文献情報
文献番号
201613001A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性の痛み診療・教育の基盤となるシステム構築に関する研究
課題番号
H27-痛み-指定-001
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
牛田 享宏(愛知医科大学医学部 学際的痛みセンター/運動療育センター(兼任))
研究分担者(所属機関)
- 山下 敏彦(札幌医科大学 整形外科学講座)
- 矢吹 省司(福島県立医科大学医学部 疼痛医学講座)
- 木村 慎二(新潟大学医歯学総合病院 リハビリテーション科)
- 山口 重樹(獨協医科大学医学部 麻酔科学講座)
- 加藤 実(日本大学医学部 麻酔科学系麻酔科学分野)
- 井関 雅子(順天堂大学医学部 麻酔科学ペインクリニック講座)
- 北原 雅樹(東京慈恵会医科大学附属病院 ペインクリニック)
- 住谷 昌彦(東京大学医学部附属病院 緩和ケア診療部/麻酔科・痛みセンター)
- 松平 浩(東京大学医学部附属病院 22世紀医療センター 運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座)
- 川口 善治(富山大学医学部 整形外科)
- 中村 裕之(金沢大学 医薬保健研究域医学系環境生態医学・公衆衛生学)
- 松原 貴子(日本福祉大学 健康科学部リハビリテーション学科)
- 笠井 裕一(三重大学 脊椎外科・医用工学 )
- 福井 聖(滋賀医科大学医学部 麻酔科学講座)
- 柴田 政彦(大阪大学大学院 医学系研究科疼痛医学寄附講座)
- 田倉 智之(一般社団法人受療者医療保険学術連合会)
- 西田 圭一郎(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科機能制御学講座)
- 尾形 直則(愛媛大学大学院 医学系研究科整形外科学)
- 田口 敏彦(山口大学大学院 医学系研究科)
- 河野 崇(高知大学 教育研究部医療学系 麻酔科学・集中治療医学講座)
- 西尾 芳文(徳島大学大学院 理工学研究部)
- 細井 昌子(九州大学 心療内科)
- 門司 晃(佐賀大学医学部 精神医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 慢性の痛み政策研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
39,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本邦の医療システムに適合した慢性痛治療体制の構築を目的として、諸外国の取り組みや現状の問題点などを研究し、19施設で集学的慢性痛診療体制による診断・治療介入を試行してきた。その結果、難治性の疼痛症例においても痛みの程度、生活障害度などの改善が有ることがわかってきた。しかし、縦割り医療の中で集学的な慢性痛診療体制を構築し根付かせるためには、その診療システムの社会的有益性の検証、どのような慢性痛患者に有効性が高いかの検証を行い、医療経済学的な面を含めて本邦の状況に適合するものを構築していく事が必須である。
そこで今回の研究では、チームの構築に加えて1)チームで多角的に解析して患者群を分類する。その上で2)運動療法、教育・認知行動療法。アプローチ等の介入の効果について検証する。3)センターと地域クリニックとの連携のモデル化を進める。4)慢性痛の対処法についてはNPO法人いたみ医学研究情報センターや患者団体と協力し国民への普及啓発を進める。5)子宮頸がんワクチン接種後の痛みの診療を行う。
そこで今回の研究では、チームの構築に加えて1)チームで多角的に解析して患者群を分類する。その上で2)運動療法、教育・認知行動療法。アプローチ等の介入の効果について検証する。3)センターと地域クリニックとの連携のモデル化を進める。4)慢性痛の対処法についてはNPO法人いたみ医学研究情報センターや患者団体と協力し国民への普及啓発を進める。5)子宮頸がんワクチン接種後の痛みの診療を行う。
研究方法
1)集学的診療体制の整備と運営
A.器質的な医療の専門家、B.精神心理の診療の専門家、C.診療を補助するものがチームを構成し、
カンファレンスなどで連携して分析して診療する体制を構築する。
2)共通ツールによる患者評価
簡易疼痛調査、PDAS、HADS、PCS、EQ-5D、PSEQ、アテネ不眠尺度、ZARIT介護負担尺度、治療満足度
およびIASPによるICD11の慢性痛分類による患者評価を行う。
3)運動療法と教育・認知行動療法介入方法のBrush-up
運動介入ツールの改良と介入の評価、 外来診療による教育・認知行動療法介入評価、 集中プログラム
による教育・認知行動療法介入の評価を行う。
4)周辺クリニックとの連携
患者が自ら自分の状態を管理するデバイスを作成し、周辺クリニックと連携していくツールとして用い
る事業を行う。
5)慢性疼痛に関する医療経済疫学調査
志賀町コホート研究において慢性痛と医療費の調査を行う。
6)普及啓発および患者教育用ツールの作成
市民セミナー、医療者研修会についてはNPO法人いたみ医学研究情報センター協力し、各地で行う。
ホームページにて本研究班のミッションの広報と患者教育ページおよびビデオを作成する。
A.器質的な医療の専門家、B.精神心理の診療の専門家、C.診療を補助するものがチームを構成し、
カンファレンスなどで連携して分析して診療する体制を構築する。
2)共通ツールによる患者評価
簡易疼痛調査、PDAS、HADS、PCS、EQ-5D、PSEQ、アテネ不眠尺度、ZARIT介護負担尺度、治療満足度
およびIASPによるICD11の慢性痛分類による患者評価を行う。
3)運動療法と教育・認知行動療法介入方法のBrush-up
運動介入ツールの改良と介入の評価、 外来診療による教育・認知行動療法介入評価、 集中プログラム
による教育・認知行動療法介入の評価を行う。
4)周辺クリニックとの連携
患者が自ら自分の状態を管理するデバイスを作成し、周辺クリニックと連携していくツールとして用い
る事業を行う。
5)慢性疼痛に関する医療経済疫学調査
志賀町コホート研究において慢性痛と医療費の調査を行う。
6)普及啓発および患者教育用ツールの作成
市民セミナー、医療者研修会についてはNPO法人いたみ医学研究情報センター協力し、各地で行う。
ホームページにて本研究班のミッションの広報と患者教育ページおよびビデオを作成する。
結果と考察
1)集学的診療体制の整備と運営
19大学でチーム診療体制を構築した。カンファレンスを定期的に実施できない施設については
カンファレンスシートで代用した。
2)共通ツールによる患者評価
初診5698症例からのデータ収集を行った。フォローしたケースでは共通スコアのほぼ全ての項目で改善
が得らた。ICD11分類では、原発性慢性痛のカテゴリに入るものが多いことがわかった。
3)運動療法と教育・認知行動療法介入方法のBrush-up
A)「いきいきリハビリノート」の改良を行った。
B)入院及び外来集中プログラムによる教育・認知行動療法介入では入院および外来モデルともに難治性
症例の改善が得られた。
4)周辺クリニックとの連携
EQ-5D等を患者が自ら管理するツールを作成した。今後、周辺施設との連携ツールとして用いる事業を
行う。
5)慢性疼痛に関する医療経済疫学調査
志賀町コホートでは慢性痛患者は女性に多く、有病者の医療費は16542円±17560円と推測された。
6)普及啓発および患者教育用ツールの作成
市民セミナーを3回、医療者研修会を3回全国で共催した。
ホームページで本研究班の各研究施設の診療情報や連絡先の公開を行った。
外来患者向けの教育ビデオを作成し、そのネット配信も行った。
19大学でチーム診療体制を構築した。カンファレンスを定期的に実施できない施設については
カンファレンスシートで代用した。
2)共通ツールによる患者評価
初診5698症例からのデータ収集を行った。フォローしたケースでは共通スコアのほぼ全ての項目で改善
が得らた。ICD11分類では、原発性慢性痛のカテゴリに入るものが多いことがわかった。
3)運動療法と教育・認知行動療法介入方法のBrush-up
A)「いきいきリハビリノート」の改良を行った。
B)入院及び外来集中プログラムによる教育・認知行動療法介入では入院および外来モデルともに難治性
症例の改善が得られた。
4)周辺クリニックとの連携
EQ-5D等を患者が自ら管理するツールを作成した。今後、周辺施設との連携ツールとして用いる事業を
行う。
5)慢性疼痛に関する医療経済疫学調査
志賀町コホートでは慢性痛患者は女性に多く、有病者の医療費は16542円±17560円と推測された。
6)普及啓発および患者教育用ツールの作成
市民セミナーを3回、医療者研修会を3回全国で共催した。
ホームページで本研究班の各研究施設の診療情報や連絡先の公開を行った。
外来患者向けの教育ビデオを作成し、そのネット配信も行った。
結論
19大学の施設で集学的・学際的痛みセンターの構築に取り組んできた。施設による違いなどから様々な形態での運用となっているが、ドクターショッピングを繰り返した患者についても、集学的な取り組みを行うことでNRS、ロコモ25、PDAS、HADS、PCS、EQ-5D、アテネ不眠尺度において有意な改善がみられていた。集学的なアプローチによる治療で慢性痛の改善が得られることは明確になってきており、今後は、集学的な痛みセンターが社会・医療界の中で果たす役割を確立していくための取り組みを進めていく必要がある。また、慢性的な痛みは身体の器質的な問題だけでなく機能的な変化が大きく関与しており、患者を取り巻く社会環境なども痛みの病態に大きく関わっている。そのため、生物心理社会的な概念で取り組むことが必要であり医学的対応のみならず、広く国民・患者に慢性痛の理解と対応を普及啓発していくことが求められる。
公開日・更新日
公開日
2017-05-31
更新日
-