我が国のウイルス性肝炎対策に資する医療経済評価に関する研究

文献情報

文献番号
201619003A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国のウイルス性肝炎対策に資する医療経済評価に関する研究
課題番号
H26-肝政-一般-003
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
平尾 智広(香川大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 正木 尚彦(独立行政法人国立国際医療研究センター)
  • 八橋 弘(国立病院機構長崎医療センター 臨床研究センター)
  • 長谷川 友紀(東邦大学 医学部)
  • 池田 俊也(国際医療福祉大学 薬学部)
  • 石田 博(山口大学 医学部)
  • 杉森 裕樹(大東文化大学 スポーツ健康科学部)
  • 須賀 万智(東京慈恵会医科大学 疫学予防医学)
  • 赤沢 学(明治薬科大学 公衆衛生医療経済学・)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服政策研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
8,050,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、ウイルス性肝炎に係る医療経済評価の研究過程で、新たに生じてきた問題群、精緻化が必要な問題群を明らかにすることである。研究項目は、1既存モデルの精緻化(1-1 モデルのパラメータ更新、1-2 B型肝炎再活性化の医療経済評価、1-3 生産性損失におけるプレゼンティズムの推定、1-4 コストの精緻化)、2新たな課題(2-1 C型肝炎の新薬の医療経済評価、2-2 治療における効用値の時系列変化、2-3 C型慢性肝炎、肝硬変患者における高リスク群に対する積極的スクリーニング、2-4 医療経済評価が必要な分野の情報収集と吟味、2-5 ウイルス肝炎に起因する肝硬変に関する医療経済評価である。
研究方法
1)既存モデルの精緻化
1-1 他研究班の研究成果、文献等により新知見を収集しモデル変更等の吟味を行った。
1-2 国立病院機構の診療情報データベース(2011/04~2015/03)を用いて、リウマチ患者における再活性化の発生頻度を算出した。また、予防対策の実施状況を明らかにした。
1-3 これまでの調査結果をもとに病態別の生産性損失推定値を確定させた。
1-4 保険者から収集したレセプトデータを用い、実診療を反映した医療費の算出を試みた。
2)新たな課題
2-1 線維化ステージを考慮した自然歴モデルを構築し、これを用いて医療経済分析を行った。また、C型肝炎に対する高額の新薬について財政負担の推定を行った。
2-2 C型肝炎患者を対象に、EQ-5D、CLDQ、SF8により治療介入前後における効用値の変化を明らかにした。
2-3 C型慢性肝炎、肝硬変患者における高リスク群に対する積極的スクリーニングの医療経済評価を行った。
2-4 我が国のB型、C型肝炎治療の現状と課題について整理を行った。
2-5 ウイルス性肝炎に起因する肝硬変の疫学情報の収集、またそれによるCOI(Cost of Illness)推計を行った。
結果と考察
1)既存モデルの精緻化
・モデルの変更は行っていない。一部制度の変更があったものにつき、最新のものにデータ更新を行った。
・B型肝炎活性化について、年間発生率は約2/100人年と推定された。これは、Mochidaらの報告と同程度であった。予防について、調査対象期間では実施頻度は高くなかった。費用は1人あたり10~11万円であった。
・生産性損失の推定値を以下のように確定させた。慢性肝炎(活動性)6.3%、慢性肝炎(非活動性)15.2%、肝硬変(代償性)15.2%、肝硬変(非代償性)36.5%、肝臓がん36.5%。
また、慢性肝炎による生産性損失のうち、80%がプレゼンティズム、20%がアブセンティズムであった。
2)新たな課題
・C型肝炎の線維化ステージ別の治療開始戦略について、SOF/LDVでは、TA(全員対象)とF1期のICERは151~23万円/QALYであった。無治療、F4期、F3期はF2期に比べ効果が低く、生涯医療費が高かった。OPRでは、TAとF1期のICERはMVで135万円/QALY、D20yではF1期はF2期に対し拡張劣位であり、TAとF2期とのICERは15万円/QALYであった。
DA療法では、TAとF1期のICERは78万円/QALY、D20yではF1期は他のいずれよりも生涯費用が安価であった。
・C型肝炎の高額医薬品に関する財政負担について、GT1では慢性肝炎、肝硬変、肝がんの患者数の抑制効果は、SOF+LDVが最も大きく、OBV/PTV/r、DCV/ASVが続いた。単年度の医療費は多い順にSOF/LDV、OBV/PTV/r、PegINF/RBV、DCV/ASVであった。SOF/LDV、OBV/PTV/r、とPegINF/RBVは、2023年~25年ころ逆転すると考えられた。GT2では、抑制効果はSOF/RBVが大きかった。単年度の医療費はSOF/RBVが上回るが、その後逆転する。
・ウイルス性肝炎に関する各種治療中における効用値の時系列変化について、SOF/RBVではCLDQのWorryで1回目と比較して有意に高い結果を示した。SOF/LDVでは、1回目と比較して、SF-8のGeneral health perceptions、Mental Health、CLDQのFatigue、Emotional Function、Worry、Activity、Total scoreで有意に高い結果を示した。
・C型慢性肝炎、肝硬変患者における高リスク群に対する積極的スクリーニングについて、ICERは1QALYあたり1,932,539円(生産性損失を含めない)であった。
結論
それぞれの研究項目において計画に従って研究を遂行した。ウイルス性肝炎とその関連疾患の経済分析に資するデータを作成することができた。

公開日・更新日

公開日
2017-11-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
その他

公開日・更新日

公開日
2017-11-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201619003B
報告書区分
総合
研究課題名
我が国のウイルス性肝炎対策に資する医療経済評価に関する研究
課題番号
H26-肝政-一般-003
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
平尾 智広(香川大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 正木 尚彦(独立行政法人国立国際医療研究センター)
  • 八橋 弘(国立病院機構長崎医療センター・臨床研究センター)
  • 長谷川 友紀(東邦大学 医学部)
  • 池田 俊也(国際医療福祉大学 薬学部)
  • 石田 博(山口大学 医学部)
  • 杉森 裕樹(大東文化大学 スポーツ健康科学部)
  • 須賀 万智(東京慈恵会医科大学 疫学・予防医学)
  • 赤沢 学(公衆衛生・医療経済学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服政策研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、ウイルス性肝炎に係る医療経済評価の研究過程で、新たに生じてきた問題群、精緻化が必要な問題群を明らかにすることである。研究項目は、1既存モデルの精緻化(1-1 モデルのパラメータ更新、1-2 B型肝炎再活性化の医療経済評価、1-3 生産性損失におけるプレゼンティズムの推定、1-4 コストの精緻化)、2新たな課題(2-1 C型肝炎の新薬の医療経済評価、2-2 治療における効用値の時系列変化、2-3 C型慢性肝炎、肝硬変患者における高リスク群に対する積極的スクリーニング、2-4 医療経済評価が必要な分野の情報収集と吟味、2-5 ウイルス肝炎に起因する肝硬変に関する医療経済評価である。
研究方法
1)既存モデルの精緻化
1-1 他研究班の研究成果、文献等により新知見を収集しモデル変更等の吟味を行った。
1-2 国立病院機構の診療情報データベース(2011/04~2015/03)を用いて、リウマチ患者における再活性化の発生頻度を算出した。また、予防対策の実施状況を明らかにした。
1-3 患者を対象にWPAI等の調査を行い、病態別の生産性損失推定値を明らかにした。
1-4 保険者から収集したレセプトデータを用い、実診療を反映した医療費の算出を試みた。
2)新たな課題
2-1 線維化ステージを考慮した自然歴モデルを構築し、これを用いて医療経済分析を行った。また、C型肝炎に対する高額の新薬について財政負担の推定を行った。
2-2 C型肝炎患者を対象に、EQ-5D、CLDQ、SF8により治療介入前後における効用値の変化を明らかにした。
2-3 C型慢性肝炎、肝硬変患者における高リスク群に対する積極的スクリーニングの医療経済評価を行った。
2-4 我が国のB型、C型肝炎治療の現状と課題について整理を行った。
2-5 ウイルス性肝炎に起因する肝硬変の疫学情報の収集、またそれによるCOI(Cost of Illness)推計を行った。
結果と考察
1)既存モデルの精緻化
・モデルの変更は行わず、制度の変更があったものにつきデータ更新を行った。
・B型肝炎活性化について、年間発生率は約2/100人年と推定された。これは、Mochidaらの報告と同程度であった。予防について、調査対象期間における実施頻度は高くなく、1人当たりの費用は10~11万円であった。
・生産性損失の推定値は、慢性肝炎(活動性)6.3%、慢性肝炎(非活動性)15.2%、肝硬変(代償性)15.2%、肝硬変(非代償性)36.5%、肝臓がん36.5%、と推定された。慢性肝炎については、80%がプレゼンティズム、20%がアブセンティズムであった。
2)新たな課題
・C型肝炎の線維化ステージ別の治療開始について、SOF/LDVでは、TA(全員対象)とF1期のICERは151~23万円/QALYであった。無治療、F4期、F3期はF2期に比べ効果が低く、生涯医療費が高かった。OPRでは、TAとF1期のICERはMVで135万円/QALY、D20yではF1期はF2期に対し拡張劣位であり、TAとF2期とのICERは15万円/QALYであった。
DA療法では、TAとF1期のICERは78万円/QALY、D20yではF1期は他のいずれよりも生涯費用が安価であった。
・C型肝炎の高額医薬品に関する財政負担について、GT1では慢性肝炎、肝硬変、肝がん患者数の抑制効果は、SOF+LDVが最も大きく、OBV/PTV/r、DCV/ASVが続いた。単年度の医療費は多い順にSOF/LDV、OBV/PTV/r、PegINF/RBV、DCV/ASVであった。SOF/LDV、OBV/PTV/r、とPegINF/RBVは、2023年~25年ころ逆転すると考えられた。GT2では、抑制効果はSOF/RBVが大きかった。単年度の医療費はSOF/RBVが上回るが、その後逆転する。
・ウイルス性肝炎に関する各種治療中における効用値の時系列変化について、SOF/RBVではCLDQのWorryで1回目と比較して有意に高い結果を示した。SOF/LDVでは、1回目と比較して、SF-8のGeneral health perceptions、Mental Health、CLDQのFatigue、Emotional Function、Worry、Activity、Total scoreで有意に高い結果を示した。
・C型慢性肝炎、肝硬変患者における高リスク群に対する積極的スクリーニングについて、ICERは1QALYあたり1,932,539円(生産性損失を含めない)であった。
結論
それぞれの研究項目において計画に従って研究を遂行した。ウイルス性肝炎とその関連疾患の経済分析に資するデータを作成することができた。

公開日・更新日

公開日
2017-11-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
その他

公開日・更新日

公開日
2017-11-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201619003C

収支報告書

文献番号
201619003Z