地域連携に基づいた医療機関等における薬剤耐性菌の感染制御に関する研究

文献情報

文献番号
201617009A
報告書区分
総括
研究課題名
地域連携に基づいた医療機関等における薬剤耐性菌の感染制御に関する研究
課題番号
H28-新興行政-一般-004
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
八木 哲也(名古屋大学 大学院医学系研究科 臨床感染統御学)
研究分担者(所属機関)
  • 村上 啓雄(岐阜大学 医学部附属病院生体支援センター)
  • 飯沼 由嗣(金沢医科大学 医学部臨床感染症学)
  • 大毛 宏喜(広島大学 病院感染症科)
  • 具 芳明(東北大学 病院総合感染症科)
  • 藤本 修平(東海大学 医学部基礎医学系)
  • 村木 優一(三重大学 医学部附属病院 薬剤部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
17,347,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本年度の本研究の第一の目的は、感染対策で活用できる耐性菌検出法、フローチャート、指針などの作成、高齢者介護施設の現状把握である。第二に、有効な感染制御の地域連携モデルの構築と、それに役立つ地域感染制御ネットワーク支援システム(RICSS)事業化に向けての支援である。第三に、抗菌薬適正使用に活用できる、我が国の市中感染症ガイドラインの質評価、抗菌薬使用動向調査、及びナショナルデータベース(NDB)やレセプトデータ(RD)など様々なデータソースから容易に抗菌薬使用量を集計解析できるシステムの開発である。
研究方法
径10cmのMuller-Hinton培地に8枚のディスクを配置した多剤耐性菌のβ-ラクタマーゼ分類・検出方法を考案し、臨床分離株を用いて評価を行った。国内外の報告をもとに、カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)検出時の感染対策のフローチャート作成、及び多剤耐性グラム陰性菌対策における環境管理のポイントをまとめた。また広島県の行政、大学病院及び基礎研究部門と地域中核病院で構成される地域連携ネットワーク活動の成果と問題点を検討した。昨年度まで本研究班で仕様を固めていたRICSSの実開発に伴い、その仕様や基本設計を再確認するなど支援を行った。高齢者介護施設での薬剤耐性菌対策の現状と問題点を見出すため、岐阜県の高齢者介護施設を対象にアンケート調査を行った。我が国の市中感染症のガイドラインの評価を、国際的評価基準であるAGREE IIを用いて行った。IMSジャパン株式会社より販売量データを入手し、我が国における抗菌薬使用動向を明らかにし、動物用とヒト用の抗菌薬使用を比較した。また、抗菌薬使用量算出時の膨大な作業を削減するプログラムの開発を行った。入院患者の注射用抗菌薬使用量を集計・解析するJACSの登録データをRICSSと連携させるため、情報の共有化を図った。
結果と考察
考案した検出法は細菌検査室で容易に活用可能で、我が国に多いメタロβ-ラクタマーゼ産生菌、複数のβ-ラクタマーゼ産生菌の検出が可能であった。海外でのCPEのアウトブレイクの報告をもとに、我が国に適用できるCPE検出時の「アウトブレイクに準じた」感染対策を実践的なフローチャートを作成し、日本環境感染学会の「多剤耐性グラム陰性菌感染制御のためのポジションペーパー第2版」に掲載予定である。また国内外のアウトブレイクの報告を中心に情報収集し、多剤耐性グラム陰性菌対策での環境整備のポイントを整理した。海外のガイドラインの、通常時とアウトブレイク時の環境整備についてまとめた。広島県の地域連携ネットワークでは、各施設の分離菌の遺伝的な解析を行うと共に、アウトブレイク時の相互支援、人材育成を実践した。こうした活動の中で、活動資金確保、人材育成の喫緊の必要性等が課題として挙げられた。RICSSの実開発に伴い、収集項目の適切な集計法、参加施設登録申請法、統計量参照法などを決定し、2DCMの活用、複数の情報を活用できるDashboard機能を提案した。高齢者介護施設の薬剤耐性菌対策アンケート調査では、232施設中72施設から回答を得た。その結果、介護施設での抗菌薬使用の現状が判明すると共に、擦式アルコール手指消毒薬・PPEの使用や食器・リネンの取り扱い上の問題点、感染対策の知識・技術・専門職の不足、医療施設とのネットワーク作りなどの課題が明らかになった。市中感染症治療ガイドラインのAGREE II評価では、「作成の厳密さ」や「編集の独立性」で評価が低くかった。販売量データから見た我が国の抗菌薬使用の特徴は、経口抗菌薬特に第3世代セファロスポリン、マクロライド、フルオロキノロンの高い使用割合であった。動物用はヒト用とは使用比率が異なり、テトラサイクリンが繁用されていた。RICSSとの連携のため、JACSのWebシステム登録のためのフォーマット並びにマスター情報を共有した。さらにRD、NDB、販売量データなどデータソースによらず抗菌薬使用量を自動算出するDUASを開発した。
結論
本年度はAMR対策アクションプランの「感染予防・管理」で活用できる、耐性菌検出法の考案・評価、多剤耐性グラム陰性菌検出時の環境管理の指針、有効な感染制御地域連携ネットワークモデルの構築に着手し、CPE感染対策フローチャートを作成した。また、高齢者介護施設における薬剤耐性菌対策の現状と問題点を把握した。さらに「抗微生物薬の適正使用」の面で、我が国の市中感染症治療のガイドラインを評価した。「動向調査・監視」では、抗菌薬販売量データの解析から我が国での抗菌薬使用状況の特徴を明らかにし、地域連携ネットワークに基づいた感染制御支援システムであるRICSSの開発を進め、データソースによらない抗菌薬使用量解析システムであるDUASを新たに開発した。

公開日・更新日

公開日
2017-06-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-06-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201617009Z