こころの健康づくりを推進する地域連携のリモデリングとその効果に関する政策研究

文献情報

文献番号
201616028A
報告書区分
総括
研究課題名
こころの健康づくりを推進する地域連携のリモデリングとその効果に関する政策研究
課題番号
H28-精神-一般-003
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
金 吉晴(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 災害時こころの情報支援センター・成人精神保健研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 山之内 芳雄(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 精神保健計画研究部)
  • 三島 和夫(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 精神生理研究部)
  • 神尾 陽子(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 児童・思春期精神保健研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
23,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
第二次健康日本21では「休養・心の健康づくり」が重視され、数値目標(平成 34 年度まで)として「気分障害・不安障害〜の割合を 9.4%とする」など6項目を定めている。そこで全国都道府県市町村保健所(市町村においては市町村保健センター)に勤める保健医療福祉専門職を対象に、過去一年の精神保健相談の実体調査が必要であった。また相談者に積極的に関わる姿勢についても中庸の域を出ないが、精神保健に関する知識、教材、研修の必要性の意識は非常に高いことから、適切な精神保健相談を行うに必要な知識の習得がニーズにあった教材・研修を通して実現されれば、おのずと精神保健の課題を抱える相談者への積極的な姿勢と対応を促進するものと思われた。発達障害が幼児期から生涯を通じて支援が必要なこと、精神疾患との合併が多いことを踏まえて、発達障害者とその家族への支援の視点を取り入れた再統合が必要である。相談業務で遭遇する睡眠障害を早期に同定する診断モジュールの開発を行うことを目的とし、本研究では精神疾患で高率に認められる不眠症のスクリーニング尺度の選定および一般住民での得点分布と抑うつ・不安との関連を調査した。
研究方法
1.保健所に勤める保健医療福祉専門職(有資格者)を対象とし、国立精神神経医療研究センターの倫理委員会の承認後全国の保健所に郵送で依頼し、サーベイモンキー上でのデータ入力を行った。2.心理的苦痛を感じる者の動向と周辺の公表データから、あるべき保健対策について検討した。3.65項目から成る自閉的症状の尺度(対人応答性尺度(Social Responsiveness Scale; SRS))の短縮版の作成を目的として項目反応理論(Item Response Theory: IRT)によって尺度特性の分析を行い、児童版10項目、成人版10項目を選定した。4.東京近郊エリアに在住する交代勤務に従事したことのない20歳以上の男女348名(平均年齢44.1±15.2歳、20-79歳、M/F=145/203)を対象に不眠症の評価尺度として国際的にも広く認知されているアテネ不眠尺度(Athenes insomnia scale; AIS)等を施行した。
結果と考察
1.有効回答者 (n=496) の勤務先については「都道府県保健所」(31.25%) が最も多く「市町村保健センター」(26.81%)、「市町村」(21.37%) と合わせ全体の74.44%を占めた。「精神保健に専従している」のは 39.72%であった。45.36%が精神保健以外の相談について精神保健(心理社会)的要素があると感じていた。これらの精神保健(心理社会)的要素がある相談業務に対応できているという意識は低く、それに呼応して精神保健(心理社会)的要素がある相談業務について対応が困難であると強く感じられていた。2.平成22年と25年では若年者が男女ともに若干増加していたが、国民全体での心理的苦痛を感じる者の割合は平成22年が10.4%だったのに対し、平成25年は10.5%であり変化は無かった。一方、自殺率に関しては平成22年が人口10万対23.1であったものが、25年は20.3(人口調整22年基準)に減少している。また気分障害・不安障害の総患者数は平成23年-26年で、152.9万人-184万人と推計されていた。3.児童版、成人版ともSRS短縮版の信頼性と妥当性が示された。4.AISがCES-D(r2 = .40)およびSTAI-S(r2 = .223)、STAI-T(r2 = .294)と最も強く相関した。
結論
今回のアンケート調査により、都道府県市町村の保健医療福祉専門職員・精神保健相談員が従事する精神保健外相談においてメンタルヘルスに関する相談の割合は高く、有効かつ効率的に相談業務を行うため様々なニーズが現場にあることが把握された。本研究の母体である政策研究が目標とする現場支援のための初期対応・病態毎対応モジュール作成にはより具体的、詳細な情報が必要である。幅広く存在する地域における心理的苦痛を感じる者に対して、適切なスクリーニング、より低強度の介入など保健領域が貢献する可能性は高いのではないかと考える。それは精神保健相談だけでなく、より幅広い保健全般における取り組みが必要ではないかと考えられた。市町村の発達障害に関連したこころの健康領域の対人支援職は、SRS短縮版のような簡便でかつ信頼性と妥当性の検証された評価尺度の用い方に習熟し、スクリーニングや支援の際に適切に用いることで支援の質の向上が期待される。相談業務で遭遇する睡眠障害を早期に同定する診断モジュールの作成において、アテネ不眠尺度がメンタルヘルスに問題のある相談者を簡便にスクリーニングすることのできる臨床評価尺度として有用であると判断された。

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201616028Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
29,900,000円
(2)補助金確定額
29,900,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,896,495円
人件費・謝金 12,681,466円
旅費 1,419,557円
その他 7,002,482円
間接経費 6,900,000円
合計 29,900,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-03-09
更新日
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