医療安全支援センターにおける業務の評価及び質の向上に関する研究

文献情報

文献番号
201620012A
報告書区分
総括
研究課題名
医療安全支援センターにおける業務の評価及び質の向上に関する研究
課題番号
H28-医療-一般-003
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
児玉 安司(東京大学 大学院医学系研究科医療安全管理学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 安樂 真樹(東京大学 大学院医学系研究科医療安全管理学講座)
  • 後 信(九州大学病院 医療安全管理部)
  • 小林 美雪(健康科学大学 看護学部)
  • 杉山 恵理子(明治学院大学 心理学部)
  • 田中 健次(電気通信大学 大学院情報理工学研究科)
  • 長川 真治(防衛医科大学校 医学教育部防衛医学講座)
  • 長谷川 剛(自治医科大学 呼吸器外科)
  • 原田 賢治(東京農工大学 保健管理センター)
  • 宮田 裕章(東京大学 大学院医学系研究科医療品質評価学)
  • 水木 麻衣子(東京大学 大学院医学系研究科医療安全管理学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
3,077,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療安全支援センター(以下、センター)に寄せられる苦情相談事例は、一つの医療機関で治療や療養が完結することのない今の医療システムにおいて、患者家族が治療方針の適切な理解や意思決定をすることがいかに難しいかを表している。今後、患者家族の適切な受診行動や意思決定をどのように支えていくかという課題にむかって、センターの相談機能は医療機関への情報提供、患者住民の適切な受療行動を支える重要な機能となってくる。本研究では、センターの相談対応の質を向上させる方策と、広く地域の相談支援機能との連携のあり方の形について検討する。
研究方法
アクションリサーチの位置づけで課題の構造の解明を行い、そこから得られた知見を全支援センターに還元して質の向上を図る実践的方法で行う。
(1)医療機関での説明実態の把握と患者家族に必要な支援の検討
センターが積極的にかかわるべき相談事例(説明不足、患者と医療者の認識のズレ)を全国のセンターから集めるための事例収集の様式、システム等を検討し、事例を収集する。これらの事例を、患者家族の心情をよく理解している医療者(医療対話推進者、コーディネーター等)と一緒に検討し、説明不足を補う機能に関する知見をまとめる。
(2)地域医療構想、地域包括ケアでの相談支援機能の連携と人材育成のあり方の検討
高齢化に伴い、医療安全の観点からも医療と介護・福祉の連携(終末期患者や後期高齢者の地域での看取り等)に寄与する相談対応が必要になる。地域医療構想や地域包括ケアにかかわる様々な相談支援機能との連携の可能性を検討する場として、モデルセンターと多職種で事例検討を行う。相談の類似性、対応の相違点などを明らかにしながら、地域の医療安全の課題や相談支援機能の連携や情報の共有、人材育成について知見をまとめていく。また、相談事例検討の結果を相談支援の人材育成や地域啓発活動の教育教材にする。
(3)センターの機能の明確化と相談員に対する研修の評価
センターの業務の評価、質の向上に直結する事として、センターの機能に関する調査と相談員に対する研修の見直しを行う。センターの機能に関するデーター等収集し標準化を検討する。相談員へ行っている研修を見直し、「一律の提供が可能な研修」と「体験学習が必要な研修」のうち、前者を速成で実施できる方法で再構成を行う。相談員の速成のための新たな研修プログラムを作成、実行し、評価を行う。研修効果があった場合は、研修効果のEラーニングの導入を検討していく。

結果と考察
(1)医療機関での説明実態の把握と患者家族に必要な支援の検討
センターが積極的にかかわるべき相談は説明不足、患者と医療者の認識のズレが背景にある事例である。それらの相談にどのように対応すればいいのか、を検討するために、美容医療の苦情相談事例を収集し、事例収集様式を検討し、センターから約145事例が集まった。また、別途、医療対話推進者、コーディネーター等、患者家族の支援団体から、説明不足という課題への対応についてヒアリングを行い、相談支援機能が説明不足を補う機能として期待できることがわかった。
(2)地域医療構想、地域包括ケアでの相談支援機能の連携と人材育成のあり方の検討
保健所設置市区をモデルとして、医療安全推進協議会のワーキンググループを設け、多職種で事例検討を行った。仮説では、多職種共通の医療安全の課題があり、それらを共有していくことが可能だと考えていたが、実際は、医師、歯科医師は自分の診療所以外の苦情はほとんど知らず、薬剤師、病院の相談担当者、ソーシャルワーカも他職種に対する相談事例は知らず、まずはそれぞれの職種が直面している医療安全の課題の把握をしたうえで、その解決のための相談支援機能の連携や人材育成のあり方を検討する必要があることがわかった。
(3)センターの機能の明確化と相談員に対する研修の評価
センターの機能を10のカテゴリー分け、10の機能に関するセンターの基本方針に関する調査を行った。センターの基本方針を問う初めての調査であり、センターの運営体制と合わせて全国の状況を把握できた。また、相談員に対する研修の見直し「一律の提供が可能な研修」の再構成を行った。1日でセンターの運営や相談業務について基本的なことを習得できる速成の新たな研修プログラムを作成した。
結論
患者家族の適切な受診行動や意思決定をどのように支えていくかという課題にむかって、センターの相談機能は医療機関への情報提供、患者住民の適切な受療行動を支える重要な機能となってくる。センターの相談介入の質を向上させる方策と、広く地域の相談支援機能との連携のあり方の形について検討が必要である。

公開日・更新日

公開日
2017-06-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2017-05-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201620012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,000,000円
(2)補助金確定額
4,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,581,833円
人件費・謝金 0円
旅費 511,022円
その他 987,213円
間接経費 923,000円
合計 4,003,068円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2017-06-05
更新日
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