多彩な内分泌異常を生じる遺伝性疾患(多発性内分泌腫瘍症およびフォンヒッペル・リンドウ病)の実態把握と診療標準化の研究

文献情報

文献番号
201610094A
報告書区分
総括
研究課題名
多彩な内分泌異常を生じる遺伝性疾患(多発性内分泌腫瘍症およびフォンヒッペル・リンドウ病)の実態把握と診療標準化の研究
課題番号
H28-難治等(難)-一般-012
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
櫻井 晃洋(札幌医科大学 医学部 遺伝医学)
研究分担者(所属機関)
  • 執印 太郎(高知大学)
  • 鈴木 眞一(福島県立医科大学 甲状腺内分泌学)
  • 内野 眞也(野口病院 外科)
  • 小杉 眞司(京都大学大学院医学研究科 健康管理学)
  • 岡本 高宏(東京女子医科大学 外科学)
  • 篠原 信雄(北海道大学大学院医学研究科 腎泌尿器外科学)
  • 矢尾 正祐(横浜市立大学大学院医学研究科 泌尿器科学)
  • 菅野 洋(国際医療福祉大学熱海病院 脳神経外科学)
  • 宝金 清博(北海道大学 脳神経外科学)
  • 西川 亮(埼玉医科大学国際医療センター 脳神経外科学)
  • 夏目 敦至(名古屋大学大学院医学系研究科 脳神経外科学)
  • 中村 英夫(熊本大学医学部 脳神経外科学)
  • 福島 敦樹(高知大学教育研究部医療学系臨床医学部門 眼科学)
  • 伊藤 鉄英(九州大学大学院 病態制御内科学)
  • 田村 和朗(近畿大学理工学部生命科学科 遺伝医学)
  • 長谷川 奉延(慶應義塾大学 小児科学)
  • 齊藤 延人(東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻 脳神経外科学)
  • 中村 英二郎(京都大学医学研究科メディカルイノベーションセンター悪性制御研究ラボ 泌尿器科腫瘍学)
  • 今井 常夫(国立病院機構東名古屋病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
1,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
内分泌疾患はホルモンの多彩な作用によってさまざまな臨床症状を呈する.特に遺伝性内分泌臓器に発生する遺伝性腫瘍の場合は,臨床症状の多彩さと再発率の高さゆえに患者に多大な身体的負担を課すことになる.本研究ではこうした疾患のうち多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1),2型(MEN2),およびフォンヒッペル・リンドウ病(VHL)について,その実態把握と診療の標準化,診療水準の向上を目指した研究を行い,両疾患の医療水準の向上に貢献することを目的とする.
研究方法
①遺伝学的検査について,MEN1は主に先進医療として野口病院において,VHLは研究協力として高知大学において実施した.MEN2の原因遺伝子であるRETについては,これまではMEN1と同様に野口病院で解析を行っていたが,甲状腺髄様癌に対するRET遺伝学的検査が保険収載されたことから,今後の解析機会は減っていくと予想される.
②診療ガイドラインはVHLに関しては以前に公開した内容の再検討を行い,大きな変更は不要であると判断したが,分子標的薬の導入など,標準治療の内容が変わっていく可能性が高いため,情報収集を続けることとした.MEN1,MEN2については,個々の病変からこれら疾患を診断するためのフローチャートについて,改訂作業を継続している.
③症例登録は,MEN,VHLのいずれにおいても,平成27年度以降,運用資金の問題から新規の症例登録が困難な状態となっていたが,これを再開すべく,病態登録の統一化を図るためにチーム内で可能な範囲内でのデータ収集を開始継続した.
④すでに制作・公開しているホームページについて,継続的に管理更新を行った.特に保険診療となったRET遺伝学的検査が国内のどの医療機関においても適切に実施されるよう,MEN2とRET遺伝学的検査に関する説明資料や同意書の作成を行った.作成した資料および同意書は日本家族性腫瘍学会のホームページに掲載し,学会誌等でも紹介した.
⑤VHL,MENそれぞれに患者・家族会があり,それらの会合において,最新の情報を紹介した.
結果と考察
MEN,VHLの両者について,①遺伝学的検査の実施,②診療ガイドラインの改訂,③症例登録,④医療関係者向けの情報提供と問い合わせ対応,⑤患者・家族,一般市民に対する啓発活動,を行った.
①遺伝学的検査について,MEN1は主に先進医療として野口病院において,VHLは研究協力として高知大学において実施した.MEN2の原因遺伝子であるRETについては,これまではMEN1と同様に野口病院で解析を行っていたが,甲状腺髄様癌に対するRET遺伝学的検査が保険収載されたことから,今後の解析機会は減っていくと予想される.
②診療ガイドラインはVHLに関しては以前に公開した内容の再検討を行い,大きな変更は不要であると判断したが,分子標的薬の導入など,標準治療の内容が変わっていく可能性が高いため,情報収集を続けることとした.MEN1,MEN2については,個々の病変からこれら疾患を診断するためのフローチャートについて,改訂作業を継続している.
③症例登録は,MEN,VHLのいずれにおいても,平成27年度以降,運用資金の問題から新規の症例登録が困難な状態となっていたが,これを再開すべく,病態登録の統一化を図るためにチーム内で可能な範囲内でのデータ収集を開始継続した.
④すでに制作・公開しているホームページについて,継続的に管理更新を行った.特に保険診療となったRET遺伝学的検査が国内のどの医療機関においても適切に実施されるよう,MEN2とRET遺伝学的検査に関する説明資料や同意書の作成を行った.作成した資料および同意書は日本家族性腫瘍学会のホームページに掲載し,学会誌等でも紹介した.
⑤VHL,MENそれぞれに患者・家族会があり,それらの会合において,最新の情報を紹介した.
結論
本研究班での活動により,着実にMENおよびVHLの診療に対する認識が浸透しつつある.一方で,新たな治療薬の出現や検査の保険収載など,最新の動向については,まだ医療関係者に十分周知されているとはいえない.これを踏まえ,今後もより多くの医療者・医療機関に対し,学会や講演等で情報を伝え,様々な医療機関とのネットワークの構築に努めていく必要がある.さらにこのネットワークを通じて,遺伝学的検査の適切な提供,検査結果の適切な解釈のもとに,患者一人一人に応じた医療を提供できるよう,患者だけでなく医療者への適切な情報提供も可能になると考える.

公開日・更新日

公開日
2017-06-08
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201610094Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,340,000円
(2)補助金確定額
2,340,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 896,298円
人件費・謝金 0円
旅費 630,620円
その他 273,082円
間接経費 540,000円
合計 2,340,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-02-15
更新日
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