先天性骨髄不全症の診断基準・重症度分類・診療ガイドラインの確立に関する研究

文献情報

文献番号
201610097A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性骨髄不全症の診断基準・重症度分類・診療ガイドラインの確立に関する研究
課題番号
H28-難治等(難)-一般-015
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 悦朗(弘前大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 張替 秀郎(東北大学 大学院医学研究院)
  • 矢部 普正(東海大学 医学部)
  • 真部 淳(聖路加国際大学 聖路加国際病院)
  • 小島 勢二(名古屋大学 大学院医学系研究科)
  • 菅野 仁(東京女子医科大学 医学部)
  • 高田 穣(京都大学 放射線生物研究センター)
  • 大賀 正一(九州大学 大学院医学研究院)
  • 小原 明(東邦大学 医学部)
  • 照井 君典(弘前大学 大学院医学研究科)
  • 古山 和道(岩手医科大学 医学部)
  • 多賀 崇(滋賀医科大学 医学部)
  • 小林 正夫(広島大学 大学院医歯薬保健学研究科)
  • 渡邉 健一郎(静岡県立こども病院)
  • 金兼 弘和(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 國島 伸治(国立病院機構名古屋医療センター 臨床研究センター)
  • 山口 博樹(日本医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
14,232,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関変更 研究分担者 大賀正一 山口大学(平成26年3月1日~平成28年5月31日)→九州大学(平成28年6月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
主要な先天性骨髄不全症には、先天性赤芽球癆(DBA)、Fanconi貧血(FA)、遺伝性鉄芽球性貧血(SA)、congenital dyserythropoietic anemia(CDA)、Shwachman Diamond syndrome(SDS)、先天性角化不全症(DKC)、先天性好中球減少症(SCN)、先天性血小板減少症(CTP)の8疾患がある。本研究申請では、先天性造血不全班の先行研究を発展させ、より優れた「診断基準・重症度分類・診断ガイドライン」の確立を目指す。これまでの研究を通じて確立した解析基盤を共有し、日本小児血液・がん学会の中央診断事業と疾患登録事業とも連携し、正確な診断に基づいた新規症例の把握と検体収集を行う。共通の基盤で遺伝子診断を含めた中央診断を行い、正確な診断に基づいた疫学調査を行い、遺伝子診断の結果や治療経過も含む、精度の高い疾患データベースを作成する。
研究方法
研究申請では、発症数が少なく共通点の多い先天性造血不全症の医療水準の向上をより効果的に進めるために、一つの研究班に統合して研究を推進する。本研究班は、8つの疾患別研究拠点から構成され、各研究拠点(DBA(伊藤)、SA(張替)、FA(矢部・高田)、CDA(小島・真部)、DKC (小島、山口)、SDS (渡邉)、SCN(小林)、CTP(國島))は、疫学調査、臨床データおよび検体の収集、遺伝子診断のための既知の原因遺伝子解析とバイオマーカーなどの特殊検査を担当する。研究代表者(伊藤)が、DBAの研究を担当するとともに研究全体を統括する。平成28年度は、遺伝子診断の結果や治療経過も含む、精度の高い先天性造血不全のデータベースを作成する。平成29年度以降は、我が国における正確な患者数の把握と治療法と予後に関する疫学研究を推進し、先天性造血不全のより精度の高い疾患データベースの確立を目指す。
結果と考察
本研究では、日本小児血液・がん学会の中央診断事業と疾患登録事業とも連携し、正確な診断に基づいた新規症例の把握と検体収集を行い、先天性造血不全のより精度の高い疾患データベースの構築を推進した。
DBAは、27例が新規登録され、10例に既報の遺伝子変異を認めた。これまでに180例のDBAの臨床情報と検体の収集および遺伝子解析を行い、103例(57.2%)に原因遺伝子の変異を見出した。SAは、3例の新規症例が登録され、うち2例において原因遺伝子が同定された。FAは、マウスとは異なり、母親のアルデヒド分解酵素(ALDH2)の遺伝子型は患児の表現型に影響を与えることはなかった。また、FANCGの患者では骨髄不全が早く進行し、早期の造血細胞移植が行われていた。従来の未解決症例の多くは、既知遺伝子のスプライス異常によりFAを発症していることが明らかとなった。CDAは、遺伝子変異が確認されなかった12症例のうち4例で溶血性貧血の原因遺伝子の変異を確認した。DKCは、疑い例も含め13例中4例で既報の原因遺伝子の変異を同定した。本邦のDKC症例で発見された原因遺伝子変異に関してin vitroにて機能解析を行った。不全型DKCで発見されたG106WとG682Dはテロメラーゼ活性を完全に障害し、 P632RとT726Mは約50%の低下が認められた。一方、DKC症例で発見されたE280Kとdel334_335はテロメラーゼ活性に障害を与えずこれらの変異がDKCの原因遺伝子であったかは懐疑的であった。CTPでは、13例の新規登録例に対して系統的鑑別診断解析を施行し、8例の原因遺伝子を同定した。
 本年度は、本研究班で得られたデータをもとに、日本小児血液・がん学会の再生不良性貧血・MDS委員会と連携を取りながら診断基準、重症度分類および診療ガイドラインの小改訂を行い、「2017年度版診療ガイドライン」を作成した。

結論
日本小児血液・がん学会の中央診断事業と疾患登録事業とも連携し、正確な診断に基づいた新規症例の把握と検体収集を行い、先天性造血不全のより精度の高い疾患データベースの構築を推進した。遺伝性血液疾患の鑑別診断は臨床診断のみでは困難であるため、次世代シークエンサーを用いた遺伝子診断を継続した。
 本年度は、本研究班で得られたデータをもとに、日本小児血液・がん学会の再生不良性貧血・MDS委員会と連携を取りながら診断基準、重症度分類および診療ガイドラインの小改訂を行い、「2017年度版診療ガイドライン」を作成した。なお、「2017年度版診療ガイドライン」は日本小児血液・がん学会の認証を受けた後、同学会の編集書籍として平成29年度中に出版する予定である。専門医だけでなく一般小児科医をも読者対象とした実践的な内容となっている。

公開日・更新日

公開日
2017-06-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-06-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201610097Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
18,500,000円
(2)補助金確定額
18,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 10,398,053円
人件費・謝金 16,000円
旅費 1,407,812円
その他 2,410,136円
間接経費 4,268,000円
合計 18,500,001円

備考

備考
利息1円

公開日・更新日

公開日
2018-03-13
更新日
-