HAMならびにHTLV-1陽性難治性疾患に関する国際的な総意形成を踏まえた診療ガイドラインの作成

文献情報

文献番号
201610100A
報告書区分
総括
研究課題名
HAMならびにHTLV-1陽性難治性疾患に関する国際的な総意形成を踏まえた診療ガイドラインの作成
課題番号
H28-難治等(難)-一般-018
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
山野 嘉久(聖マリアンナ医科大学 大学院 先端医療開発学)
研究分担者(所属機関)
  • 中山 健夫(京都大学大学院 健康情報学)
  • 亀井 聡(日本大学医学部 内科学系神経内科学分野)
  • 吉良 潤一(九州大学大学院医学研究院 神経内科学分野)
  • 郡山 達男(広島市立病院機構 広島市リハビリテーション病院)
  • 岡山 昭彦(宮崎大学医学部 内科学講座免疫感染病態学分野)
  • 川上 純(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 展開医療科学講座)
  • 湯沢 賢治(国立病院機構水戸医療センター 臨床研究部移植医療研究室)
  • 中川 正法(京都府立医科大学大学院医学研究科 医療フロンティア展開学)
  • 中村 龍文(長崎国際大学 人間社会学部社会福祉学科)
  • 久保田 龍二(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 難治ウィルス病態制御研究センター)
  • 松浦 英治(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 神経病学講座神経内科・老年病学)
  • 井上 永介(国立成育医療 研究センター  臨床研究開発センターデータ管理部生物統計室)
  • 鴨居 功樹(東京医科歯科大学医学部付属病院 眼科学)
  • 高田 礼子(聖マリアンナ医科大学医学部 予防医学教室)
  • 中島 孝(国立病院機構 新潟病院)
  • 松尾 朋博(長崎大学病院  泌尿器科移植外科生化学室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
11,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HTLV-1感染者は我が国に約108万人存在し、その一部に神経難病HAMや致死率の高い白血病ATLを発症することから、厚生労働行政の上でも重要課題となっている。HAMは、わが国で発見された希少難病であるが、治療方針決定に必要な疾患活動性の分類基準すら確立されておらず、また国際的にも診断基準や重症度分類基準に対する総意形成は不十分であるため、臨床研究や新薬開発、治療アルゴリズム確立に大きな支障を来している。またHAMは専門医が少ないうえ、近年、HTLV-1陽性の免疫性難病患者に対する生物学的製剤等を用いた免疫抑制療法によるHTLV-1感染症やATL発症リスクへの影響、さらに生体腎移植でのHTLV-1新規感染によるHAM発症のリスクなどが報告されていることから、全国的な診療レベルの向上を目指した診療ガイドラインの作成が急務である。
研究方法
本研究では、HTLV-1関連疾患において臨床的に緊急性の高い以下の課題
①HAMの診断・重症度・疾患活動性の分類基準と診療ガイドラインの確立
②HTLV-1陽性難治性疾患患者への免疫抑制療法に関する診療指針の確立
③生体腎移植におけるHTLV-1感染対策に関する指針の確立
について検討を行った。
結果と考察
①ガイドラインの作成は、2016年度に臨床課題の抽出、2017年度にエビデンスの収集と質の評価、2018年度に推奨度の決定と総意形成といったロードマップを予定している。2016年度は、日本神経学会より「HAM診療ガイドライン」作成の承認を得て、学会との連携を確立、またMinds推奨のGRADEシステムに準拠したスコープ案を作成し、重要臨床課題とクリニカルクエスチョン(CQ)、重要アウトカムの決定作業を進めた。またHAMの診断・重症度・疾患活動性の分類基準作成に関しては、患者レジストリデータの解析に基づき、世界初のHAMの排尿障害重症度分類の策定、自然歴の解明と予後因子の同定、運動障害重症度分類案の作成、疾患活動性分類案の作成、HAM患者の生命予後とATL発症率の解明などを達成した。特に排尿障害の新指標の策定は極めて画期的な成果であり、国際HTLV会議でのコンセンサス会議にて、国際的合意形成へ向けた高い評価を受けた。さらに患者レジストリでは、HAMの自然歴、治療の実態と経過、医療経済面など非常に多くの情報が得られており、希少難病研究における極めて有用性の高いツールとして注目を集めていることから、その更なる充実を図りたい。②については、免疫性難病患者において診療上の留意点となる問題を整理し、「HTLV-1陽性と既に判明している患者では免疫抑制治療の開始前にATL合併の有無に関する検査の実施が必要であるか?」といった疑問が、本テーマにおける最も肝要な臨床課題であるとの結論に至った。③生体腎移植におけるHTLV-1感染対策については、全国の移植施設を対象とした調査(湯沢班)の結果を評価・総括し、HTLV-1陽性ドナー(D+)から陰性レシピエント(R-)への生体腎移植によって極めて高率に、かつ移植後早期にHAMを発症することが判明し、D+/R-生体腎移植の危険性が証明された。一方、陽性レシピエントへの移植ではHAMやATLの高い発生は認められなかった。この極めて重要な世界初の知見を国際HTLV会議にて発表した。本研究では、生体腎移植におけるHTLV-1検査の勧奨の必要性、HTLV-1陽性対象者におけるATLスクリーニング検査の必要性、HTLV-1感染者における生体腎移植実施の是非を重要臨床課題として抽出し、これら課題に関連するCQを作成した。
結論
本研究の実施により、HTLV-1関連難治性疾患において臨床的に緊急性の高い課題に関して、その解決に向けた大きな進展を達成することが出来た。2017年度は、エビデンスの収集と吟味、安全性・コストに関する情報収集、患者の価値観や希望の調査、エビデンスの質の評価(GRADEシステム)、また運動障害重症度分類の改訂、疾患活動性分類の策定を行い、2018年度に診断基準を改訂し、これら基準をガイドラインに掲載する。診療ガイドラインの作成は、明示的で透明性の高いプロセスに基づきエビデンスの質と推奨度の順序付けを行うことで、信頼性の高いガイドラインの作成が可能と期待され、これまで作成が困難とされてきた希少難病を対象としたガイドライン作成のモデルにもなるであろう。HTLV-1感染症および関連疾患の問題は先進国の中では日本特有であることから、日本が主導的に研究を行わなければ解決されない問題であり、この成果はわが国のみならず世界のHTLV-1感染者やHTLV-1関連疾患患者にも恩恵をもたらし、国際的な貢献も可能となる。

公開日・更新日

公開日
2017-06-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-06-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201610100Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,000,000円
(2)補助金確定額
14,971,000円
差引額 [(1)-(2)]
29,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,781,276円
人件費・謝金 467,216円
旅費 6,008,673円
その他 2,253,387円
間接経費 3,461,000円
合計 14,971,552円

備考

備考
29,000円 返還

公開日・更新日

公開日
2018-03-09
更新日
-