文献情報
文献番号
201615002A
報告書区分
総括
研究課題名
ポピュレーションアプローチによる認知症予防のための社会参加支援の地域介入研究
課題番号
H27-認知症-一般-001
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
竹田 徳則(星城大学 リハビリテーション学部)
研究分担者(所属機関)
- 近藤 克則(千葉大学 予防医学センター)
- 平井 寛(山梨大学 生命環境学部)
- 加藤 清人(平成医療短期大学 リハビリテーション学科)
- 鄭 丞媛(ジョン スンウォン)(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 老年社会学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
3,547,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究3年間での目的は,地域住民が運営主体の通いの場を活用した地域介入の長期追跡と,そのデータ分析による根拠に基づいた効果的で効率的な介護予防・認知症予防の介入法を示すことである.
本研究2年目2016年度の主目的は,1.通いの場展開状況把握と2015年度日本老年学的評価研究(JAGES)プロジェクト参加市町通いの場調査の横断分析,2.蓄積データを用いた認知症発症関連要因分析,3.認知症予防介入に向けた地域診断支援システム構築と試用,4.JAGESプロジェクト参加市町村在住高齢者対象調査の実施であった.
本研究2年目2016年度の主目的は,1.通いの場展開状況把握と2015年度日本老年学的評価研究(JAGES)プロジェクト参加市町通いの場調査の横断分析,2.蓄積データを用いた認知症発症関連要因分析,3.認知症予防介入に向けた地域診断支援システム構築と試用,4.JAGESプロジェクト参加市町村在住高齢者対象調査の実施であった.
研究方法
研究方法は,目的1.厚生労働省平成27年度「介護予防に資する住民運営の通いの場の展開状況」の分析及び2015年度実施JAGESプロジェクト参加8市町通いの場ボランティア代表155人(155箇所)と参加者2,983人のデータを用い健康行動や心理社会指標,生活機能の記述統計分析.
目的2.蓄積パネルデータを用い心理社会生活機能と地域要因や物忘れなど認知症発症要因についてロジスティック回帰分析等を用いた分析.
目的3.閲覧ソフトとして,欧米諸国の行政や国際機関などで利用されているInstantAtlas TMを用いたシステム構築.
目的4.JAGESプロジェクト参加40市町村約40万人対象郵送自記式調査の実施.
目的2.蓄積パネルデータを用い心理社会生活機能と地域要因や物忘れなど認知症発症要因についてロジスティック回帰分析等を用いた分析.
目的3.閲覧ソフトとして,欧米諸国の行政や国際機関などで利用されているInstantAtlas TMを用いたシステム構築.
目的4.JAGESプロジェクト参加40市町村約40万人対象郵送自記式調査の実施.
結果と考察
主結果として,目的1.平成27年度厚生労働省公開データを用いた分析では,JAGESプロジェクト参加34市町村で通いの場「あり」31市町村,箇所数計3,615箇所,参加者は女性が8割を占め,開催頻度は月複数回と月1回がともに半数,1箇所あたり参加者実人数の平均は21.3人,別途算出した各市町村の65歳以上全高齢者に対する参加率は,全体では3.0%,31市町村のうち厚生労働省の目標値である10%超えは4市町であった.
2015年度調査データ分析では,通いの場155箇所の運営母体は社協が半数以上,会場は公民館が約7割,開催頻度は月1回程度4割,月複数回が5割,開催時間は90-2時間と3時間以上が各5割,登録ボランティアは平均1箇所10.5人で女性8.2人,1回開催あたり平均運営ボランティアは7.1人,平均参加者21.3人であった.
通いの場参加2,983人の要介護リスク者割合では,生活機能低下3.3%で認知機能低下48.7%,参加者において閉じこもりが最も多い市町33.3%,最も少ない市町0%で33.3%ポイントの差がみられた.ボランティアでは,認知機能低下が最も多い市町49.5%,最も少ない市町37.3%と12.2%ポイントの差があった.
また,2,983人における通いの場参加後の心理社会的な変化では,参加者・ボランティアともに,健康意識や人との交流機会で8割以上が増加していた.また,それらはうつ状態別でみても,「うつ傾向」7割以上,「うつあり」6割以上と半数以上が良好な変化であった.そして2,983人のうち新たに運動を始めた者は半数,「うつ傾向」で47.4%,「うつあり」は37.9%が運動を始めていた.種目は全体では「散歩・ウォーキング」が6割,「体操」で5割,始めた運動の数では2つ以上が4割,女性は「体操」,男性は「グランドゴルフ」がそれぞれ高い割合を示していた.
目的2.武豊町サロン参加有無別高齢者7年間の追跡による離散時間ロジスティック分析の結果,サロン参加「あり」では認知症発症リスクが3割減であった.4市1町在住高齢者約6,800人を5年間追跡し13変数(仕事・うつ・スポーツ活動など)15点満点からなる認知症発症チェックリスト開発し,3点の3.3%に対して9点以上は43%の発症割合を確認した.
サロンよる地域ソーシャル・キャピタル指標(人々は他人の役に立とうとする)における地域住民の変化では,サロン開催の場地域750m圏にて2007年の89.7%が2010年には92.2%で向上していた.また,2010年の物忘れ「あり」を予測するオッズ比は2003年と2007年の2時点とも社会参加「なし」1に対して,同社会参加「あり」は0.49で半減であった.
目的3.閲覧ソフトとして欧米諸国の行政や国際機関などで利用されているInstantAtlas TMを用いた.エクセル上にニーズ調査や参加者データを載せると,それを集計して閲覧ソフトに情報を反映させ,棒グラフなどによりサロン別,地域別の比較分析がこれまでよりも容易かつ効果的にできると考えられた.
目的4.JAGES参加40市町村約40万人に送付,約20人回収,回収率約69.5%)であった.
2015年度調査データ分析では,通いの場155箇所の運営母体は社協が半数以上,会場は公民館が約7割,開催頻度は月1回程度4割,月複数回が5割,開催時間は90-2時間と3時間以上が各5割,登録ボランティアは平均1箇所10.5人で女性8.2人,1回開催あたり平均運営ボランティアは7.1人,平均参加者21.3人であった.
通いの場参加2,983人の要介護リスク者割合では,生活機能低下3.3%で認知機能低下48.7%,参加者において閉じこもりが最も多い市町33.3%,最も少ない市町0%で33.3%ポイントの差がみられた.ボランティアでは,認知機能低下が最も多い市町49.5%,最も少ない市町37.3%と12.2%ポイントの差があった.
また,2,983人における通いの場参加後の心理社会的な変化では,参加者・ボランティアともに,健康意識や人との交流機会で8割以上が増加していた.また,それらはうつ状態別でみても,「うつ傾向」7割以上,「うつあり」6割以上と半数以上が良好な変化であった.そして2,983人のうち新たに運動を始めた者は半数,「うつ傾向」で47.4%,「うつあり」は37.9%が運動を始めていた.種目は全体では「散歩・ウォーキング」が6割,「体操」で5割,始めた運動の数では2つ以上が4割,女性は「体操」,男性は「グランドゴルフ」がそれぞれ高い割合を示していた.
目的2.武豊町サロン参加有無別高齢者7年間の追跡による離散時間ロジスティック分析の結果,サロン参加「あり」では認知症発症リスクが3割減であった.4市1町在住高齢者約6,800人を5年間追跡し13変数(仕事・うつ・スポーツ活動など)15点満点からなる認知症発症チェックリスト開発し,3点の3.3%に対して9点以上は43%の発症割合を確認した.
サロンよる地域ソーシャル・キャピタル指標(人々は他人の役に立とうとする)における地域住民の変化では,サロン開催の場地域750m圏にて2007年の89.7%が2010年には92.2%で向上していた.また,2010年の物忘れ「あり」を予測するオッズ比は2003年と2007年の2時点とも社会参加「なし」1に対して,同社会参加「あり」は0.49で半減であった.
目的3.閲覧ソフトとして欧米諸国の行政や国際機関などで利用されているInstantAtlas TMを用いた.エクセル上にニーズ調査や参加者データを載せると,それを集計して閲覧ソフトに情報を反映させ,棒グラフなどによりサロン別,地域別の比較分析がこれまでよりも容易かつ効果的にできると考えられた.
目的4.JAGES参加40市町村約40万人に送付,約20人回収,回収率約69.5%)であった.
結論
本年度の横断及び縦断研究を踏まえると,ポピュレーションアプローチによる通いの場を活用した社会参加支援と地域づくりは介護予防・認知症予防に有用なことが示唆された.
公開日・更新日
公開日
2017-05-23
更新日
-