意思疎通が困難な人に対する人的及びICT技術による効果的な情報保障手法に関する研究

文献情報

文献番号
201616016A
報告書区分
総括
研究課題名
意思疎通が困難な人に対する人的及びICT技術による効果的な情報保障手法に関する研究
課題番号
H28-身体・知的-一般-010
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 哲也(新潟大学 自然科学系(工学部))
研究分担者(所属機関)
  • 小林 真(筑波技術大学 保健科学部)
  • 南谷 和範(大学入試センター 研究開発部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
5,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
視覚障害者のコミュニケーション(ここでは文字や図情報のやり取りを指す)を支援する制度・サービスとして代読・代筆・点訳・音訳・図訳がある.これらサービスの利用状況と,利用者・未利用者の要望を把握し,今後求められるサービス提供体制を検討する際の客観的データとするため,視覚障害者を対象とするアンケート調査を実施する.
研究方法
調査の実施は,社会福祉法人日本盲人会連合に委託した.日本盲人会連合は,同連合傘下の61団体及び,同連合の5協議会へアンケート調査協力依頼と調査票を送付し,各5名ずつ回答を依頼した.調査票はメール(テキストファイル)で送り,回答もメールで受け付けた.点字版の調査票を希望する人には点字版の調査票を送り,点字による回答も受け付けた.調査期間は2017年2月10日から同年3月17日までとした.
調査では次の6種類の内容について尋ねた:回答者の個人属性,代読・代筆サービスの利用状況と要望,プライベート点訳サービスの利用状況と要望,プライベート音訳サービスの利用状況と要望,プライベート図訳サービスの利用状況と要望.

結果と考察
回答者は202人である.代読・代筆サービスは回答者の73%,点訳サービスは42%,音訳サービスは44%,触図訳サービスは8%が利用していた.
1. 代読・代筆サービスについて
調査開始当初,首都圏はサービスを提供する自治体が多く,サービスの利用率が高いと想定したが,今回の調査結果では,代読・代筆サービスの利用率に自治体の区分間の有意な差は見られなかった.これは,福祉制度としての代読・代筆サービスを同行援護者から受ける人が多かったためだと考えられる.
家族・知人等のみに依頼している回答者の中で,写真,図,イラスト,グラフ,表の説明が分からなかったという選択肢を選んだ人が多かった.現在では読み書き支援の講習会が随所で開かれており,分かりやすい説明の仕方を学ぶ機会はあるが,家族・知人等にそれに参加してくれとは頼みづらい.そこで,障害者の家族・知人向けに,図や表などの読み上げ方法に関する簡単なマニュアルが作成・配布されると効果的だと思われる.
2. 点訳サービスについて
プライベート点訳サービスについては,専門書,書類・会議・講演会資料,楽譜・歌詞,医療・福祉関係の専門書・実用書など,仕事にかかわる文書の点訳依頼が多いこと,これらの点訳を点訳サークルと点字図書館が主に担っていること,サービス利用上の課題として専門書の点訳に時間がかかることなどが明らかになった.現在では点訳ソフトウェアが実用的に使われているが,専門書故に点訳ソフトウェアのみでは対応できず,人的支援に頼らざるをえないのかもしれない.専門書の内容とその点訳上の課題について,視覚障害者や点訳者を対象にインタビューを通じて詳しく話を伺うことで問題の所在を的確に捉え,対応策案の提示につなげたい.
3. 音訳サービスについて
点訳とは異なる音訳サービスの利用状況の特徴として,専門書だけでなく小説・雑誌・ノンフィクションといった一般書の依頼が多いこと,利用頻度が点訳よりも高いことなどが明らかになった.利用上の課題として,専門書だけでなく一般書についても音訳に時間がかかることが指摘された.音訳の作業は下調べと読み上げに分けられ,読み上げそのものの時間を縮めることは難しい.このため,時間の短縮を図ることができるのは下調べ部分のみとなる.下調べでは,正確に読み下すことと,レイアウトがある場合にどのように説明するかというプランを立てることなどが行われる.これらを比較的短い時間で行うには,音訳者の熟練が必要とされる.あるいは,下調べにおけるあらゆる疑問点に答えてくれる機関や人の存在も,下調べ時間の短縮に効果的かと思われる.
4. 触図訳サービスについて
触図訳サービスは単体で行われることは希で,点訳の一部として点訳サービスの提供者によって実施されており,その利用者数は点訳・音訳に比べて圧倒的に少ない.触図訳文書を見ると地図が最も多い.地図は歩行用の道路地図だけでなく,駅の構内図,鉄道の路線図,施設内の案内図など,ニーズは多岐にわたる.サービス利用上の課題はここでも時間がかかることであり,ほかに触図訳特有としては分かりやすい図を作ることの難しさや頼むところがないといったことが挙げられる.
結論
視覚障害者の代読・代筆・点訳・音訳・触図訳サービスの利用状況と要望を全国規模で調査した.点字の利用率や代読・代筆の利用率から推察するに,情報取得に積極的な人202人から回答が集まった.データのクロス集計により,サービスの利用率,対象となる文書,利用頻度,利用上の問題と,サービス提供者や地域の違いとの関係を明らかにした.

公開日・更新日

公開日
2017-05-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-05-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201616016Z