文献情報
文献番号
201619004A
報告書区分
総括
研究課題名
肝炎ウイルス感染状況と感染後の長期経過に関する研究
課題番号
H28-肝政-一般-001
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
田中 純子(広島大学 大学院医歯薬保健学研究院疫学・疾病制御学)
研究分担者(所属機関)
- 佐竹正博(日本赤十字社 中央血液研究所)
- 三浦宜彦(埼玉県立大学)
- 相崎英樹(国立感染症研究所・ウイルス第二部)
- 池田 健次(虎の門病院・肝臓センター肝臓内科)
- 鳥村拓司(久留米大学消化器内科)
- 山崎一美(国立病院機構長崎医療センター・ 臨床研究センター)
- 日野啓輔(川崎医科大学医学部・内科学)
- 宮坂昭生(岩手医科大学・医学部・内科学講座)
- 島上哲朗(金沢大学附属病院 消化器内科・)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服政策研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
32,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
肝炎、肝がんによる健康被害の抑制、防止および体制整備を目標とした疫学基盤研究。肝炎・肝がん対策推進(関連事案の評価、再構築)に対応可能な疫学的基礎資料を収集、提示することを目的とする
研究方法
1)肝炎ウイルス感染状況に関する疫学基盤研究、2)感染後の長期経過に関する研究、3)対策の効果と評価および効果測定指標に関する研究 の3つの柱をたて基礎、臨床、社会医学の専門家を組織し実施する
結果と考察
1新規感染も含めた肝炎ウイルス感染状況に関する疫学
1)住民・職域検診集団7,682例から層化無作為抽出した1200例を上市済みの複数の測定系による肝炎ウイルス感染状況を明らかにした。中間報告では、HBs抗原0.83%、HBc抗体16.7%、HBs抗体19.0%、HCV抗体0.9%、HAV抗体16.8%はいずれも高齢群で高い値。HBV水平感染がみられること、30-60歳代集団のHCV抗体は高い、HAV防御抗体が50歳代以下ほぼ0。
2)2007-8年出生群の小学校3年健診集団3,774名のHBV感染状況(複数測定系)を検討した。HBs抗体陽性率に試薬間の齟齬が著しく、測定系の検証を含め検討中
3)職域検診時肝炎ウイルス調査2420例では34例陽性、初めて感染が判明したHBV10名HCV5名は紹介状により医療機関受診し治療開始あるいは継続受診となった。職種間のHBV/HCV感染率に有意差は認めないがサービス業がやや高い傾向。職域における肝炎ウイルス検査の推進は、感染に気づいていない受療が必要なキャリアを見いだす可能性がある
5)直近の全国献血者におけるHCV感染実態の把握を行った
2感染後の長期経過に関する研究
1)肝癌根治治療後のHCV治療(IFNorDAA)の意義を検討。肝細胞癌初回治療後にはDAAによる積極的なHCV排除が望ましいが複数回の治療歴のある場合には、HCV排除後に急速再発・悪性再発をきたすことがあり慎重を要する
2)B型慢性肝疾患症例1474例中HBs抗原自然消失209例の再活性化例は1例(消失後9.2年)、発癌例は1例(消失後15.2年)
3)B型肝炎ウイルス持続感染者1977~2013年観察されているで治療介入のない862例を対象にマルコフモデルによる年齢・観察時間を補正した肝病態推移予測を行い、HBe抗原持続陽性群はHBe抗体陽性群と比較して肝がんおよび肝硬変累積罹患率、進展率が共に高い
4)IFN後HCV SVR669例、著効後発癌17例2.5%。発癌の背景因子は高齢もしくは肥満、DM、アルコール摂取
5)hospital-basedコホートスタディ1995-2015年HCVキャリア8950例中死亡2010例の死因は、肝疾患関連死39.2%、肝疾患非関連死60.8%。肝疾患関連死中、肝がん71.9%、肝不全・消化管出血28.1%。肝疾患非関連死中、癌38.9%。C型肝炎感染症は全身病であり治療では肝外病変の存在を念頭に置いて治療適応を決める必要がある
6)HCV-DAA治療前にEOB-MRIを行うことは今後増加するであろうSVR群の肝発癌例の「超高危険群」の同定に有用
3対策の効果と評価および効果測定指標に関する研究
1)HBV母子感染防止事業の実施状況把握を全国自治体を対象に開始。先行調査広島県の中間結果では、22市町中8市町6,444人妊婦が回収済みHBs抗原陽性者24名0.37%、1986年以降出生陽性は3名。児の感染防御まで確認したは4%と極めて低率。全国データを回収中。
2)都道府県毎のデータに基づいた肝炎ウイルスキャリア数の2001, 2011, 2015年の推定。広島県の事例では、2000年以後検査受検が進みHCV治癒例も8,580人と多く、潜在キャリア総数は15年間で11.2万人から8.1万人と減少した。未受診キャリアは4.7-4.5万人と推定。検査陽性者への受療勧奨やフォローアップ制度の活用が重要。他の都道府県毎の推定ソフトを提示予定
1)住民・職域検診集団7,682例から層化無作為抽出した1200例を上市済みの複数の測定系による肝炎ウイルス感染状況を明らかにした。中間報告では、HBs抗原0.83%、HBc抗体16.7%、HBs抗体19.0%、HCV抗体0.9%、HAV抗体16.8%はいずれも高齢群で高い値。HBV水平感染がみられること、30-60歳代集団のHCV抗体は高い、HAV防御抗体が50歳代以下ほぼ0。
2)2007-8年出生群の小学校3年健診集団3,774名のHBV感染状況(複数測定系)を検討した。HBs抗体陽性率に試薬間の齟齬が著しく、測定系の検証を含め検討中
3)職域検診時肝炎ウイルス調査2420例では34例陽性、初めて感染が判明したHBV10名HCV5名は紹介状により医療機関受診し治療開始あるいは継続受診となった。職種間のHBV/HCV感染率に有意差は認めないがサービス業がやや高い傾向。職域における肝炎ウイルス検査の推進は、感染に気づいていない受療が必要なキャリアを見いだす可能性がある
5)直近の全国献血者におけるHCV感染実態の把握を行った
2感染後の長期経過に関する研究
1)肝癌根治治療後のHCV治療(IFNorDAA)の意義を検討。肝細胞癌初回治療後にはDAAによる積極的なHCV排除が望ましいが複数回の治療歴のある場合には、HCV排除後に急速再発・悪性再発をきたすことがあり慎重を要する
2)B型慢性肝疾患症例1474例中HBs抗原自然消失209例の再活性化例は1例(消失後9.2年)、発癌例は1例(消失後15.2年)
3)B型肝炎ウイルス持続感染者1977~2013年観察されているで治療介入のない862例を対象にマルコフモデルによる年齢・観察時間を補正した肝病態推移予測を行い、HBe抗原持続陽性群はHBe抗体陽性群と比較して肝がんおよび肝硬変累積罹患率、進展率が共に高い
4)IFN後HCV SVR669例、著効後発癌17例2.5%。発癌の背景因子は高齢もしくは肥満、DM、アルコール摂取
5)hospital-basedコホートスタディ1995-2015年HCVキャリア8950例中死亡2010例の死因は、肝疾患関連死39.2%、肝疾患非関連死60.8%。肝疾患関連死中、肝がん71.9%、肝不全・消化管出血28.1%。肝疾患非関連死中、癌38.9%。C型肝炎感染症は全身病であり治療では肝外病変の存在を念頭に置いて治療適応を決める必要がある
6)HCV-DAA治療前にEOB-MRIを行うことは今後増加するであろうSVR群の肝発癌例の「超高危険群」の同定に有用
3対策の効果と評価および効果測定指標に関する研究
1)HBV母子感染防止事業の実施状況把握を全国自治体を対象に開始。先行調査広島県の中間結果では、22市町中8市町6,444人妊婦が回収済みHBs抗原陽性者24名0.37%、1986年以降出生陽性は3名。児の感染防御まで確認したは4%と極めて低率。全国データを回収中。
2)都道府県毎のデータに基づいた肝炎ウイルスキャリア数の2001, 2011, 2015年の推定。広島県の事例では、2000年以後検査受検が進みHCV治癒例も8,580人と多く、潜在キャリア総数は15年間で11.2万人から8.1万人と減少した。未受診キャリアは4.7-4.5万人と推定。検査陽性者への受療勧奨やフォローアップ制度の活用が重要。他の都道府県毎の推定ソフトを提示予定
結論
研究目的と計画に沿って進めている
公開日・更新日
公開日
2017-10-03
更新日
-