精神障害者の地域生活支援を推進する政策研究

文献情報

文献番号
201616035A
報告書区分
総括
研究課題名
精神障害者の地域生活支援を推進する政策研究
課題番号
H28-精神-指定-001
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
藤井 千代(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所社会復帰研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 野口 正行(岡山県精神保健福祉センター)
  • 吉田 光爾(昭和女子大学)
  • 椎名 明大(千葉大学社会精神保健教育研究センター)
  • 五十嵐 良雄(医療法人雄仁会メディカルケア虎ノ門)
  • 佐藤 さやか(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター)
  • 川副 泰成(総合病院国保旭中央病院)
  • 萱間 真美(聖路加国際大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
24,648,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成25年の精神保健福祉法改正に伴い定められた「良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針」に示されている、精神障害者の社会復帰及び自立並びに社会経済活動への参加を促進するための保健医療福祉サービスを、地域でより効果的に展開するための具体的かつ実現可能な方法を提示する。さらに、精神保健福祉法改正に伴う措置入院者支援の具体的なあり方を検討し、措置入院の入り口から退院後支援までの体制整備について提言を行う。
研究方法
先行研究および厚労省における精神保健医療福祉に関係する検討会の資料及び報告書、地域精神医療福祉の効果的な実践(好事例)について検討し、政策提言の方向性について班全体で合意形成を行いつつ、各分担研究班で以下の課題に関する研究を実施した。自治体による効果的な地域精神保健医療福祉体制構築に関する研究では、エキスパートコンセンサスと関連団体における合意形成により市町村等の業務運営要領改訂案を作成した。自治体で活用できる精神医療と福祉のデータベース構築の研究では、障害福祉サービスの利用状況に関するデータと630調査の各指標との関連を探索し、臨床アウトカムに関連する指標について検討し、データベース構築の準備を行った。措置入院患者の地域包括支援のあり方に関する研究では、自治体の措置入院者への支援体制、措置診察までの手順、措置診断書等について全国調査を実施、好事例のヒアリング、エキスパートコンセンサスに基づき措置入院に係るガイドライン骨子を作成した。デイケア等の機能と転帰に関する大規模調査では、全国の精神科デイケア実施施設を対象として、郵送式の施設調査および患者調査を実施した。医療機関における就労支援研究では、医療機関と地域の支援機関における就労支援の内容や利用者の臨床像の異同について検討するため、パイロット研究として、大阪府に所在するクリニック付属のデイケア、就労移行支援事業所、障害者就業・生活支援センター各1か所に調査を実施した。多職種連携によるケアマネジメント研究では、ケアマネジメントにより重症精神障害者を地域で支えている医療機関を対象としたケアマネジメント対象者調査およびサービスプロセス調査を行った。訪問看護における多職種アウトリーチ研究では、全国4,804箇所の訪問看護ステーションへの悉皆調査を行い、統合失調症圏の対象者の病態とそれに対するケア内容の詳細を検討した。
結果と考察
運営要領改訂に関しては「指針」をすべての運営要領改定案で踏まえるとともに、各運営要領改定案の相互の連動性を強め、より一体的な運営要領改訂案を作成した。精神医療と福祉のデータベース構築については、各都道府県の障害福祉サービスの利用状況と630調査の関連を分析し、医療アウトカムと関連して注目すべき指標として、施設系およびGHなどを含む地域志向サービスの実績値をみることが重要であることを明らかにするとともに、ウェブデータベースシステムによる精神保健医療福祉システム整備進捗の見える化に向けた準備が整った。措置入院関連では、措置入院制度運用に関する自治体間格差の検証と分析を実施し、措置入院に係るガイドライン骨子を作成した。精神科デイケア等の調査においては、精神科デイケア1851施設に対し、施設調査および患者調査を実施し、865施設から回答を得て分析を開始した。医療機関における就労支援の研究では、現状行われている連携は支援者同士のインフォーマルなつながりに依拠するものであり、より効果的な連携について検討するためにはハローワークや行政などを中心としたフォーマルな連携の仕組み作りが必要と考えられた。ケアマネジメントに関する研究においては、外来患者514名の包括的支援マネジメント実施の有無と属性より、包括的支援マネジメントを必要とする患者の特性を明らかにし、148名の2カ月間のプロセス調査により、包括的支援マネジメントの実施内容を示した。アウトリーチに関しては、精神科訪問看護を専門に行う事業所においては訪問頻度が有意に多く、訪問滞在時間やケア会議の実施、同行訪問の実施には差は認められなかった。
結論
全国規模の障害福祉データ、精神科デイケア、包括的支援マネジメント、訪問看護に関するデータの収集、分析により、総合的な地域精神医療福祉の実情と今後の方向性を検討が可能となり、市町村等の業務運営要領改訂案により「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」構築のための具体的提言を行うことができる。またデータとエキスパートコンセンサスに基づく措置入院に係るガイドライン作成により、改正精神保健福祉法への迅速な対応が可能となると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2017-06-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-06-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201616035Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
30,417,000円
(2)補助金確定額
30,417,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,755,001円
人件費・謝金 6,239,173円
旅費 6,477,502円
その他 9,177,724円
間接経費 5,769,000円
合計 30,418,400円

備考

備考
自己資金 1,400円

公開日・更新日

公開日
2020-06-09
更新日
-