ペーストについては、冷凍、冷蔵、繰り返し凍結融解の安定性結果から均質化するための添加剤として水10%添加が最適だった。米への添加は、米粒での添加から、粉末試料での添加に変更した。微生物学検査では、寒天基材を用いた時の生菌数のばらつきを解消するために用いたゼラチン基材は冷蔵で約7ヶ月の保存安定性が確認でき、基材として有用であることがわかり、今年度の外部精度管理調査の一般細菌数検査基材として用いた。アレルギー関連物質検査では、卵についてキットの反応性を確認し、定量検査を対象としてスモールスケールでの外部精度管理調査を実施し、おおむね良好な結果を得た。食品中に残留するマイコトキシン分析に係る精度管理体制の構築に関する研究では、開発した固相蛍光誘導体化法を用いて、外部精度管理については8検査機関にて試験を実施した。その結果,相対標準偏差は、高濃度添加試料では26%未満、低濃度添加試料では29%未満と良好であった。これらをHORRAT値で算出するとそれぞれ0.87~0.90、および0.67~0.72であり、いずれもAOAC Int.で規定したHORRAT値の許容範囲(0.5~2)内であった。したがって、本試験法の精度も良好であることが確認された。また、乳中のアフラトキシンM1分析についても、外部精度管理を実施し、精度が良好であることを確認した。
結論
LC-MS(/MS)のマトリックス効果は複雑かつ多様であり、GC-MS(/MS)とはメカニズム等が大きく異なることが示された。残留農薬のQuEChERS法にIDMSを適用し、一斉分析法と分析値がよく一致していることが確認された。また、開発した固相蛍光誘導体化法により、食品中のアフラトキシンを精度よく定量できた。さらに、理化学と微生物の検査における適正な外部精度管理調査試料の開発を進めることができた。
公開日・更新日
公開日
2017-07-04
更新日
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