文献情報
文献番号
201612005A
報告書区分
総括
研究課題名
非血縁者間臍帯血移植における移植造血幹細胞数と移植成績の相関-移植用臍帯血有効利用への応用-
課題番号
H27-難治等(免)-一般-101
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
薗田 精昭(関西医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 藤岡 龍哉(関西医科大学 医学部)
- 松岡 由和(関西医科大学 医学部)
- 野村 昌作(関西医科大学 医学部)
- 藤田 真也(関西医科大学 医学部)
- 藤村 吉博(日本赤十字社近畿ブロック血液センター)
- 小川 啓恭(兵庫医科大学 医学部)
- 井上 雅美(大阪府立母子保健総合医療センター)
- 中前 博久(大阪市立大学 医学部)
- 畑中 一生(大阪赤十字病院 血液内科)
- 中村 文明(国立循環器病研究センター 循環器病統合情報センター)
- 浅野 弘明(京都府立医科大学 大学院保健看護学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(免疫アレルギー疾患等政策研究 移植医療基盤整備研究分野)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
3,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
非血縁者間臍帯血移植(UCBT)は、非血縁者間骨髄移植と並び、本邦における造血幹細胞移植の中で重要な移植法として確立され、近年では年間1,200例実施されている。しかしながら、その根幹をなす臍帯血に含まれる造血幹細胞(HSC)の本体は、十分に明らかにされていない。その結果、生着不全や造血回復の遅延などの臨床的な課題は未だに克服されていない。
本研究の目的は、移植用臍帯血に含まれているHSC数を独自に開発・確立した方法により正確に測定し、移植成績(特に、生着不全や造血回復)との関連を明らかにすることにより、安全で効率的なUCBTを確立することである。
本研究の成果により、従来、臍帯血バンクの調整前基準以下で廃棄されていた多くの臍帯血を移植に用いること(臍帯血のリクルート)が可能になるものと期待される。
本研究の目的は、移植用臍帯血に含まれているHSC数を独自に開発・確立した方法により正確に測定し、移植成績(特に、生着不全や造血回復)との関連を明らかにすることにより、安全で効率的なUCBTを確立することである。
本研究の成果により、従来、臍帯血バンクの調整前基準以下で廃棄されていた多くの臍帯血を移植に用いること(臍帯血のリクルート)が可能になるものと期待される。
研究方法
1)研究方法開発の基礎となる研究成果
研究代表者は、最近、CD133抗原がヒト臍帯血由来CD34-HSCの陽性分子マーカーであることを明らかにした(Leukemia 28:1308,2014)。興味あることに、CD133抗原はCD34+/-HSCの共通の陽性分子マーカーであり、すべてのSCID-repopulating cell (SRC)活性はCD133+細胞分画中に認められた。限界希釈実験結果より、18Lin-CD34+CD133+細胞中のCD34+HSCの頻度は、1/142と計算された。この成果に基づいて、臍帯血中に存在するCD34+HSC数を正確に算定する3 laser 5 color FACS法を開発した。
2)移植用臍帯血中の造血幹細胞(HSC)数の測定法
近畿さい帯血バンクより提供された残余濃縮臍帯血より有核細胞を分離、回収する。次いで、回収した有核細胞より免疫磁気ビーズを用いて11種類の分化抗原陰性(Lin-)細胞を単離する。得られた11Lin-細胞は、7-AAD、18種類の分化抗原に対する抗体、CD34抗原およびCD133抗原に対する抗体を用いて多重染色し、3 laser 5 color FACS法を用いて18Lin-CD34+CD133+細胞の割合を測定する。その後、全有核細胞数と18Lin-CD34+CD133+細胞の割合より、移植用臍帯血中に含まれるCD34+CD133+細胞数を算定する。最終的に、限界希釈実験結果(CD34+CD133+ HSC 1/142個)に基づいて、移植用臍帯血中に含まれるCD34+HSC数を算出する (Leukemia 28:1308-1315,2014参照)。
研究代表者は、最近、CD133抗原がヒト臍帯血由来CD34-HSCの陽性分子マーカーであることを明らかにした(Leukemia 28:1308,2014)。興味あることに、CD133抗原はCD34+/-HSCの共通の陽性分子マーカーであり、すべてのSCID-repopulating cell (SRC)活性はCD133+細胞分画中に認められた。限界希釈実験結果より、18Lin-CD34+CD133+細胞中のCD34+HSCの頻度は、1/142と計算された。この成果に基づいて、臍帯血中に存在するCD34+HSC数を正確に算定する3 laser 5 color FACS法を開発した。
2)移植用臍帯血中の造血幹細胞(HSC)数の測定法
近畿さい帯血バンクより提供された残余濃縮臍帯血より有核細胞を分離、回収する。次いで、回収した有核細胞より免疫磁気ビーズを用いて11種類の分化抗原陰性(Lin-)細胞を単離する。得られた11Lin-細胞は、7-AAD、18種類の分化抗原に対する抗体、CD34抗原およびCD133抗原に対する抗体を用いて多重染色し、3 laser 5 color FACS法を用いて18Lin-CD34+CD133+細胞の割合を測定する。その後、全有核細胞数と18Lin-CD34+CD133+細胞の割合より、移植用臍帯血中に含まれるCD34+CD133+細胞数を算定する。最終的に、限界希釈実験結果(CD34+CD133+ HSC 1/142個)に基づいて、移植用臍帯血中に含まれるCD34+HSC数を算出する (Leukemia 28:1308-1315,2014参照)。
結果と考察
平成28年4月~平成29年3月の1年間で、目標を大きく上回る519本の臍帯血に含まれる CD34+HSC数の測定を行った。従来指標である総有核細胞数(TNC)は、9.6~33.2x10e8個(中央値14.5x10e8個)、CD34+細胞数は、2.1~18.4x10e6個(中央値4.0x10e6個)であった。一方、CD34+HSC数は、71~40,073個(中央値3,876個)と幅広く分布し、臍帯血ユニット間の個体差が非常に大きいことが昨年度の研究結果と同様に確認された。
次に、移植用臍帯血ユニットを、含まれているCD34+HSC数により、四分位を用いて下位群25%、中間群50%、上位群25%の3群に分類した。その結果、下位、中間、上位の各群において、CD34+HSC数は、TNC、CD34+細胞数と相関しなかった。
以上より、従来指標であるTNC, CD34+細胞数は、個々の臍帯血ユニットに含まれているCD34+HSC数を正確に反映していないことが明らかにされた。UCBTは、骨髄移植や末梢血幹細胞移植に比べて生着不全が多く、造血回復が遅延するなど臨床的な課題が多い。そこで、これらの課題を克服するためには、臍帯血ユニットに含まれているCD34+HSC数を正確に測定し、移植後の成績(特に、移植後100日までの生着不全、造血回復)との相関を明らかにする前向き臨床研究が必須不可欠と考えられた。
本研究で、含まれているCD34+HSC数を測定した臍帯血ユニットが、平成28年3月以降に順次、近畿さい帯血バンクで移植用に公開されている。平成28年12月末現在で、公開数162件、提供数48件となっている。その後も公開件数、提供件数共に順調に増加することが期待されている。
次に、移植用臍帯血ユニットを、含まれているCD34+HSC数により、四分位を用いて下位群25%、中間群50%、上位群25%の3群に分類した。その結果、下位、中間、上位の各群において、CD34+HSC数は、TNC、CD34+細胞数と相関しなかった。
以上より、従来指標であるTNC, CD34+細胞数は、個々の臍帯血ユニットに含まれているCD34+HSC数を正確に反映していないことが明らかにされた。UCBTは、骨髄移植や末梢血幹細胞移植に比べて生着不全が多く、造血回復が遅延するなど臨床的な課題が多い。そこで、これらの課題を克服するためには、臍帯血ユニットに含まれているCD34+HSC数を正確に測定し、移植後の成績(特に、移植後100日までの生着不全、造血回復)との相関を明らかにする前向き臨床研究が必須不可欠と考えられた。
本研究で、含まれているCD34+HSC数を測定した臍帯血ユニットが、平成28年3月以降に順次、近畿さい帯血バンクで移植用に公開されている。平成28年12月末現在で、公開数162件、提供数48件となっている。その後も公開件数、提供件数共に順調に増加することが期待されている。
結論
UCBTにおけるHSCの活性指標であったTNC, CD34+細胞数は、個々の臍帯血ユニットに含まれているCD34+HSC数を正確に反映していないことが明らかにされた。今後、現在進行中のCD34+HSC数と移植後の造血回復、生着不全との相関を明らかにする前向き臨床研究が極めて重要になると考えられた。
公開日・更新日
公開日
2017-07-03
更新日
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