個別施策層のインターネットによるモニタリング調査と教育・検査・臨床現場における予防・支援に関する研究

文献情報

文献番号
201618001A
報告書区分
総括
研究課題名
個別施策層のインターネットによるモニタリング調査と教育・検査・臨床現場における予防・支援に関する研究
課題番号
H26-エイズ-一般-001
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
日高 庸晴(宝塚大学 看護学部)
研究分担者(所属機関)
  • 白阪 琢磨(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター)
  • 古谷野 淳子(新潟大学医歯学総合病院 感染管理部)
  • 川畑 拓也(大阪府立公衆衛生研究所 感染症部ウイルス課)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
12,601,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国のHIVサーベイランス開始以来一貫してその対策の重要性が高く、喫緊の課題であるMen who have Sex with Men(MSM)を主たる対象に研究を実施した。本研究ではインターネットを用いたモニタリング調査や予防介入に加えて、MSMを取り巻く教育・検査・臨床現場における予防と支援を通じて、MSMのおかれている社会的環境の変容の一助とすることを目的に5つの研究課題を実施した。
研究方法
インターネットによるMSMのHIV感染リスクに関する行動疫学研究(研究1)、認知行動理論(CBT)によるHIV予防介入研究(研究2)、学校教育における性的指向・性同一性に配慮したHIV予防教育に関する研究(研究3)、HIV抗体検査陽性判明者のHIV分子疫学的解析とリスク行動の関連に関する研究(研究4)、療養中HIV陽性者(MSM)における治療と予防行動のモニタリングに関する研究(研究5)を実施した。
結果と考察
研究1:過去7回のMSM対象のインターネット調査のデータをもとに経年分析したところ、過去6ヶ月間の男性とのセックス経験率やコンドーム常時使用率は経年的にほぼ横ばい、HIV抗体検査の生涯・過去1年間の受検率は10%程度の上昇が確認された。これまでに実施された検査普及キャンペーンなどの取組が功を奏していると思われる。

研究2:MSMを対象とした認知行動理論によるHIV予防介入手法(個別認知行動面接)の普及と展開を目指した。研究1年目に開発した認知行動面接保健師版の内容を、現場実践や各地研修からのフィードバックをもとに再検討し、マニュアル化し、冊子としてまとめた。また、グループ版のコミュニティ実践を継続した。さらに、HIV陽性MSM向け資材を用いたセイファーセックス支援面接のモデルを考案し、医療機関で試行した。予防介入のひとつの方法として個別認知行動面接が活用・普及が望まれる。

研究3:A県13校の高校生(有効回答数2,146人)を対象に性の多様性について授業を実施。性的指向や性自認についての解説や、HIV陽性MSMの手記の読み込みなどを盛り込んだ授業内容とした。授業前後の質問紙調査の結果、性の多様性について否定的な態度であった4~5割の生徒が授業後に肯定的な態度に変容したことが確認され、教育効果が示された。

研究4:検査でHIV陽性と判明した者の感染しているHIV遺伝子を解析し、梅毒交替陽性者のリスク因子を検討した。2016年までに353例の回答を得たが、その内HIV陽性者は9例、梅毒Tp抗体陽性者は77例であった。HIV陽性群は陰性群よりもHIV検査を過去3年間よりも以前に受検した割合が高く、過去 6ヶ月間のアナルセックス経験が高率であった。

研究5:HIV陽性MSMのHIV感染判明前後の性行動やその関連要因と変化を明確化する無記名質問紙調査を実施し、118人の初回回答分について集計した。HIV感染判明前の6ヶ月間におけるハッテン場利用割合は最大で6割を超えるが、感染判明後は低率であった。過去6ヶ月間のセックス経験率も同様の変化であった。全体の62%にHIV以外のSTI既往歴があり、梅毒、B型肝炎等であった。
結論
研究をほぼ計画通りに進め、MSMのHIV感染リスク行動の現状を経年的に把握する共に、個別面接による予防介入手法の資材開発、これまで実施困難であった学校でのMSMの存在を配慮した授業を実施、その効果評価を行った。加えて、検査・臨床現場における予防と支援に関する研究を実施した。

公開日・更新日

公開日
2017-06-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-06-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201618001B
報告書区分
総合
研究課題名
個別施策層のインターネットによるモニタリング調査と教育・検査・臨床現場における予防・支援に関する研究
課題番号
H26-エイズ-一般-001
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
日高 庸晴(宝塚大学 看護学部)
研究分担者(所属機関)
  • 白阪 琢磨(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター)
  • 古谷野 淳子(新潟大学医歯学総合病院 感染管理部)
  • 川畑 拓也(大阪府立公衆衛生研究所 感染症部ウイルス課)
  • 佐々木 掌子(立教女学院短期大学 現代コミュニケーション学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
MSMを対象に6つの研究課題を実施した。本研究ではインターネットを用いたモニタリング調査や予防介入に加えて、教育・検査・臨床現場における予防と支援を通じて、MSMを取り巻く社会的環境変容のための一助とすることを目的とした。
研究方法
インターネットによるMSMのHIV感染リスクに関する行動疫学研究(研究1)、認知行動理論(CBT)によるHIV予防介入研究(研究2)、学校教育における性的指向・性同一性に配慮したHIV予防教育に関する研究(研究3)、HIV抗体検査陽性判明者のHIV分子疫学的解析とリスク行動の関連に関する研究(研究4)、療養中HIV陽性者(MSM)における治療と予防行動のモニタリングに関する研究(研究5)、ストリートユースのHIV感染リスクに関する行動疫学研究(研究6)を実施した。
結果と考察
研究1:【1年目】MSMの感染予防行動の動向把握のためのインターネット調査を実施(有効回答数20,821名)、過去最多の研究参加者数であり、コンドーム常時使用率やHIV抗体検査受検率などMSMの全国的動向が示された。
【2年目】コンドーム編、HIV検査編、危険ドラッグ編の啓発コンテンツを設計し、ネット介入を実施した(18,880人の参加登録)。短期間に効率的な予防介入を行い、その成果が得られた。
【3年目】過去7回分の横断研究のデータを分析に供した。過去6ヶ月間の男性とのセックス経験率やコンドーム常時使用率は経年的にほぼ横ばい、HIV抗体検査の生涯受検率・過去1年間の受検率は10%程度の上昇が確認された。

研究2:【1年目】認知行動理論の手法を用いた個別認知行動面接によるHIV予防介入手法の普及のために、コミュニティ活動家や保健師からの協力を得て、地域や保健所での実施可能性を検討した。
【2年目】本手法の一層の普及のために、HIV陽性者MSM・異性愛女性のセイファーセックス支援のために、陽性者についてはUAI(Unprotected Anal Intercourse)を、異性愛女性に関しては、UVI(Unprotected Vaginal Intercourse)を自らに許容する認知の項目群を作成、その因子構造を検討、女性向けの「ゴムを使う100の方法」を作成した。
【3年目】個別認知行動面接の普及のために手法をマニュアル化、冊子としてまとめた。また、HIV陽性MSM向け資材を用いたセイファーセックス支援面接のモデルを考案、医療機関で試行した。

研究3:【1年目】性の多様性とHIV予防についてMSM当事者の生徒へ予防メッセージをいかに届けるかという視点から、現場の教員と共に授業案を作成した。
【2年目】性の多様性を理解する授業案と指導時の留意点を開発した。パイロットスタディとして中学校1校・高校1校(中学校290人、高校233人)で授業を実施、効果評価を行った。
【3年目】高校生を対象に授業を本格的に実施した(有効回答数2,146人)。性の多様性について否定的な態度であった4~5割の生徒が、授業後に肯定的な態度に変容したことが教育効果として確認された。

研究4:【1~3年目】HIV検査受検MSMの行動疫学調査と検査結果を関連づけて解析・検討した。HIV陽性と判明した者の感染しているHIV遺伝子を解析し、遺伝的に近い関係にあるHIVに感染している者同士を感染リスクが共通している群と仮定、各群のリスク因子を解析することで特徴的なリスク因子を見出すことに加え、梅毒抗体陽性MSMのリスク因子についても検討した。2014~2016年にかけて医療機関におけるHIV検査受検者への質問紙調査で得られた回答のうち、895例(HIV陽性者20例、梅毒Tp抗体陽性者182例)が解析可能、これらについて関連要因を分析した。

研究5:【1~3年目】HIV陽性男性患者156名に無記名自記式質問紙を配布し、133名より回収、有効回答であった118名に質問紙の配布および回収を継続。118名の初回回答の分析の結果、HIV感染判明前に比して判明後のセックス経験率は大幅に低減していた。また、全体の62%にHIV以外のSTI既往歴がありその内訳は梅毒、B型肝炎等であった。

研究6:路上滞留若年層MSMのHIV感染リスクの実態を明らかにするためのフィールド調査を実施し、11人の研究参加を得た。食費や生活費のためのサバイバルセックスの現状が明らかになった。
結論
ほぼ計画通りに研究を進めた。MSMのHIV感染リスク行動の現状を経年的に把握する共に、個別面接による予防介入手法の資材開発、これまで実施困難であった学校でのMSMの存在を配慮した授業を実施、その効果評価を行った。加えて、検査・臨床現場における予防と支援に関する研究を実施した。

公開日・更新日

公開日
2017-06-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-06-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201618001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
アジア最大規模の研究となったMSMを対象にしたインターネット調査に加え、HIV感染の予防介入・検査・臨床での研究を行った。さらに、若年層の中でもMSMにおける感染の拡大がある一方で、学校教育現場において性的指向などMSMの存在を意識したエイズ予防教育は十分に実施されてきていないことを踏まえ、高校教諭らと共に授業案および授業資料を開発した。それをもとに授業実践を行い、その教育効果を評価・検討した。また、検証結果と開発した授業案を冊子にまとめ、広く普及するよう努めた。
臨床的観点からの成果
HIV陽性者におけるQOL・セクシュアルヘルスの向上、HIVの感染予防、薬剤耐性・治療継続支援など、当該集団のライフスタイル全般を対象にした包括的な調査研究を実施。HIV陽性者支援を含む、わが国のHIV感染予防の促進に寄与するものと考える。
ガイドライン等の開発
文部科学省が2016年4月に発表した「性同一性障害や性的指向・性自認に係る、児童生徒に対するきめ細かな対応等の実施について(教職員向け)」資料の作成に協力。
その他行政的観点からの成果
平成26年度法務省委託人権啓発ビデオ「あなたがあなたらしく生きるために 性的マイノリティと人権」を監修。さらに、公益財団法人人権教育啓発推進センターをはじめ自治体作成のリーフレットや指導資料の監修を11件行った。また、研究代表者はエイズ動向委員会委員として随時、調査データの報告を行っている。
その他のインパクト
NHKテレビでの放映12回、民放テレビでの放映3回、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞等の新聞記事において調査結果の一部が48回掲載された。また、自治体の研修や学術講演など研究実施期間の3年間に122回行い、社会的に還元した。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
14件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
122件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hidaka Y, Operario D, Tsuji H, et al.
Prevalence of sexual victimization and correlates of forced sex in Japanese men who have sex with men
Plos One , 9 (5) , e95675.-  (2014)
doi:10.1371/journal.pone.0095675s
原著論文2
Matsutaka Y, Uchino T, Kihana N, et al.
Knowledge about sexual orientation among student counselors: a survey in Japan
International Journal of Psychology and Counseling , 6 (6) , 74-83  (2014)
原著論文3
Nishimura YH., Iwai M., Ozaki A., et al.
Perceived Difficulties Regarding HIV/AIDS Services among Public Health Nurses in the Kinki Region of Western Japan: Implications for Public Health Nursing Education in Japan
Open Journal of Nursing , 7 (3)  (2017)
DOI: 10.4236/ojn.2017.73033,2017.
原著論文4
古谷野淳子,松高由佳,桑野真澄,他
「その瞬間」に届く予防介入の試み ―MSM対象のPCBC(個別認知行動面接)の検討
日本エイズ学会誌 , 16 (2) , 92-100  (2014)
原著論文5
西村由実子,岩井美詠子,尾崎晶代,他
近畿圏の保健師におけるHIV検査相談の現状に関する研究
日本エイズ学会誌 , 18 (1) , 20-28  (2016)
原著論文6
Matsutaka Y., Koyano J., Hidaka Y.
Perceptions of reducing HIV-preventive behaviors among men who have sex with men living with HIV in Japan.
Health , 1719-1733  (2018)

公開日・更新日

公開日
2017-06-08
更新日
2019-06-11

収支報告書

文献番号
201618001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
16,381,000円
(2)補助金確定額
16,381,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,094,503円
人件費・謝金 1,360,840円
旅費 2,429,630円
その他 6,716,078円
間接経費 3,780,000円
合計 16,381,051円

備考

備考
支出金額のうち51円は預金受取利息配当金

公開日・更新日

公開日
2018-04-02
更新日
-