生活行為障害の分析に基づく認知症リハビリテーションの標準化に関する研究

文献情報

文献番号
201614003A
報告書区分
総括
研究課題名
生活行為障害の分析に基づく認知症リハビリテーションの標準化に関する研究
課題番号
H27-長寿-一般-004
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
池田 学(大阪大学大学院 医学系研究科・精神医学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 石川 智久(熊本大学大学院生命科学研究部神経精神医学分野)
  • 田中 響(熊本大学医学部附属病院神経精神科)
  • 川越 雅弘(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 北村 立(石川県立高松病院)
  • 堀田 聰子(国際医療福祉大学大学院)
  • 小川 敬之(九州保健福祉大学大学院)
  • 田平 隆行(鹿児島大学医学部保健学科)
  • 堀田 牧(熊本大学医学部附属病院神経精神科)
  • 村田 美希(熊本大学医学部附属病院神経精神科)
  • 吉浦 和宏(熊本大学大学院生命科学研究部神経精神医学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
5,637,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新オレンジプランが掲げる「認知症患者の意思が尊重された地域生活の実現」とは、認知症者の在宅における日常生活の自立・維持であり、ADL・IADLを含む日常の生活行為に障害がある(以下、生活行為障害)と、本人の意思を尊重した地域生活は成り立たない。本研究では認知症者のADL・IADL行為を分析し、認知症疾患別・重症度別に分析・評価を行い、認知症者の生活行為の維持を目的とした認知症リハビリテーションのガイドライン確立を目指している。
 初年度は、アルツハイマー病(AD)におけるMMSE悪化とADL・IADLの自立低下に関連性を示す結果を得たが、ADの生活行為障害の起因由来の究明には至らなかった。
 今年度は、前年度のADデータと、本研究と同様の検査を行った健常高齢者のデータを対象とし、両者のADL・IADL行為の自立に関する比較検証を行い、ADと健常者の生活行為障害の原因を明らかにすることで、ADの障害を焦点化できる評価モデルの確立を目的とした。
研究方法
ADと健常者の生活行為を比較検証するにあたり、PSMS・IADLにおける14項目のADL・IADL行為を、①各行為の作業工程分析を行い、②①を認知機能面と運動機能面から動作分析を行い、指標となる生活行為の基本動作を設定した。
次に、2007年4月から2015年11月の期間、熊本大学医学部附属病院神経精神科認知症専門外来に初診し、ADと診断された患者635例中、65歳以上の患者567例(AD群)(M/F:183, 384. 平均年齢79.3±5.8歳,MMSE20.3±4.0)および、健常群との比較のため、AD群の内、MMSE24点以上の患者116例(M/F:50, 66. 平均年齢78.5±5.5歳))と、健常群として2004年4月から2006年4月に行われた第3回中山町研究に参加した高齢者の内、MMSE24点以上の健常高齢者691例(M/F:313, 378. 平均年齢73.7±5.6歳)のデータを基に、ADの生活行為障害がどの要因に強く影響されているのか、③AD群と健常群のPSMS・IADLおよびMMSEから生活行為の自立度を比較分析した。
結果と考察
ADLではAD群・健常群とも「移動能力」が早期に悪化するが、AD群は70歳代から、健常群では80歳代からの悪化であった。また、AD群では「着替え」「排泄」の順に行為が悪化するが、健常群では認められなかった。さらにMMSE24点以上のAD群と健常群では身体機能面の悪化が要因となる生活行為障害の可能性が示されたが、AD群は健常群よりもADL悪化が5~10歳早いことが示唆された。一方、IADLでは「服薬管理」「金銭管理」の悪化はMMSE24点以上のADでも早期から出現することが認められた。
AD群全体の結果より、ADの生活行為障害は「移動能力」に顕著に表れた。外出する、台所に立つ、ベッドに入るなど、行為の遂行には、その行為を行う場所や位置への「移動」を伴うため、「移動能力」に有する認知機能および身体機能の維持は重要であることが示された。
一方、MMSE24点以上のAD群と健常群との比較対象では、ADL悪化の年齢に10歳以上の開きがあること、また、生活行為の中で「金銭管理」「服薬管理」といった記憶や手順、計算能力、注意力など高次な遂行機能を求められる行為は、MMSEの悪化に伴った行為の悪化を示しており、手順や工程の多さ、複雑さから、本人が混乱しやすく、認知機能の低下が行為の悪化に影響しているため、自立の維持が難しい行為であることが考えらえた。
これらより、健常者が身体機能の悪化で生活行為障害が出現することに対し、ADの生活行為障害は身体機能悪化よりも、早期から認知機能の悪化を起因とする障害であることが明確となった。
結論
ADの生活行為障害は認知機能の悪化に影響されていることから、ADの生活行為障害に対する適切なリハビリテーションを提供するには、ADの生活行為における疾患特性が標準化された評価表が必要となる。
しかし、既存の評価表の多くは健常者の生活行為を対象としており、認知症者の生活行為障害を評価するには限界がある。そこで、ADの生活行為障害を端的に評価できるモデルを作成するため、PSMS・IADLの行為を、「排泄」「食事」「更衣」「整容(身繕い)」「移動」「入浴」「電話」「買い物」「調理」「家事(調理・洗濯以外)」の10項目に絞り、各行為の起点と終点を定め、作業工程分析と動作分析を行い、認知症者の生活行為を動作・工程に沿って評価を行い、生活行為の一連の動作の流れを把握しながらリハ介入点が見出せるADの生活障害評価モデルを作成した。
今後は、在宅生活を行っているAD患者を対象に、ADの生活障害評価モデルを施行し、実用性と効果について検討を行う。

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201614003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,328,000円
(2)補助金確定額
7,328,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,917,669円
人件費・謝金 204,996円
旅費 2,454,332円
その他 1,060,003円
間接経費 1,691,000円
合計 7,328,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
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