文献情報
文献番号
201620037A
報告書区分
総括
研究課題名
医療の質指標に関する国内外レビュー及びより効果的な取組に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H28-医療-指定-017
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
福井 次矢(聖路加国際大学 聖路加国際病院)
研究分担者(所属機関)
- 東 尚弘(国立研究開発法人国立がん研究センター)
- 後藤 励(慶應義塾大学 経営管理研究科 慶應ビジネススクール)
- 嶋田 元(聖路加国際大学 情報システムセンター)
- 種田 憲一郎(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
- 松田 晋哉(産業医科大学 公衆衛生学教室)
- 宮田 裕章(慶應義塾大学医学部 医療政策・管理学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
5,569,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
医療の質を高いレベルに維持、あるいは改善するためには、医療の質を知ること・評価することが前提となる。わが国では、平成17年頃から、いくつかの先進的な病院・病院団体が質指標(Quality Indicator:QI)を用いた医療の質測定・公表に取り組み、厚生労働省はその動向を全国的に展開すべく、平成22年度に医療質評価・公表事業を開始した。これにより、多くの医療機関でQIの測定・公表がなされるようになったものの、全国の病院におけるQIの測定状況、医療の質改善への利用状況などのデータは欠落していた。一方、欧米先進諸国では、国家的な取り組みが広がり、QIの中でもアウトカムに関する指標の公表や患者報告アウトカム指標の活用等、新たな動きもみられる。
以上の状況を踏まえ、本研究は以下の目的で行われた。①QIの測定と公表の現状、医療の質改善との関わり、共通QIを用いることなどについて、全国の病院を対象にアンケート調査を行う。②QIをめぐる海外の最近の動向について調査する。③QIの公表と患者の受診医療機関選択との関係についてレビューする。④わが国における今後の医療の質評価・公表への取り組みについて提言する。
以上の状況を踏まえ、本研究は以下の目的で行われた。①QIの測定と公表の現状、医療の質改善との関わり、共通QIを用いることなどについて、全国の病院を対象にアンケート調査を行う。②QIをめぐる海外の最近の動向について調査する。③QIの公表と患者の受診医療機関選択との関係についてレビューする。④わが国における今後の医療の質評価・公表への取り組みについて提言する。
研究方法
1.わが国の全ての病院(8,470病院)を対象に、QIの測定・公表の現状、測定しているQI項目、医療の質改善との関わり、全病院で共通のQIを測定することなどについて質問票を用いた調査を行った。
2.外国(米国、カナダ、英国、フランス、オーストラリア)及び国際機関(OECD、WHO)における医療の質測定に係る現状を調査した。英国、オーストラリア、英国は研究分担者が訪れ、担当者と面談し、カナダ、フランスについては、インターネットを介して担当者から情報を入手した。OECD、WHOについては、報告書や議事録、インターネットを介して情報を入手した。
3.全国の病院でQIを測定する場合に用いる指標の一式(共通指標セット)は、わが国の病院団体の医療の質測定活動ですでに測定されているQIや欧米諸国で測定されているQIを参考に、研究分担者が討議を重ねて意見を集約し作成した。
2.外国(米国、カナダ、英国、フランス、オーストラリア)及び国際機関(OECD、WHO)における医療の質測定に係る現状を調査した。英国、オーストラリア、英国は研究分担者が訪れ、担当者と面談し、カナダ、フランスについては、インターネットを介して担当者から情報を入手した。OECD、WHOについては、報告書や議事録、インターネットを介して情報を入手した。
3.全国の病院でQIを測定する場合に用いる指標の一式(共通指標セット)は、わが国の病院団体の医療の質測定活動ですでに測定されているQIや欧米諸国で測定されているQIを参考に、研究分担者が討議を重ねて意見を集約し作成した。
結果と考察
全国の病院を対象に行ったアンケート調査では、9.5%にあたる805病院から回答が得られ、そのうち42%にあたる338病院でQIを用いた医療の質測定を行っていた。全回答病院の約8割の病院がQIを用いた医療の質測定・改善について好意的・積極的であり、共通QIセットを用いることについても同様であった。
海外の状況については、国によって、医療の質の評価を行う主体、対象病院はさまざまであり、フランスと英国は、医療施設の格付け(フランスではA、B、Cの3段階、英国ではOutstanding、Good、Requires improvement、Inadequiteの4段階)にも用いている。いずれの国も、医療の質の測定と各施設へのフィードバック、公表による透明性確保などが医療の質の向上に資するという証拠あるいは確信に基づいて行っていた。OECD、WHOの調査では、多くの加盟国が参加して医療の質・患者安全に関わる取り組みが進められていて、妥当性、実行可能性、改善活動可能性の視点から、質指標が提唱されている。
全国の病院でQIを測定する場合に用いる指標の一式として、妥当性や測定可能性、領域分布などに配慮して、下記の23種類を提言した。①入院患者満足度 ②外来患者満足度 ③職員満足度 ④転倒・転落発生率 ⑤インシデント・アクシデント発生率 ⑥褥瘡発生率 ⑦中心静脈カテーテル挿入時の気胸発生率 ⑧キャンサーボードの開催 ⑨麻薬処方患者における痛みの程度の記載 ⑩急性心筋梗塞患者におけるアスピリン投与 ⑪Door-to-Balloon ⑫早期リハビリテーション ⑬誤嚥性肺炎患者に対する喉頭ファイバースコピーあるいは嚥下造影検査の実施率 ⑭血糖コントロール ⑮予防的抗菌薬の投与 ⑯服薬指導 ⑰栄養指導 ⑱手術患者での肺血栓塞栓症予防・発生率 ⑲30日以内の予定外再入院率 ⑳職員の予防接種率 ㉑高齢者における事前指示 ㉒広域抗菌薬使用時の血液培養 ㉓地域連携パスの使用率。
海外の状況については、国によって、医療の質の評価を行う主体、対象病院はさまざまであり、フランスと英国は、医療施設の格付け(フランスではA、B、Cの3段階、英国ではOutstanding、Good、Requires improvement、Inadequiteの4段階)にも用いている。いずれの国も、医療の質の測定と各施設へのフィードバック、公表による透明性確保などが医療の質の向上に資するという証拠あるいは確信に基づいて行っていた。OECD、WHOの調査では、多くの加盟国が参加して医療の質・患者安全に関わる取り組みが進められていて、妥当性、実行可能性、改善活動可能性の視点から、質指標が提唱されている。
全国の病院でQIを測定する場合に用いる指標の一式として、妥当性や測定可能性、領域分布などに配慮して、下記の23種類を提言した。①入院患者満足度 ②外来患者満足度 ③職員満足度 ④転倒・転落発生率 ⑤インシデント・アクシデント発生率 ⑥褥瘡発生率 ⑦中心静脈カテーテル挿入時の気胸発生率 ⑧キャンサーボードの開催 ⑨麻薬処方患者における痛みの程度の記載 ⑩急性心筋梗塞患者におけるアスピリン投与 ⑪Door-to-Balloon ⑫早期リハビリテーション ⑬誤嚥性肺炎患者に対する喉頭ファイバースコピーあるいは嚥下造影検査の実施率 ⑭血糖コントロール ⑮予防的抗菌薬の投与 ⑯服薬指導 ⑰栄養指導 ⑱手術患者での肺血栓塞栓症予防・発生率 ⑲30日以内の予定外再入院率 ⑳職員の予防接種率 ㉑高齢者における事前指示 ㉒広域抗菌薬使用時の血液培養 ㉓地域連携パスの使用率。
結論
わが国においても、欧米諸国のように、全国共通QIセット用いて全国的なベンチマーキングを行いながら、効果的に質向上を目指す素地はできているものと考えられ、本研究で作成した共通QIセットを用いた医療の質測定・改善の段階に移行することが妥当と考えられる。
公開日・更新日
公開日
2017-09-11
更新日
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