ソーシャルマーケティング手法を用いた心停止下臓器提供や小児の臓器提供を含む臓器提供の選択肢提示を行う際の理想的な対応のあり方の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201612007A
報告書区分
総括
研究課題
ソーシャルマーケティング手法を用いた心停止下臓器提供や小児の臓器提供を含む臓器提供の選択肢提示を行う際の理想的な対応のあり方の確立に関する研究
課題番号
H28-難治等(免)-一般-102
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
江口 有一郎(国立大学法人佐賀大学 医学部 附属病院 肝疾患センター)
研究分担者(所属機関)
  • 市川 光太郎(北九州市立八幡病院)
  • 名取 良弘(飯塚病院脳神経外科・脳神経外科)
  • 中尾 一彦(国立大学法人長崎大学大学院医歯薬学総合研究科・消化器内科)
  • 江口 晋(国立大学法人長崎大学大学院医歯薬学総合研究科・移植外科学・消化器外科学)
  • 平井 啓(国立大学法人大阪大学・未来戦略機構)
  • 田中 英夫(愛知県立がんセンター)
  • 竹田 昭子(長崎県健康事業団)
  • 大宮 かおり(日本臓器移植ネットワーク)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(免疫アレルギー疾患等政策研究 移植医療基盤整備研究分野)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
9,029,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
選択肢提示を行う医師やコーディネーター(Co)の心理的負担を減らしつつ効果的な選択肢提示を行うための方法を見出し、そのマニュアルや説明ツールの開発や選択肢提示の理想的な対応のあり方に関する提言と展開を行う。同意取得前後から判定、臓器提供までの臓器提供施設の経済的負担がどの程度あり、どのように負担しているのかを調査する。
研究方法
選択肢提示を行う医師個人に対する心理的アプローチとしては、小児の脳死下臓器移植症例に特有の課題を明らかにするため、分担研究者の施設と一般社団法人小児救急医学会を対象とした意識調査を基に騎乗的な検討を行う。また急性期病院において、医師の専門領域により治療方針(特に人生の最終段階の医療)に差異が生じるかを明らかにするため、救急専門医と脳神経外科専門医を対象とした仮説立てのためのヒアリング調査及び仮説検証のためのアンケート調査を実施する。臓器提供が可能な施設を対象とした制度・体制的アプローチとしては、脳死下臓器提供症例発生時、施設側が負担する医療コストを明らかにするため、実際に脳死判定後に臓器提供を行った症例を対象に脳死判定後から摘出までの生体管理に必要とされた費用を保険診療として計上すると仮定し、これにかかる保険請求額を試算する。また「日本臓器移植ネットワークのデータを活用したアセスメント」では、臓器提供が可能な医療機関及び医師が抱える選択肢提示における課題を特定・解明しするため、日本臓器移植ネットワークが保有するさまざまな臓器移植に関するデータを精査する。
結果と考察
小児救急医療関係者は小児でも脳死を死と認める割合が過半数と有意に増加するなど、小児救急医療者の小児脳死に対する理解は向上していると考えられた。一方で、実際に現場での説明において、46%も「脳死」と言葉を使わずに家族に対応し、「脳死」と明言して説明する36.9%を大きく上回るなど、医療者側の意識は高まってはいるものの、実際の現場では家族のわが子の「脳死」の受容において種々の問題を医療者側が抱えていることがわかった。
選択肢提示に関わる医師へのヒアリングにより、救急医と脳神経外科医には明らかな考え方の差があることが明確に確認された。特に人工呼吸器装着については、その担当している疾患の差からも大きな方針の差があった。医療者への半構造化面接から明らかになった選択肢提示行動における促進要因及び阻害要因を基に、選択肢提示に伴う心理的負担を軽減するためのフレームワークの議論を行い、「家族の現状上認識の理解を促進した上で、複数の終末期医療に関するオプションを提示しし、その1つとして臓器提供に関する選択肢を含めるというコミュニケーション」を目的とした、説明ツール(パイロット版)の開発を行った。経済的評価としては、脳死判定後臓器提供を行った5症例を対象とし、脳死判定後から摘出までの生体管理費用を試算したところ、平均合計保険診療費は337,240円であり、これは脳死臓器提供管理料により充足されていた。しかしレセプトを用いた算定可能な医療費のみの試算であり、人件費など他にかかる費用は試算されていないことが判明した。臓器提供施設のうち脳死下臓器提供の経験があり、院内倫理委員会において承認された施設における、標準的な症例において、入院期間は11日間(死亡宣告後含)。電子カルテオーダーから算出した医療費(A)は1,132,950円、携わった人数はのべ214名。死亡宣告後、レセプトにはあがっているが保険外費用のため請求できなかった費用は327,770円。JOTからの脳死臓器提供管理料(ドナー管理料)81万円と(A)を比較すると(A)が322,950円過剰であった。人件費に係る対価は皆無であった。
結論
選択肢提示の障害として、選択肢提示を行う医師個人における心理的負担と、それらの医師が所属する臓器提供が可能な施設における制度・体制的課題、双方が絡み合っていることが判明した。次年度以降、これらの明らかになった課題について更なる定量的検証を進めるとともに、主治医の選択肢提示に伴う心理的負担の軽減に寄与すると考えられる説明ツール(パイロット版)のパイロット導入を行い、その効果(選択肢提示件数の増加およびそれに伴う承諾件数の増加の有無)を検証する。

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201612007Z